こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

先日、とあるTVシリーズのBG仕事をしたが、これはコールタイムが11時前とかなり遅く、それまで早朝のコールタイムばかりだった過去記事参照)ので、涙がちょちょぎれる嬉しさ!…もっとも、コールタイムが遅い時には、それが夜間の撮影も含まれるので、帰りも遅くなる…と言う場合もあるので、必ずしも喜んでばかりもいられないのだが

 

また、その日の撮影は屋外…おまけに、「着替えを2着持って来い」と言う?!…つまり、そのまま着ている1着の他に、さらに2着分の着替えを持参しろ…というわけで、これは3つの異なるシーンに使い回しされる…という事である…

おまけに、その「着替え」と言うのは、「フルセット」でなければならない?!…つまり、ジャケットだけ変えて「2着目」というのはあかんで!…と釘を刺されているのだが、屋外で2着のフルセットを持参する…という事は、コートやジャケットも2着持っていかねばならない?!…これが結構な大荷物である…実は本当は靴も変えねばならないのだが、今回は替え1足分だけで勘弁してもらう事にする…まぁ、その着替えの分はユニオンはちゃんとギャラに追加してくれるのだが、大抵はスーツケースかキャリーバッグを転がしての、ちょっとした小旅行並みの荷物になる…

 

それでも時間が遅かったので、コールタイムの20分前にはちゃんと到着した…が、まだ何のセットアップもできていない…ふとみると、朝ごはんをゲットしている人がいたので場所を聞くと、そんなに遠くないようである…そこで「コールタイムまで20分あるから、朝ごはん取りに行っていい?」と聞くと、PAは不機嫌そうに「行きたければ行けば。」と言う…これにはちょっとムッとしたが、「コールタイムまでに戻ります。」と朝ごはん探索に出かけた…

 

朝ごはんのテントはすぐに見つかり、フレッシュジュースもあったので、早速ビーツジュースを作って一気飲み!…実は既に家で少し軽く食べてきたので、ペストリーとホウレンソウのエンパラーダのように、軽くつまめるものに、フルーツとコーヒーをゲット

 

 

そしてホールディングに戻ったら、何とギリギリの時間だった…

 

そこで朝ごはんは一旦置いて、まずワードローブへ…今日は3通りの衣装の組み合わせを決定しなければならないので、ワードローブさん達も大変でちょっとしたカオス状態

しかも、「current season(今の季節)とあって、その日はまだ寒かったので、冬用の完全防寒コート過去記事参照)を着て行ったら、「もっとライトなものを」と言われ、それより少し薄いコートにされてしまった…また最初は「マフラーもなし」と言われたが、何とか交渉してマフラーはつけてもらう…また3着目はジャケットだけでかなり寒そうだったが、これはシーンの1つが屋内になるかも…という事らしい…

 

そこで最初の組み合わせを着込むが、本当にこれで十分暖かいのかどうか…もう1枚こっそりベストを中に着た方がいいかも…と思いながらトイレに行って戻ってくると、皆セットに移動していたので、慌ててそれに加わり、結局ベストを着込む暇がなかったこの事を後で後悔する事になる

 

そのセットに行く前に、朝ごはんのテントを通り、そこで朝ごはんを得ることができた…私は既に朝ごはんをキープしていたが、ほとんど食べる暇なくホールディングにある…そこで、熱いコーヒーとペストリーを追加でもらい、軽く腹ごしらえ…そしてジンジャーティもゲットしてセットへ向かう…往来のシーンでは、実際に配置されるまでにかなり待たされるものだからだ…事実、そのプロダクションは撮影が始まって日が浅いせいか、イマイチよくオーガナイズされていない…というか、はっきり言って、情報や指示が錯綜し、さらに指示された事をPAは理解しておらず…と、結構カオスな状態だった

 

これは撮影中も同様…往来のシーンというのは、結構騒音がうるさく、また少し離れたところにいる我々BG達には「アクション!」という声も聞こえない…そういう時は、PAはインカムで聞こえているはずなので、我々にキュー出しするべきなのだが、どうもPA達もいい子達なのだが、それがイマイチわかっていない…そこで「もし ”Background action!” と言われたら、知らせてもらえますか?」と頼むと、快く引き受けてくれたが、それでも次回も何も言わない?!…しかし通りの向かいでプリンシパルが動くのが見えたので、急いで動き出したが、何で教えてくれんのや?!…と思ったら「だってBackgroundって言わなかったから」と言われて脱力した…時には単に「Action!」だけの場合もあるのだが、それが動き出すきっかけやっちゅうねん!…と言うのが何でわからんのや?!

 

そのロケ場所は、いわゆる高級住宅街だったのだが、それでも本物の通行人達が見物にやってくる…そして私達がスタンバイしているすぐ前に立って、行く先をブロックするので、「すいません!私達仕事中で、こっちに歩かなければならないんですけど。」と自分で言わねばならない…こういう見物人を邪魔にならない所に誘導するのもPAの仕事なのだ…仕事しろよ!

 

また犬を連れて歩いている人の多い事?!…というか、この高級住宅地でわざわざ歩いている人は犬の散歩くらい?!…その割には、「あんた達エキストラ?一体いくら貰ってるの?」なんて下品な事を露骨に聞いてくる人もいる?!少なくともここに住めるあんた達ほど貰ってないわ、ボケ!…と言いたくなるが、答えるのもアホらしくなり、さりげなくその場を離れた…

 

そしてある時、バス停まで歩いて、そこでバスを待つふりをするよう言われる…のだが、例によって、「アクション!」も「カット!」も遠すぎて我々には聞こえない…そこで他のBG達の動きを頼りにそのタイミングを計るのだが、向こうも手探り状態「いつやねん?!」とイライラしながらきっかけを待つと、その指示をくれるはずのPAが「Go, go now!(ほら、早く行って!)」と苛立った口調で「指示」を出す?!ふざけんな!と言いたくなるが、通りを歩いてバス停まで行き、そこで座って「カット」と言われるまで待つ…と、意外にはっきり「カット!」と叫ぶ声が聞こえた…そこで立ち上がって元の位置に戻ろうとするが、本来なら皆が動くはずなのに、なんか違う?!…おまけに、その「カット」の声は、立て続けに「カット、カット、カット…」と叫び続けている?!何があったんや、一体?!と、思ったら、私がADの「カット」という声だと思ったのは、実は散歩中の犬が、他の犬に吠えかかっている犬の吠え声だった?!誓ってもいいが、どう考えても「カット!」と叫んでいるとしか聞こえない様な声だったのだ!

 

そんな事があったものの、同じ事を数回繰り返し、ようやくそのシーンが終わった…そこで元の位置に戻ろうとした時、それまで私の隣に立っていた兄ちゃんが、その場でずっと携帯画面を見ていて動かない…「カット」が聞こえなかったのかな…と思ったが、そういえばその人は撮影中もずっと携帯をいじっていた?!…これはBGにはありえない事である…我々は撮影現場では、基本的には携帯に使用禁止…という事になっているからだ…それにどうもその人の顔には見覚えがない…ような気がするのだが、いかんせん、私には白人の兄ちゃんは皆同じに見える

そこで「プロダクションの方ですか?」と聞くと、「いや、バス待ってるだけです。」おっと、バスを待つ本物の通行人だったのか?!…本来ならそういう人はPAがちゃんとブロックするべきなのだが、あまりにさりげなく我々とブレンドしていたので、誰も気が付かなかったらしい…あの兄ちゃんもまさか自分が知らない内にTVに出ていたとは、思いもしなかった事だろう

 

そこで一旦ホールディングに戻り、次の衣装に着替えたが、実はそこにはまた、別のカオスが待っていた

 

 

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