こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

アメリカ東海岸が皆既日食で盛り上がっていた日(過去記事参照)の夜、実は私は別の「滅多に見られないもの」に興奮していた…ブロードウェイの大御所、Patti LuPoneが、何とあのカーネギーホール「Patti LuPone: A Life In Notes」というコンサートを行っていたのだ!…実はそのチケットの発売のを知ったのはその1週間ぐらい前の事だったが、1枚200ドル以上するチケット代に怯んでいる間に、チケットはあっさり完売

 

 

しかし、実はカーネギーホールは、1日に20枚程のRush Ticketを出す…これはバルコニーのPartial Viewという一部舞台が見えない席だが、値段は何と10ドル?!…ただしこのチケットは、当日券のみで、ボックス・オフィスでのみ販売…そこでそのRush Ticketを取るために、ボックスオ・フィスが開く前から並んで待たねばならない…しかしこの時NYに来ていた友人過去記事参照)はそれにトライするという…ボックスが開くのは11時からだが、彼女は朝9時にそこに行った…が、そこにはすでに15人くらい並んでいたという?!…それでもダメ元で並び続け、何と無事そのRush Ticketを私の分までゲットしてくれたのだ!…持つべきものは根性のある友達である

 

カーネギーホールは歴史のある古い劇場なので、エレベーターというものはない?!バルコニー席に行くには、かなり急な階段を天辺まで上らねばならない…高齢者の観客も杖をつきながら階段を上らねばならないのは気の毒だったが、しかしカーネギーホールの観客は根性のある客である…

 

 

客席もかなり急傾斜で、舞台は遥か下だが、Partial Viewとはいえ、舞台の中央はちゃんと見える

 

 

そしてこのコンサートが、本当に素晴らしかった!こんなええもん、10ドルで見てええんか?!…カーネギーホール、ありがとう…(勿論、根性のある友人のおかげだが…)

 

Patti LuPoneは、おそらく実年齢は70代だが、そのパワフルな声と豊かな表現力、そして独特のユーモアのセンスで、なんと2時間たっぷり満席の観客を魅了…伴奏はピアノと弦楽器の2人のミュージシャンだけで、文字通り歌メインのガチのコンサートである…ショーのタイトルの「A Life In Notes」「Notes」というのは「音符」の事…つまり、彼女の人生で特別な意味を持つ歌を選んだ…というややパーソナルな選曲だったが、バラエティに富み彼女の魅力を十分に堪能させてくれた

 

前半は黒のパンツ姿で、物心ついた頃から10代後半までの彼女の人生における、思い出深い歌…当然その頃流行ったポップソングなんかも結構出てくるが、世代的にあまり私には馴染みのない歌ばかり…だと思ったら、いきなり「Gypsy」からの選曲!…このミュージカルの「ママ・ローズ」役は彼女の当たり役で、思わず「待ってました!」と心の中で叫ぶ…

 

後半は打って変わって銀色の華麗なドレスに身を包み、彼女のブロードウェイでの華麗なキャリアを彩る選曲…かの「Evita」「Company」などの彼女の当たり役の歌は、これまた「待ってましたっ!」と思わず大向こうをかけたくなったが、何より印象的だったのは「レミゼ」の「I Dream A Dream」…実は、私は彼女がこの歌を歌うのを聞いたのは初めてだったのだが、「可哀想な悲劇のヒロイン」の歌というより、「こんなに頑張っているのに、なんでこんな風になってしまったんや?!」という慟哭の歌…Patti LuPone自身も、つい感情的になったか声が割れてしまったりしたが、それさえそのまま演技の一部として恐れず使う…勿論それを聞いたオバチャン号泣…改めて、歌の解釈は1つだけではないんや…とその可能性の広さと深さに目から鱗が落ちまくった

 

ショーが終わった時も、観客は総立ち…だったが、客電がつくと、皆あっさり帰る…いつまでも粘ってアンコールを要求するような行儀の悪いことは、カーネギーホールのお客はしないのだろう…また、ショーそのものもすでに盛りだくさんだったから、お客さんも十分満足していたのかも知れない…

急な階段を再び降りながら、「本当にええもん見させてもらった…」としみじみ感動に浸った…

 

また実は私はカーネギーホールのバルコニー席は初めてだった…以前何度か下のオーケストラ席には座った事があったのだが、ひょっとしたら音はバルコニーの方がよく聞こえるのではないか?!…特に楽器の音の美しさ…彼女の登場の前に、少しだけバイオリンとピアノの演奏がなされたが、その音の美しさには本当に驚いた…私は音楽は専門家ではないが、そんな素人の私にさえわかるほどなのだ…これは音響のせいなのだろうか…あるいは、このホールそのものが、そういう楽器の音の魅力を目一杯引き出すように設計されている…という事なのだろうか…なぜここが、音楽のショーケースの殿堂と言われるか納得できた

 

 

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