こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

ニューヨークに住んでいれば、ブロードウェイのショーを見まくっている?!…まぁ、そういう人もいるかもしれないが、実は必ずしもそうではなかったりする…もっとも、そういう私にしても、以前は話題になっているもので、信頼する人達が「良かった!」と言うものは極力見るようにしていたのだが、いつしかブロードウェイからは段々足が遠のいて行った

 

その理由の1つは、何と言ってもチケット代が高過ぎるのだ!…オーケストラの前寄り中央ど真ん中…なんていう様な「特等席」の話をしているのではない…2階席の1番後ろ…というような、「1番安っい席」でも今や75ドル?!ふざけんな!と言いたくなるではないか?!…もっとも、TKTSなどで半額チケットを買えばもう少し安くなるかもしれないが、しかし2階席は早々売り切れる事が多いので、半額でもオーケストラ席…しかもあの長蛇の列に並ばねばならない

 

ブロードウェイから足が遠のいていった理由のもう1つが、私にとって魅力的なショーが少なくなったのだ最近のブロードウェイのトレンドは、昔の人気映画のミュージカル…それも「これホンマにミュージカルになるのん?!」という様なものまでミュージカル化し、中には成功しているものもないわけではないものの、その大半はあっという間に消えていく…なぜ昔の人気映画か…といえば、英語のわからない観光客でも、その映画は知っている!…という場合が多いから…つまり、今やブロードウェイの観客の大半は観光客なのだ

それが、チケット代が爆上がりしている理由の1つでもある…つまり、どんなに売り手が高値をつけたくても、それが売れなければ商売は成り行かないし、ほとんどの商売ではリピーターの存在が重要である…しかしブロードウェイの場合、観光客は「一生に一度だから!」と多少高くても豪快に散財してくれる…そして同じ人は戻ってこないかもしれないが、別のそういう観光客はどんどん着続けてくれるのだ…勿論、そういう私自身もかつてはそういう観光客だったこともあるし、そういう観客がブロードウェイを支えていてくれるのも事実なので、それ自体に文句を言うつもりはないのだが、しかし観客のマナーの悪さや、「この程度でスタンディング・オベーション?!」というのには、ちょっと突っ込みたくなる

 

また、映画やTVでよく知っているセレブ俳優達の期間限定ブロードウェイ公演…というのも、最近のトレンドである…まぁ、これについては、俳優さんによっては、元々舞台出身の人で、たまたまブロードウェイより映画の方で先に名が売れただけで本人は舞台人のつもり…という人もかなりいたりするので、そういう場合は大歓迎である…私だって、もしそういう事があれば(あるかい?!)是非ブロードウェイの舞台を踏みたいと思うだろう

しかし問題は、それまで舞台の経験は全くなく、オフオフの舞台に立ったことさえないのに、いきなり「初ブロードウェイ」どころか「初舞台?!」という場合…これは「ブロードウェイを舐めるな!」と言いたくなる…もっとも、最近は客さえ入れば、期間限定でそういう俳優にもブロードウェイ公演を許してしまう場合や、海外から観客込で…と言う場合も、決して少なくないのだが…

 

それでもやはりこれは見たい!…と思っていた公演もあるのだが、そういうわけでついつい億劫になり、何か機会がなければなかなかブロードウェイのショーを観に行かなくなった

その「機会」は、我々夫婦にとっては、コロナ前は誕生日や結婚記念日などの特別な日に、「ブロードウェイのショーを観て、帰りにディナー」というのが伝統だったのだが、コロナ禍以来その「伝統」も絶えた…それ以外の「機会」は、稀ではあるが、友人が日本からやってきた時に一緒に付き合う…というもの…

 

実は今回、その稀な機会がやってきた…その友人にしたところで、ニューヨークに来るのは7年ぶり…それでもその友人の旅の目的は「ひたすらブロードウェイのショーを観まくる」というガチのシアター人なので、私もそれに便乗して、前から観たかったショーを見る機会に恵まれた…私にとっても、ブロードウェイのショーを見るのは、何とコロナ禍以来である

 

もっとも、一緒にチケットを取ったわけではなく、たまたまその前日に到着した友人が「今夜はこれを観にいく」と教えてくれたのが、私もずっと観たいと思っていた作品で、しかも今月一杯でクローズしてしまう?!…そこで私も急に思い立って「私もそれ観に行く!チケット取れるかどうかトライしてみるね!」と急遽手配…その時点で開演2時間前だったりしたのだが、ありがたい事に今やチケットはネットやアプリで撮れる時代…以前はいきなり「今夜のチケットまだありますか?」なんて劇場窓口で買わねばならず、「完売です」とか、あっても滅茶苦茶高い席しか残ってなかったり…なんて事もあったのだから、全く良い時代になったものである…そのアプリの使い方がイマイチわからず、まごまごしている内に時間切れになり、もう一度最初から始めたら、狙っていた席が売れてしまった…なんて事もあったが、ようやく最後の1枚だけ残っていた一番安い席をゲットええ、払いましたとも、2階の一番後ろの端っこの席に75ドル!

 

そして劇場に直行し、どこかでチケットに引き換えるのか…と思ったら、そのアプリのQRコードがすでにチケットなのだと?!…良い時代になったものである…

開場するまで、劇場の横のShubert Alleyで並んで待つ…

 

 

開場した頃、友人も到着し、彼女はオーケストラ席だったので、しばらく1階で再会を喜び、時間が来たら客席へ…

 

 

この「Kimberly Akimbo」2023年のTony賞過去記事参照)受賞作品だが、オフブロードウェイから認められて上がってきた作品…出ているスターは主演のVictoria Clarkくらいで、あとはほぼいわゆる無名の、俳優達のアンサンブルワークが認められたものである…こういう作品をこそ、もっと私はブロードウェイで観たいのだ…

 

Victoria Clark演じるKimberlyは、「4~5倍の速さで老化してしまう」というレアな難病の持ち主…なのでまだ16歳なのに、外見はお婆ちゃん…しかし、その中身は紛れもなくティーンエイジャーである事がClarkの演技ではっきりわかる…その内面と外見とのギャップ…そして本来なら青春の真っ只中であるはずの16歳の誕生日も、この難病患者にとっては晩年を表す…という何とも切ないシチュエーション

そして、両親がこれまた、大人の自覚もない、子供のまま親になってしまった…というヤングペアレンツで、別の意味で身体だけ歳をとってしまっている例である…というのも何気に切ない…そんなKimberlyにも、クラスの変わり者のボーイフレンドが出来、残された時間、自分も青春を楽しみたい!と思う…この切ないくだりが、自分も最近少しずつ老化を意識し始めた私にも、ど真ん中で刺さり、オバチャン号泣

 

さらにその彼女の叔母さんの、実は小者犯罪者Debraが、これまた実に良い味出していて、また彼女のパワフルな声が、後半を一気に引っ張っていく…そこで彼女は、Kimberlyの友達の高校生達に犯罪の手解きをするのだが…これを見てから、チェックは絶対に道の郵便ポストに入れない様にしよう…とかたく誓ったのは、私だけではあるまい…

 

どちらかといえば、地味な作品で、しみじみ心に訴えかけるようなナンバーが多く、これはブロードウェイの派手な大舞台より、小規模なオフブロードウェイの方が良かったかもな…という気もしないでもない…また、Victria Clark以外は多少メンバーも変わっているのだろう…おそらくオープン当初のようなパワーは若干失われているかもしれないが、ずっと観たかった作品なので、友人のおかげで観ることができて、本当に嬉しかった…

 

ちなみに座席は、私がアプリでチェックした時は、ほとんど残席がなかったのだが、それはそのアプリで取れる席がなかった…というだけの事だったのか、あるいはホテルなどが押さえていた席が直前にリリースされたのか、2階の真ん中辺りの数列がガラッと空席?!…まぁ、オーケストラ席ではないから、舞台からは見えないかもしれないが、なんか勿体無い話である…勿論、2幕目に私はそこにしっかり移動…これはたまぁにアッシャーさんによっては素早く見咎めて「自分の席に戻れ!」という人もいるので、あまり薦められたものではないが、2幕目から入ってくる人は居ないし、どのみちその席は空いているのだ…というわけで、観劇慣れしている人たちは、大抵2幕目から席を移動してくる…しかし、それは2幕目が始まる直前で、なおかつ他の観客の迷惑にならない様にするのが大原則である…

 

終演後、少し軽く食事でも…と思ったが、久々に来たそのエリアは、コロナ禍以降驚くほど変わっていて、お目当てのレストランは軒並み潰れている…アイリッシュバーなどはかろうじて残っているのだが、どうもそこはガチで飲む人様?!…てな感じで、女性の2人連れには、ちと敷居が高い…しかし小洒落たレストランは…10時閉店?!…て、観劇する人達の事考えてる?!…そこでふと目についたのが、ラーメン屋?!

実は、せっかく日本から友人が来ているのだから、もっとニューヨークっぽいもの…とか少なくとも、もっとアメリカンなもの…を考えていたのだが、その日は雨で寒かった事もあり、あっさりそのラーメン屋に直行…ただ、そのラーメン屋は一見「日本風」だが、あちこちに「これは経営者は日本人ではないな…」という要素が見られ、よりによってこんなナンチャッテのラーメン屋に案内してすまん!という思いと、まぁ、これもアメリカンっちゅうネタになるか?!…という複雑な思いでラーメンの到着を待つ…

 

 

ところが予想に反し、そのラーメンは結構ハイレベルだった?!麺の茹で加減も、スープの濃さ申し分ないし、トッピングのチャーシューも口の中でとろける様だし、煮卵もちゃんと半熟になっている…スープが少し多めで写真は映えないが、実は私はスープたっぷりの方が嬉しいので、ノープロブレム!…むしろ、麺がスープを吸ってしまっているようなラーメンに遭遇した事もあるが、それに比べれば数倍良いではないか!

もっともニューヨークのラーメンは高価で、日本のほぼ3倍くらい?!…ごく普通のラーメンだけでも、税金やチップを入れるとどうしても20ドル超えになるので、ラーメン1杯に3500円?!(その時点では1ドル=152円)…と思うと、なんかアホらしい…というわけで、これもまたブロードウェイと同様「特別な日」しか食べなくなっているのだが、今日は特別な日なのだ!…でも友人にはラーメンでは申し訳なかったので、もっとオシャレな場所で敗者復活戦を試みたい…

 

しかし、友人の来てくれたおかげで、久しぶり体験ができて嬉しかった…考えてみたら、ラーメン屋でラーメンを食べたのも、コロナ禍以来だった…

 

 

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