暫くぶりのボホールはエスカヤ族の村訪問が目的でした。
前回2015年11月、エスカヤ・ビーチリゾートに泊まった時、エスカヤの意味を聞いたところボホールに存在するエスカヤ族からその名を取ったと聞いた。そして、客室内のインテリアとして飾っている竹のデコレーションに文字らしきものが刻まれているのだが、それが彼ら独自の文字と教えてもらった。そして、独自の言語も持っていると。
それで調べると、謎の民族とあり、発見されたのも1980年と記載されている。
情報はWikipedia英語版と幾つかの情報しかなく、それも断片的な情報なので増々興味をそそられ、ならば自ら行くべし、とようやく2年後に実現。今回もそのエスカヤに泊まりエスカヤ族の村を訪問してきた。
エスカヤビーチリゾートの客室リビングに飾られていたエスカヤ文字が書き込まれている竹。
ボホールでは彼らの存在は勿論知られていたようだが、中央政府に知られるようになったのが1980年。そのため「エスカヤ族発見」といわれることになった。
一般には2007年にエスカヤ・ビーチリゾートがオープンしてからのようだ。
彼らの住むエリアはボホール島南東デュエロの山間の村々に散在して住んでいる。その中でもエスカヤ族だけが住むタイタイ村を訪問。
ホテルのあるパングラオ島からは約3時間。ボホール島の南岸線を進みハグナの町からくねくねと山道を上がり、本道から外れ更に細い山道に入っていく。平家の落人の村をイメージしてくれて良い。
この村、今は勝手に行くことは出来ず、今回の訪問にはエスカヤ・ビーチリゾートとボホール観光局の協力で、事前に村の許可を取った上での訪問。
山道をほぼ登り切りこの深いジャングルのもう少し先にタイタイ村がある。
村の中心になる会館の建物。
村の会館の前にエスカヤ文字と英語で「エスカヤ族」と書かれた看板。
今は町の方に住むエスカヤ族の族長、ロベルト・ダツ・ダタハン氏がタグビラランの郊外から同乗してくれ村へ案内をしてくれた。彼は他の2つの少数民族を合わせた3つの民族の代表を務め、政府との諸々の交渉は全て彼に任されているとても偉いおじいさん。タイタイ村では村長のエドガルド・バゴサイ氏が迎えてくれ、エスカヤ族の現在の生活の様子や、子供たちへの文化の伝承などの説明をしてくれた。
右が現族長のロベルト氏、左が村長のエドガルド氏。
像の人物はロベルト氏の祖父、エスカヤ族の苦難な時代を切り抜けた偉大なリーダー。
後ろの建物が会館・博物館、日曜学校の会場。
このタイタイ村では全員がエスカヤ族。他は周辺の13村にボホール(ヴィサヤ)人と割合はまちまちだが混在して住んでいる。全体では140家族700名とのこと。
彼らの歴史には諸説あるらしいが、勿論これも伝承ではあるが、ロベルトさんの語りによると、エスカヤ族は元々インドネシアのスマトラに住んでいた。700年前何かの事情で最初はザンボアンガに移住。その時の族長の娘が結婚相手とボホールに移住。そしてその子孫が今まで続いている。当初は海側の平地に住んでいたがスペイン植民者がボホールにやってきて、以後200年間の間にエスカヤ族も度々彼らと戦い、結果逃れて山奥に移り住んだ。以来、その山間に隠れるようにエスカヤ族独自の文化を継承しながら生活してきたようだ。
言語学者のレポートでは、言語はどの言語にも似ていない。文字も独自のもので表音文字とある。
現在、彼らも近代化の中でフィリピン国民であり、通常のフィリピン人と同じように学校教育を受け、多くの若者は職を求めて町の方に出て行いく。 よって、エスカヤ語を日常では使用しなくなっているので、子供たちには村の会館・博物館で毎週日曜学校を開き、そこでエスカヤ語を教えている。
エスカヤ族としてのアイデンティティーを守ろうとする姿勢は明確だ。
日曜学校で教えるエスカヤ語のアルファベット。
一応、博物館らしく資料展示はある。
村に残る人たちの生計は農業。
山地のため規模は小さいが、山肌に沿って主に野菜や果物、棚田で米の栽培等を行っている。
最近ではイチゴ栽培も始めている。
棚田の稲の穂がそろそろたれる状態になっていたが、雑草も一緒に生えている状態なので、恐らく除草剤を使わない農法のようだ。
野菜畑の様子を見ても農薬や化学肥料を使っているようには見えない。
生産物はタグビラランに出荷している。
稲が密集して育ってはいるが雑草も混じっている。
ナスもトマトもキャシャに育っていていたので、自然任せの栽培なのだろう。
バナナの葉があちこちに植わっているので、野生のバナナかと聞くと栽培だという。
これも自然派農法ということなのだろ。
体には良いのだろうが生産性を上げる技術指導があると良いのでは。
昼食を村長の自宅に招かれて食したが、全て自給自足の食事。川で取ってきた巻貝と蟹、山芋類に米。全て自然の恵みと彼ら自慢の食事である。食事文化の違いが体験出来てとても良かった。後に昼食にとエスカヤ・ビーチリゾートが用意してくれたサンドイッチが絶品であった。
これは多分キャッサバ。固い繊維が結構ある。
これも多分タロイモの一種。名前を聞いたが現地名なので良く解らなかった。
他にチキンも出ていたが、まだ雛サイズ。
養鶏の鳥ではなくそこらを駆け回る鳥たちなので、美味いのだと自慢されたが、
筆者鳥が苦手なので、写真も不可。
今回は素人が民俗学のフィールドワーク的な訪問をしてきたが、出来れば専門家に更に詳しくエスカヤ族を調べて欲しいと思う。
フィリピンには他にも幾つも少数民族が住んでおり、独自の文化を継承している。フィリピンにリピートする日本人ツーリスは多いので、チャンスがあれば彼らの生活を垣間見るのも良い旅の思い出になると思う。