こんにちは。NYで役者やってます、まみきむです。
NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミ等をお届けしています。

小屋(劇場)入りしての舞台稽古過去記事参照)の翌日は、いよいよ本番…の前に、テクリハ…こと、テクニカル・リハーサル、つまり照明&音響、転換の為のリハーサルが予定されていた…我々は最後から2番目だったので、テクリハの時間は2:30pmから…家から劇場迄40分程の距離だったが、念の為30分早く家を出た


そして駅に着いて電車を待つ…がいつまで経っても電車は来ない?!…しかし反対側ホームには電車が来ているし、この駅は終点から2つ目なので、その反対側ホームの電車が折り返しで来るのを待てばいいまぁ、30分余裕があるし…と、最初は気楽に考えていた…

 

ところがやがて反対ホームに来た何台目かの電車が、ホームに止まったまま動かなくなる?!…さらにその前の電車も終点の手前で止まっている?!…この時点で、これはひょっとしたら何かトラブルが起こっているのでは?!…と少し不安になって来た…

 

またNYの地下鉄は、こういう時にも何の説明もアナウンスもしない…下手をすると駅の人も状況を把握していなかったりするのだが、下に降りてチケットブースの人に聞きに行くと、何でもそこから4つ目の駅で病人が発生したそうで、救急隊が到着するまで電車が動かせないという?!…いつ頃復旧するか?!と聞いても、答えは「No idea(さっぱりわからん)」だろうな…と思うが、かれこれ30分くらい足止めをくっている?!…その事件が起こって、電車が止まった時点で何か知らせてくれればいいのに〜!…他の手段はバス…だが、駅の近くのバスはこれまた30分近く来ないし、もっと頻繁に来るバスのバス停はそこから徒歩15分…しかもそのバスを使うとかなり遠回りなコースとなる…それならここで復旧を待った方がいいか?!…しかしもしさらに半時間復旧しなかったら?!

 

このままではテクリハに遅れてしまう…と気が気ではないが、このまま待つか?!…あるいはバス停にダッシュした方がいいか?!…いい加減諦めて駅を出ようと階段を降りかけた時向かいホームの電車が動き出した!…という事は、こっちの電車も動くか?!…急いでホームに戻ると、丁度電車がホームに入って来た助かったぁ~!

 

それでもその問題の駅に着くまではややスローだったが、その駅を過ぎた途端、それまでの遅れを取り戻そうとでもいう様に、無茶苦茶飛ばす?!…明らかに普通以上のスピードで走る地下鉄に、かなりビビったが、そのお陰か乗換もスムーズに行き、何とかコールタイムに15分遅れで到着…幸いまだ我々のテクリハは始まっておらず、ギリギリ間に合った

 

テクリハは、通常はまず照明や音響のキューだけを行い、その調整には結構時間がかかる…しかも我々の所要時間はたった1時間…これでは到底時間が足りないから、ドレスリハーサルは無しで、このまま本番かなぁ…と半ば覚悟していたら、何と私達に最初から通してやらせてくれ、その間に照明や音響の調整をすると言う?!…なので突然ライトが変わったり、あるいはモニターからの音量が急に大きくなったり…という様な事があったりはしたが、一応最初から最後まで通せたので、気分的には随分楽になった…

 

かくして、無事ドレスリハーサルは終わり、本番のコールタイムまで3~4時間程時間があるで、皆で軽く何か食べに行こう…という話をしていたら、ディレクターや作者、ステージマネージャー達が、集まって何やらバーの話をしている…てっきり終わってからの打ち上げの話か…と思っていたら、「これからこの近くのバーに行くけど、ワインでも一緒にどう?」と言う?!…本番前やっちゅうねん!…しかしどうやら洒落やギャグのつもりはなく、本気で聞いているらしい?!…これには本当に驚いた…プロのミュージカル俳優で、本番前にアルコールを飲む人はまずいない…それで酔っ払うかどうかという問題よりも、アルコールは声帯にダメージを与えるし、集中力も落ちるからだ…それはプロのアスリートが試合や競技の前にアルコールを飲まないのと同じ事である

しかし、彼らは本当に、我々の俳優の仕事を、一杯引っ掛けてほろ酔い気分でも出来るような気楽なものだと思っているのだろうか?!

 

しかし同時に、それまでの「なんでやねん?!」と思っていた事が、ストンと腑に落ちた…要するにこの人達は知らないだけなのだ本番前に俳優が酒を飲む事はありえない…これはUnprofessional(プロとしてあるまじき行為)」とみなされ、場合によっては速攻でクビになる程の事である…という業界の常識を、おそらく彼らは知らない

同じ理由で、あの無謀な超短いリハーサル時間過去記事参照)も、それでは到底無理だ…という事を彼らが知らなかっただけだったのかもしれない…

 

そこで、バーへ行くという彼らとは別に、出演者3人は、その近くにあると言うPho(ベトナムのヌードル)の店に行った…

巨大な器に入ったPhoは、少し甘めのスープがしみじみ五臓六腑に染み渡る

 

 

これでこの後の本番も頑張るぞ~!という気になった…が、それですんなり終わるほど世の中甘くない…という事を、思い知らされる事になる…

 

 

★過去記事★