こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断のツッコミなどをお届けしています。

 

ここ数日、アメリカは揺れに揺れている…まさかこんなことが、21世紀に、曲がりなりにも自由の国を自負するアメリカで起こるとは…本当にお前は先進国か?!…と大いに突っ込みまくったが、リアルタイムの時事ネタとは距離を置く…という禁をまた破らずにはいられない…(なので今回はボケません…)

 

2日前、アメリカの最高裁が、信じられない判決を下したニューヨーク州の「許可なしに銃の携帯を禁じる銃規制の法律」が違憲である…つまり、「武器を持つ権利」を保証するアメリカの憲法第2条に反するので、ニューヨーク州は法律でそれを禁止してはならない…というのだ…えくすきゅ〜ずみぃ?!「正気か、お前?!」と叫んだのは、ニューヨーカーだけではないだろう…しかも、よりによってそのお膝元のバッファローでMass shootingが起こった矢先の事である…

 

もっとも、これらのMass shootingの直後、ニューヨーク州はいち早く銃規制を厳しくし、おそらく他州も続々それに従うだろう…と思われた。

またこれまで徹底して銃規制に反対し続けていた共和党の議員達も、さすがに今度という今度は何かしないと、次回の当選が危うい…と気づき始めた事だろう…何と言っても、アメリカ市民の90%は、何らかの銃規制を望んでいるのだ…なので議会がもたもたしている前に、各州でさっさと銃規制を強化するだろう…と思われていたが、今回の判決は、そういう州が増える事を牽制する為ではないか…というのが、私の独断による推測である。

 

また、最高裁の役割は、その法律が「憲法に合っているかどうか」、つまり「合憲」か「違憲」かという事を判断するものなので、憲法に「自衛の為に武器を携帯する権利」がはっきり明記されている以上、文句は言えない…もっとも、これはまだアメリカという国が国の軍隊を持たず、私設軍に頼らざるを得なかった時代の名残で、ここでいう「銃」は一発ずつ弾をこめねばならない火縄銃程度のものだったりするし、その頃には一般市民をターゲットにしたMass shootingが頻繁に起こる事もなかったのだが

 

ただ、そこで「合憲」とされたのはあくまで「concealed weapons」つまり、拳銃などの「隠して持てる銃」なので、隠して持てないAR-15マシンガンなどは含まれない…はずである…もっとも、映画やTVのように、ギターケースや義手に仕込んで隠し持っている場合はどうなのかわからないが…

 

また、それらをあくまで「護身」の為に持つのは合憲だが、その武器で他の人達が危険に晒される「Sensitive」な場所での使用を禁じる事は「違憲ではない」…そのSensitiveな場所というのは、例えば地下鉄や建物の中、また人の大勢いる場所…だが、大通りや駐車場はどうなのか…この「Sensitive」の解釈がキーとなりそうだが、おそらくニューヨーク州のホークル知事は、その「Sensitiveの解釈」を最大限に利用して、「銃を隠し持ってもいいが、実質的にはほとんどの場所で使えない」という法律で反撃してくれるのではないか…と、密かに期待している…

 

ただ、銃を「持っているだけで絶対使わない」などという事は、実質的には不可能である…そもそも使うつもりがなければそんなもの持つわけがないし、それに銃は持てば使いたくなるものなのだ…これは、私自身の実体験過去記事参照)からそう断言できるし、だからこそ「持たせない」「使わせない」という銃規制が絶対に必要だと、私が信じる故である。

 

ところがその翌日、最高裁はまたもや爆弾判決を落としてくれる…あろうことか、少し前にリークされたように過去記事参照)、Roe v. Wadeを無効にし、「中絶を禁止する法律は合憲である」という判決を下したのだ…本当に空いた口が塞がらない…とはこの事である…「正気か?」というより、「喧嘩売っとるんか?」としか思えない…しかも、このタイミングである…

 

実は本日、連邦による銃規制の法案がようやく可決し、大統領が署名した…これについては、また後日ゆっくり書きたいが、はっきり言って本当に必要な銃規制とは程遠い、「無いよりはマシ」という程度の代物である…30年経ってようやく銃規制への第一歩…という意味で評価する意見もあるが、「30年もかかって、何百人も殺して、この程度かよ?!」と、私は大いに突っ込みたい…

しかし、そんな中途半端な銃規制でも、共和党にとっては「敗」…なので、その前のニューヨーク州への「銃携帯の合憲判決」は、共和党のほとんどが反対している「中絶問題」でその機嫌を取ろうとしたのか…あるいは、これで前日の銃規制問題が帳消しになるとでも思っていたのではないか…というのが、これまた私の独断による推測である…現にメディアの扱いは、今はこの「中絶判決」の話題一色となっている…

 

あるいは、この問題はすでにリークされているし、いつ出しても話題になる大問題なので、どうせなら別の大問題とぶつけた方が相殺し合って個々の印象が薄まるのでは…とでも思っていたのか?!…だとしたら、とんだお門違いである…国民を舐めるのもいい加減にしろ!と言いたい…これは問題をキャンセルするどころか、火に油を注ぐ事になるだろう…確かに、メディアの扱いは偏ったが、これによってアメリカの最高裁への信頼は確実に地に落ちた全米のパワフルな女性達を敵に回してしまったのだから、ただでは済まない…いや、済ませてはならない…

 

もっともそれを喜ぶ女性達も大勢いるのも事実だ…その人達に「あんたホンマにこれがどういう事かわかってる?!」と面と向かって聞いてみたい…中絶の違法化は、必ずしも中絶を減少させないが、確実に危険な違法中絶を増大させる自分が、あるいは自分の娘が、その立場になった時の事を考えた事があるのだろうか…

 

この判決のせいで、中絶を禁止する州に住む女性達は、中絶の選択の自由を失った…これは他でもない、自由の国を歌うアメリカにおける、21世紀の現代の話である…「これでアメリカは約150年後退した…」とバイデン大統領は言う…

 

ただし最終的にはその州の法律に任せる…というのが最高裁の言い分である…先の銃規制については、州の決断に「違憲やからやめろ!」とわざわざちょっかいを出したくせに、その舌の根も乾かぬうちに「これは国が判断するより各州に任せるべきだ」というのだから、全くふざけるのもいい加減にしろと言いたい!

州によっては、未成年の中絶はできないが、銃の購入は未成年でもできる…という事も起こるわけである…

 

これまでは、国が間違いを犯しても、最高裁がアメリカの良心としての役割を果たしてくれる…最高裁は、政治的な意図とは無関係に、純粋に憲法と良心に則った正義の判断を下してくれ、政治的な意図にまみれた国の方向を正してくれる…という想いがどこかにあった…ところが今では、一番信用できないのが、他ならぬ最高裁…となってしまったのだから、この裏切られた感はあまりにも大きい

 

こうなると、各知事の方針が、文字通りその州の運命を変える…アメリカは各州の力が、時には独立国並みに強いので、どの州に住むか…という事が、文字通り生死の分かれ目にもなりうる

また、だからこそ、住民の選挙にかける熱意も大きい…妙な奴が当選してしまったら、冗談ではなく死活問題だからだ…ニューヨーク州では近々、永住者もローカルの選挙には投票できるようになるらしいが、その日が待ち遠しい…

 

日本も最高裁がイマイチ「良心」として機能していない…という点では、今のアメリカに近いかもしれない…だからこそ誰を自分達の代弁者に選ぶか?…という議員の選出がものすごく大事になる…これから始まる参議院選挙も、そのことを肝に銘じて臨みたい…

 

 

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