こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

前回のお話:

 

 

長いシーンの間を持たせる為に、話しかけに行ったカップルの黒人女性が、突然私に、「私達、以前映画のBGのシーンパートナーだった事があるわ。」と言う?!…言われてみれば、彼女には実はどことなく見覚えがあった…のだが、実は私は黒人の人は皆同じに見える…まぁ、おそらく向こうも「アジア人は皆一緒」と思っているのだろうからお互い様…と思っていたのだが、彼女の言葉を聞いて、私も思い出した!…確かとある映画の、それもやはり葬式の後のレセプションのシーンで、そういえば、その時も「明かに遺産目当てに結婚したらしい若い後家さん」について、無言のゴシップで盛り上がったのだ!

 

その時彼女は「あなたのClear Actionで、それを思い出したの!」と言う…「Action」というのは、シアターの演技用語で、「相手に明確に自分の意図を伝える事」…そして「その相手の意図をはっきり読み取って、それに反応する事」「Reaction」というのだが、そういう用語を使うというところからも、彼女がシアターのトレーニングを受けた俳優さんだとわかる…そして、そういうシアターの俳優さん達とは、たとえ無言でもちゃんと会話が成立するので、そのシーンがはるかに面白くなるのだ…勿論、それがカメラに映っているかどうかは、この際別問題だったりする…プロのBGアクターの中には、カメラがこちらを向いている時以外は何もしない人もいるが、シアター俳優のBG達は、あまりそういう事は気にしない…我々がそうするのは、その方が楽しいからだ…そういう似たようなシアター俳優さん達が近くに居てくれて、心底ホッとした

 

やがて、カメラの位置を大きく変え、私達カップルと、その隣の黒人カップルが、サイドのテーブルに呼ばれた…そこに座っているメインのキャラクターと一緒に歓談しているショットを撮るという?!…そのメインの女優さんはアジア人…一応プリンシパルには、ちゃんとInclusionしている?!…といいつつ、その日のメインキャラは、白人5人、黒人1人、そしてこのアジア人1人やっぱりギリギリ10%やんか?!

ともかく、その彼女を囲むのに、我々BGの場所を色々変え、ポジションを変え…そしてその内メンバーも変え始めた?!最初にそこから外されたのが、私のパートナーのアジア人男性…それが白人男性と変えられる…次に黒人男性が外され、白人の女性に…そして私も「Stand out(そこから出て)」と言われ、その私が居た場所には、別の白人女性が座った…その時点で、私はその場を離れたので、その黒人女性がそのままそこにキープされたかどうかわからない…が、もしそうでも、プリンシパルを加えても、やはりギリギリ「マイノリティ10%」は超えないようにしている?!そんなにマイノリティを映したくないのか?!

もっとも、これは後で「もし最初のメンバーだったら、マイノリティだけが隔離されている様に見えるからではないか?!」と夫(白人)に言われて、なるほどな…と思ったりもしたが、だったら白人ばっかり使わずに、もっと全体にマイノリティを散りばめておけよ?!…と、二重にむかついた…

 

そのシーンが終わると、待ちに待ったランチ

 

 

ランチはサテライト・ホールディングだったので、明るいし、食後にコーヒーも飲めたのはラッキー…しかし、デザートは私が取りに行った時は全てなくなっていた…すると、私のパートナーは、さっさとデザートを確保しているではないか?!…さすが、こういうところはプロである

 

ランチの後、今度は別の角度からの撮影となったが、その時、またセカンドADに、我々は後ろの方へ移された?!…でもまぁ、そこに誰かがいなければならないのなら仕方がない…が、その辺りには誰もおらず、またそこの床はミシミシと鶯張りの様な音を立てるので、歩き回る事もできない…そこで仕方なく、その場でパートナーと2人、ボーッと立っていた

ふと気がつくと、その後ろのエリアには別のアジア人男性とアジア人女性もいるではないか?!…何や、ここは?!チャイナタウンかい?!

 

そのまま撮影は進み、やがてオーバータイムに突入ずっと立ちっぱなしなので、脚も腰も痛くなってくるし、芝居もできず退屈だし…と、こうなると「早く帰りたい」という事しか頭に浮かばなくなる…

 

永遠に終わらない時間の様だったが、ようやく最後のワイドショット…これは全体を広角のカメラで撮影するもので、この時は一応「全員」がフレームの中に入る…そこでファーストADが「全員、一番最初の位置に戻れ」と言ったので、私は最初の中程の場所に行こうとしたのだが、念の為に通りかかったセカンドADに確認する…これがそもそもの間違いだった…という事に気づいたのは、後になってからだったが、私がセカンドADに「最初のショットではあの中程にいたんですけど。」と言うと、パートナーはすかさず「でも全然映ってなかったと思います。」と余計な事を言う?!…そこでセカンドADは「じゃあ、ここにいて。」と結局その後ろが我々の定位置となった…ところが、その我々が立っていた場所に、カメラがくるではないか?!…という事は、我々はフレーム外である?!…じゃぁ、ここにいる意味ないやんか?!

そこへ今度はファーストADが来たので、もう一度聞くと、ファーストADは我々を近景に置いたショットにしたかったらしい?!…ところが、そのアイディアはシネマトグラファーに速攻で却下され、我々は結局「Stand out」と言われ、ワイドショットからも外される?!

そこで仕方なくそこから離れると、もう1人のアジア人女性もショットから外されていた?!アジア人BGの5人中3人がアウト?!…ワイドショットでさえ外す意味って一体?!

 

考えてみたら、最初にADに聞いたりせず、しれっと真ん中に移動してしまえばよかったのだ…もしそれで差し支えがある様なら、また移動させられるだろうが、その時はその時の話…少なくともあの場所には、一緒にシーンを作ってくれるシアターの俳優達がいるのだ…どうせならその人達と一緒に芝居をしている方が、遥に楽しかったのに…

 

しかしその頃にはもう心身ともに疲れ果てていたので、もはやADに掛け合う気にもなれなかった…ただ何となく「あぁ、そういう事か…」という苦い思いを噛み締めた…Inclusionは進んでいる過去記事参照)…と思ってきたが、それはあくまで「以前に比べれば」というに過ぎず、本音の部分でそれが浸透するにはまだまだ時間がかかるのか…あるいは、たまたまそのプロダクションがそうだっただけかも知れないが、そういうプロダクションがまだある…という事と、その本音と建前の存在に、思わず心が萎えた

 

 

★過去記事★