こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子などをお届けしています。

 

前回のお話:

 

 

リーディング当日のRED FLAG

さてリーディング当日…その前にはかなり不安な要素もあったものの、実際リーディングが始まってしまえば、後は我々役者のもの…幸い、私の相手役は若いながらも非常にいい女優さんで、難大有りの台詞もそれを自分なりに解釈してリアリティを持たせ、少なくとも私達のやりとりは、語彙はともかく、リアルで血の通ったものになったし、私自身も一面的なキャラクターに十分人間性を持たせる事には成功したと思っている…つまり、私としては、結構上手くいっていたと思っていたし、他のキャスト達の反応からもそう言う確かな手応えがあった

 

ちなみに私のメインの役は一幕目だけに登場し、二幕目は他の役をやる事になっていた…が、それはそう大きな役ではなかったし、アジア人の役でもなかったが、私の得意なタイプでもあったので、それなりに演技プランも立てて準備し、あまつさえ別な衣装さえ用意していた…

 

一幕目は何とか無事終わり、今度は別の役で二幕目…と思ったら、その二幕目が始まる直前に、いきなりその脚本家は、私のやるはずだったその役を、何と他の人に与えると言う?!

…しかしその言われた人は、同じシーンの別な役にもキャストされており、本来そのシーンは私と彼女との会話だったのだ…しかしそれを彼女がやるなら、なんとそのシーン中一人二役で延々一人で喋っていなければならない?!…さすがにその当人もその事を指摘するが、脚本家はそれでもいいと言う?!

 

実はあまりの事に、最初私は何が起こったのか、一瞬わからないまま、とりあえずカメラと音声をオフにし、呆然とその第二幕を眺めていた

そして、その問題のシーンになり、本来なら私の相手役になるはずの女優さんが延々と一人で読んでいくのを聞いているうちに、そうか、私はこの2つ目の役から突然降ろされたのだ…という事が、事実として認識できた…が、不思議な事に、悲しみとか怒りとか、そういった感情は全く起こらなかった…ふうん、そういう事するんだ…と、他人事のように感じていただけである…その意味するところがわかってきたのは、少し後になってからである…つまりこれは「彼女にはもう任せられないから、クビにする」と言っているようなものなのだが、本当にそんなに酷かったか、私?!…よしんばそうだったとしても、こちらはギャラをもらっているわけでもなく、直接のメリットはないのに、脚本家達の為に、ボランティアで時間と労力を提供しているのである…感謝される事以外の反応を、迂闊にも私は全く予想していなかった…と言うか、普通やるか?そこまで失礼な事?!それとも嫌がらせ?!

映像の仕事で、いきなり出番をカットされた事はあった過去記事参照)が、ライブのパフォーマンスで、本番直前にこんな扱いを受けたのは、さすがに初めての事だった…

 

そもそも、この配役チェンジは一体何の為?!…これが百歩譲って、チケットを売って観客に見せているような場合とか、何週間ものリハーサルにも関わらず一向に進歩がないから…という理由で降ろされる…というなら(それもまた残酷な仕打ちではあるが)、まぁ、まだわからないでもないし、実際そういう例をプロダクションで目撃した事もある…しかしこれはその前の段階のリーディングなのだ…リハーサルなどなく、そもそも外部の観客さえ一人もいない!…それに私の役を押し付けられた女優さんも気の毒な話である…ひょっとしたら彼女もそれなりにそのシーンの準備をしていたのかもしれないし、実際の会話の最中に、俳優同士の間で生きた瞬間が生まれることもある…なのに、全く初見で別の役を読まねばならず、そのために自分の役も中途半端…何よりも、一人二役で自分一人が延々シーンを読む…というのは、やっている内に虚し~くなってくるものなのだ…

 

この事で、他の人達もドン引きしてしまったのか、二幕目はとにかくできるだけ早く読み終わらせよう…と言う感じで、皆ただひたすら早口で読み流す…てな感じで最後まで終わった…

リーディングが終わって、本来ならキャストがそのフィードバックを提供するのだが、この時の私には、もうこの人にはもう何を言っても無駄…というか、そもそもこの脚本はちょっとやそっとのアドバイスで良くなるような代物ではないし、多分私が何を言っても、この人には理解できないだろうし、おそらく聞く気もないのだろう…という事がはっきり分かった…

そこで私は一言も口を開かず、時間になると誰よりも早く退出し、さっさとその翌日の別のリーディングの準備に入った…

 

ところが、何とそれはまだ終わりではなかった

 

 

 

その4へ続く)

 

 

★過去記事★