こんにちは。ニューヨークで役者達やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子などをお届けしています。

 

Scene? or Monologue?

コロナウィルスのせいで、全てのプロダクションがシャットダウンされている今、少なくとも現在は、Unionのプロダクションのオーディションは全く行われていない…これは、オーディションの前に、撮影日などのスケジュール確認もしておかなければならないのだが、現在撮影が一体いつになるのか誰にもわからない状態だからだ仕事がないのは我々俳優だけではなく、キャスティング・ディレクターも同じ事…そこで、キャスティング・ディレクターの中には、新しい俳優と知り合うため「General」と呼ばれる、特定のプロジェクトのためではないオープンコールをしてくれる人達がいる…というお話は前にも書いた。(過去記事参照)

 

その中には、ヘッドショット・レジュメ・リールを送れという楽なものから、歌やモノローグを送れ…というもの、課題を与えてそれをSelf-tapeで送れ…というもの、さらにそのSides-tapeもオリジナルなものを作れ…という無理難題過去記事参照)…と様々である。しかし、共通するのは、必ず非常に具体的な指示(Instruction)が出され、我々はそれに従わなければならない…その指示に従わないという事は、こいつはその指示が理解できないアホか、実際のオーディションやプロダクションでも同じ様に勝手な事をやる奴…と思われるからだ。

 

先日、やはりそういうGeneralのリクエストがあったのだが、それは最近のTVや映画からの2分以内のシーンを送れ…というものだった。実はこれはまた随分厄介なリクエストである…

そもそも、シーンを送るという事は、シーンの相手役が必要なのだが、それは同じ俳優と住んでいない限り、お互いに行き来ができない今のご時世、これはかなり難しい…よしんば家族やルームメイトと住んでいても、Non-actorに相手役を頼むのは、実はリスクが大きいのだ…幸い私は夫も俳優なので、その点はラッキーだが、生憎奴は自宅勤務中…一緒に住んでいても、必ずしも暇なわけではない

さらに、2分間という短さで、しかも自分の演技をアピールできるシーン…なんて、そう簡単に見つかるものではない!…シーンどころか、モノローグでさえ、自分に合ったものを見つけるのは結構大変なのだ…そもそもアジア人のキャラクターなんてほとんど出てこんやろが?!…もっとも、こういう機会だからこそ、Non-Asianのキャラクターを敢えてやる…という人もいるだろうが…

 

もっともすでにリリースされたものではなく、実際のオーディションでやったものなら、そういうシーンもないわけではない…少なくともキャラクターは私のタイプ(だからオーディションにも呼ばれているのだ)し、大体オーディションのシーンは2~3分である…しかし、それらはまだリリースされておらず(それどころかコロナのせいで撮影も完了しておらず)、これがワークショップならともかく、特定のサイトに映像をアップロードしなければならない場合だと、ちょっと厄介である…実は俳優は、オーディションで知った内容を、それがリリースされるまで絶対に口外してはならないからだ…なので「○○の番組で、別れた時に妊娠していた、主人公の彼女の役に受かった!」なんて事をSNSで絶対公表してはならない…というのはもはや常識である…それによって、その番組の「実は主人公に隠し子が?!」…という特定のエピソードのプロットをバラしてしまうからだ…これは特にTVや映画ではかなり深刻で、場合によってはその違反で即刻クビになる事もある…

また、有名なシーンの再現は、ある意味とてもリスキーである…例えばもし「Joker」のシーンをやったら、誰もがJP様の名演技を思い浮かべる…オスカー俳優と比べられては勝ち目はないし、大抵肝心の自分の演技など霞んでしまう… 

 

その時、ふとそのキャスティング・ディレクターの名前に、見覚えがある様な気がした…とはいえ、私は名前を覚えるのが苦手なので、どこで見た名前なのか思い出せない…しかし、オーディションやワークショップで会ったキャスティング・ディレクターの名前は記録してあるので、もしそうなら見つかるはず…と過去の記録を見てみると、なんと4年前にワークショップで会っているではないか!…しかも記録によると、そのワークショップでは、私はドラマティック・モノローグをやっていた?!そもそもお知り合いになる為のワークショップに、わざわざ金払って出ておきながら、忘れてどうする?!…と激しく自分に突っ込んだが、まぁ、ワークショップも、基本的にはGeneralと同じ目的のもので、その時にもモノローグをやっているなら、今回もすでに持ちネタのモノローグの方が良くないか?!これなら確実に2分以内だという事はわかっているのだ…それに考えてみたら、TVや映画のシーンなら、何もわざわざSelf-tapeで撮らなくても、リールにプロの撮ったものがいくつも入っているではないか?!

 

いつもは必ずキャスティング・ディレクターの指示に従う私だが、そういうわけで、この時だけは、シーンの代わりにモノローグを送る事にした。それで印象が悪くなるリスクもないわけではないが、前に会っていて、初対面ではないわけだし、その時にドラマのモノローグをやっていたならば、今度はコメディがやりたい…という思いもあったからだ。

 

ところが、思わぬ問題が待ち構えていた?!

 

(その2へ続く)

 

★過去記事★