こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

今朝は綺麗な青空

 

 

…しかし、気温はまさかの19°F(=-7.2℃)?!

 

 

…速攻で引きこもりの決断を下す…

 

 

前回のお話:

 

 

AIで生身のタレントの映像や音声のクローンを作り、生身の人間の代わりにそれを使う…このGenerative AIによるクローン問題は、最近急激に浮上してきたようだが、実はその危機感は少し前からあった…問題は、それが現実になってきたのが予想以上に早かった…今はまだ「まぁ、AIだからねぇ~」という「人間の方がやや優勢」という感じではあるが、その内「AIの方がいい仕事をする日」も来るのではないか?!…という気もしないでもない…

 

また、そのVOの会社にしても、実際AIのせいで仕事量も減っているのだろうし、同じようにAIを積極的に使った商売を始めている所もすでにあるのだろう…ならば、そういう所に仕事を全て取られるよりは、早い内にウチでも!…というのも解らないでもない…

さらに私にしても、どの道今のままでは、仕事はどんどん減っていくばかり…ならば、少しでも収入になる道を探すべきではないか?!…と、思わないでもない…

 

しかし、私はどうしても「やります!」と、すぐにそれに飛び込む気になれなかった…元々私は「ファースト・ペンギン」には絶対なれない小心者だが、おそらく飛び込む前に、そこが岩場でない事と、そこに魚がいる事を自分でしっかり確認してからでないと、他のペンギンに続いて飛び込むのも嫌なタイプである…

 

もっとも、世の中には「AI」と聞いただけで「悪」だと思うような人もいるが、私はAIが必ずしも悪いとは思っていないし、場合によっては積極的に使ってもいい…とさえ思っている…しかし、それはあくまでリスクも天秤にかけた上で、それでも自分にメリットがあると思える場合だけである…

例えば、私のコンプレックスの根源である「訛り問題」を、もしAIが補正してくれるなら、どうぞいくらでも加工しておくれやす!…と即座に同意書にサインする…それによって、「私らしさ」はやや損なわれるかもしれないが、何十年努力しても完全には無くならない日本語訛り気にするなと言われても、気にしない方が無理である…そのくらい自分の中に深い闇として居座っているこの問題が、もしAIで解決するなら訛りなんか気にせず、本当に演技に集中できる…それにキャスティングでも「アメリカ人の英語じゃないから」という理由で、オーディションさえ受けられないという思いもしなくて済むその為なら、むしろAIを積極的に歓迎したいくらいである

 

しかし今回は、実はそこまでのメリットを感じられないのだ…

 

まずその声のクローンの使用をトラックする…というが、本当に100%それが可能なものか?!そもそも全てのネット使用をモニターする事など可能なのだろうか?!…それは結局、使い手の良心に委ねられるのではないか?!

 

また使用期間の制限はあるのか?!…例えば、今私が許可を与えて、私の声のクローンが作られたとする…そしてその数年後に、万が一私が大スターになった場合、あるいは私が死んだ後も、私のクローン声で新しいナレーションはそのまま作り続けられる?!

 

そしてその使用料だが、ただでさえこういう会社の我々のギャラは安い…というか、そもそもそこを使うのは「コスト削減」目的が多いのだから仕方がないのだが、そのAIの使用料が、生身の人間のギャラより高いとはちょっと考えられないから、支払われるのは今のレートより確実に安い額だろう…と予想される…まぁ、実際に自分が録音の労働をしなくて済むのだから、それでもええんちゃうか?…と思わないでもないが、すでに録音したものの使用料ならともかく、そのクローンによる新しい録音…というのが何か引っかかる…通常なら、新しいバージョンが必要な時は、「再録音」として規定のギャラが支払われるし、全く新しいプロジェクトの場合はもちろん、その度にその時のレートでギャラは支払われる…しかし、クローン声の使用料に、インフラ上昇率が反映するとは、ちょっと考えられないのだが…

 

また、よしんばそのギャラがそんなに悪くなかったとしても、そうやってクローン声でどんどん新しいナレーションが作られるなら、いずれ私本人の存在価値などなくなるのではないか?!…それは長い目で見た場合、本当にそれでもいいのか?!…「長い目」と言ったが、そのスパンは意外に短いかもしれないのだ

 

また使用期間もさることながら、自分の声のクローンが、一体何の為に使われるか?!…という事に関して、我々声優は全く感知できなくなる…これまでは、録音する時に何となく見当がついたし、普通は録音する前にその概要は知らせてもらえるのだが、AIのクローン声だとそれがない?!気がついたら、自分の声のクローンポルノに使われていたり、あるいは私が絶対にやらない事にしているタバコや軍隊のコマーシャル、はたまたトランプのMAGAキャンペーンなんかに使われていたら?!…これはたとえ使用料をちゃんと払われても、絶対に嫌である

 

そして何より、私自身が、そのサンプルのデモをどうしても好きになれなかった事もある…それは外国語だったが、確かに正確で滑舌の良い綺麗なナレーションなのはわかる…しかしやはり人間の温かみがない…まぁ、そういうナレーションをする人もいないわけではないのだが、少なくとも私はそういう話し方をしない様にしてきたつもりだし、事実「AIにはできない人間味を加えた話し方」が、唯一AIに勝てる方法だと思っている…が、このクローン声は、当然の事ながら人間味までは再生できないようだ…もっとも、それもいずれはAIにマスターされてしまうかもしれないし、それはさほど遠い先ではないかもしれないのだが、何もその期間を自ら縮める必要はないだろう…何よりも、人間味のない自分の声など聞きたくもない

 

そういうわけで、今回は見送る決心をした…しかし、今回は海外の会社だったが、いずれこれがアメリカ国内の会社、さらにユニオンの仕事でも、こういう決断を迫られる時がくるかもしれない

 

AIとの付き合い方が真に問われるのは、これから…という気がする…