こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断のツッコミなどをお届けしています。

 

先日、最高裁によって、Roe v. Wadeが覆され、「中絶を禁止する法律は合憲」という扱いとなった…(過去記事参照)

この結果、各州が中絶禁止の法律を作ることが解禁となり、そういう州に住む女性達は、レイプなどによる望まぬ妊娠に関する選択の自由を奪われる事になる

 

そんな中、この判決について、「こんなことが起こってしまったのはバイデン政権のせい」というSNSのポストを見かける…えくすきゅ~ずみぃ?!…どこまでアホやねん?!と思わず目が点になる…何かあるとバイデンを攻撃したがるのが、共和党の人達のパターンだが、さすがにこれには速攻でツッコミのコメントが殺到していた…

 

しかしこういう共和党の人も、一応この判決が女性にとってはとんでもないものである…という認識はあるようで、全ての共和党の人達が中絶禁止を歓迎しているわけではない…というのは興味深い…事実、60%以上のアメリカ人は、女性の中絶を選択する権利をサポートしているのだ…また、トランプ自身は、実は本物のPro-Lifeではない…それは彼をサポートする共和党、特にアンジェリカなどの極右教会がそれを望んでいるので、そのフリをしているだけなのだが、実は彼自身も、過去に愛人に中絶させたりしており、本当に中絶が違法だったら真っ先に困っていたなのである…

 

ただ日本には意外にトランプ信者がいるようで、QANON系のデマが少し遅れて出回ったりもしているのに時々驚かされる…ひょっとしたらそういう誤解をしている人もいるかもしれないので、はっきり言っておく…今回の最高裁の爆弾判決は、まさにトランプの置き土産なのである。

 

なぜとっくに政権を離れた彼が?!…と思われるかもしれないが、これは彼が任期中に、3人の最高裁判事を任命しているからである…最高裁判事は生涯職なので、死ぬか引退するかしか入れ替わりがないのだが、そのレアなチャンスが3回もあった…というのがある意味すごい事ではある…彼の任期の1年前に判事の一人が死亡、さらに彼の任期中に1人が引退、そいてRBGことルース・ギンズバーグ判事が彼の任期の切れる直前に死亡

 

しかし、その任命に関する共和党のやり方が、なんとも汚いものだった…その最初の1人はオバマ政権が後4ヶ月を残す時で、当時共和党が圧倒的に優勢だった上院が、その公聴会自体を拒否公聴会で上院に承認されなければ、大統領は判事を任命する事はできないので、そのまま最高裁判事が1人足りないままオバマの任期が終わってしまい、結局翌年トランプによって別なバリバリの保守系判事が任命された…もっとも、この死亡した前任者も保守だったので、このニール・ゴーサッチあたりまではまだしもわからないでもないが、その後の2人の人選が問題だった…最高裁判事は憲法の護り手なので、なるべくバランスを保てるように、極端に思想が偏った人はなるべく避ける…というのが常識だが、トランプに常識は通じない…彼が指名したのはまたよりによってバリバリの極右の保守だった…しかも2人共まだ若く、キャリアの上でも連邦判事の経験自体がほとんどなくほんまに資格あるんか、この人達?!と素人にも思えるほど…特にブレット・キャバナーに至ってはセクハラ騒動が持ち上がり、それに逆ギレして公聴会中に泣き叫ぶ…これには共和党の議員さえも、「ちょっと大丈夫かな、こいつ?」と思ったのではないかと思うのだが、どう考えても、トランプがいなかったら絶対に最高裁判事のポジションなんか回ってこないような人材だった…ところが、これも当時は共和党が圧倒的に優勢だった上院は、あっさり承認

3人目のエイミー・コニー・バレットも、バリバリのPro-Life(中絶禁止)派で、その指名もトランプの任期が切れる直前…公聴会だけでも結構時間がかかるので、普通なら次の大統領に指名させるべきで、事実それは亡くなったRBGの遺言でもあったのだ…本当に、彼女がせめて後1ヶ月長く生きていてくれれば…と思わずにはいられない…

 

実際、例のオバマの時には、それよりもはるかに時間があったというのに、公聴会そのものをブロックした癖に、同じ人達が全く真逆な決断をし、ものすごいスピードプロセスで、彼女をあっという間に承認してしまった…そこで最高裁は保守6人&革新3人というアンバランスなものになってしまう…つまりそのトランプが送り込んだ極右の判事3人の決断が決定的となり、今回のRoe v. Wadeを無効にした…というわけである。

 

しかも、このトランプの指名した判事達は、公聴会の時には、全員が「Roe v. Wadeは既に法律の様なものなので、それを変えることはできない。」としれっと断言していたにも関わらず、それを変えてしまったのだ?!宣誓した公聴会で大嘘やんか?!…これって、弾劾の理由にならんのか?…とふと思ったが、今の上院では共和党にブロックされてしまうだろう…

 

また、これに対してバイデンはなぜ何もしないのか?…と非難する人もいるが、冗談言ってはいけない!…これこそお門違いもいいところで、大統領が最高裁の決定を覆すことなどできないし、あってはならない事なのだ…これが民主主義の原則、三権分立というものである。

 

またトランプの方がパワフルに色々やっていた…という人もいるが、彼がやったのは税金を無駄遣いして国境に巨大な壁を建てた事今そのメンテナンスはどうなっているのだろう?)と、超金持ちへの減税(このおかげでアメリカ財政は再び大赤字となる)くらいで、コロナ対策に至っては最初は「中国のデマ」とか「インフルエンザよりまし」とほとんど何もせず、シャットダウンしてアメリカが困窮し始めて慌てて給付金をばら撒いたものの、はっきり言ってニューヨークでは1ヶ月分の家賃にもならない額…ただし、彼はマーケティングの天才だった…さすがに長年ショービジネス界にいただけの事はあり有る事無い事(その大半は事実無根の大ボラだったが)言いまくりTwitterで呟きまくり、派手なパフォーマンス「なんかやってる感」を積極的にアピール…しかしペロシに首根っこを抑えられていたので、議会を通した政策で、めぼしいものは実は超金持ちへの減税政策だけである…

外国に対してもハッタリをかまして喧嘩を売りまくるが、実際に対面すると実は小心者で、結局ロシアと中国の言いなりだった…欧州とカナダからは総スカンを食っていた中で、唯一彼に尻尾を降っていたのが日本のアベちゃんで、あの頃日本は世界中から笑い者になっていたあの頃の国辱感は忘れられたものではない…実は、彼が選挙に敗れた後の一連の犯罪的行動が今徐々に明らかにされているが、これについてはまた別の機会にお話したい。

 

そんな彼が大統領でなくなったからといって、実は問題が全てなくなったわけではない…大統領令によって彼が勝手に変えた事のほとんどは、バイデンがまた元に戻したりしているが、議会を通した減税政策などは大統領でも戻せない…例の三権分立ゆえである。

さらに、この最高裁の判事というトランプの置き土産が引き起こす問題は、これからも続く事だろう…

 

最高裁判所の前で集まり、デモをする事も大事かもしれないが、私はむしろ、それを11月の中間選挙へのキャンペーンの方に力を入れるべきだと思う…実際、共和党は既にそうしているのだ…

トランプが指名した極右判事を承認したのは、当時圧倒的に優勢であった共和党議員である…そして今日、必要な銃規制を阻んでいるのも同じ人達である…そして、それを許したのは中間選挙での共和党の圧勝だった…ということは、次の中間選挙で民主党が圧勝し、議席が増えれば、本格的な銃規制や本当の改革も夢ではない

 

また、州の中絶禁止法をなくすことができるのはその州の知事…つまり、知事が民主党の知事に変われば、その中絶禁止法を廃止する事ができ、その州の女性達はまた選択の権利を持つことができる

 

そして、これらの変化をもたらすことができるのが、選挙なのである民主主義は、皆が選挙に行って初めて効果を発する…逆を言えば、選挙に行く人が少なければ、保守が勝つようにできているのだ…日本の投票率の低さと自民党勝利は、決して無関係ではない

 

私はこの国の選挙権がないので、アメリカ人がちゃんと投票してくれるのを見守るしかないが、日本の今度の参院選挙にはちゃんと投票に行くつもりだ…海外在住者にも、1週間早くにではあるが、ちゃんと投票できるのだ。

 

トランプ政権の誕生を許したのは、皆が選挙に行かなかったのが大きな原因であった事を忘れてはならない

 

 

★過去記事★