こんにちは、ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場からのレポートをお届けしています。

 

これまでのお話: 

アメリカにはプロの俳優の為のユニオン(労働組合)が存在し、そのユニオンによって、俳優の労働としての権利と保護が与えられている。

ここでは、その俳優のユニオンの1つ、映像のユニオンであるSAG-AFTRAについてご紹介したい。

 

入会資格

前にも少し触れたが、ユニオンに入る資格は、ユニオンのプロダクションのユニオン・コントラクトの仕事をする事によって得られる。そしてユニオン・コントラクトの仕事を得るには、オーディションに受からなければならない…しかし、ユニオン・コントラクトの仕事のオーディションには、ユニオンのメンバーでなければ呼んではもらえないどないせぇっちゅうんじゃ?!…アメリカではCatch-22、日本では矛盾と呼ばれるこのジレンマを何とかしないと、理論上は誰もユニオンに入れない事になる…では、実際どうやったらユニオンに入れるのか?

 

その1:ユニオンのコマーシャルの仕事

コマーシャルは、どちらかといえば、演技力よりも特定のタイプに合うかどうかが決め手になるので、キャスティング・ディレクターも、その特定のタイプを求めて、ノンユニオンからも幅広くオーディションに呼ぶ傾向がある…というわけで、あまり演技のキャリアが無い人にも比較的チャンスがある。もっとも、タイプが合わなければどうしようもない…という事でもあるのだが…

 

その2:インディ映画やウェブ・シリーズ等、比較的低予算のユニオン・プロジェクトの仕事

実は、かくいう私もこの方法で入ったのだが、これは確かにある程度の演技のキャリアは必要ではあるものの、ギャラが安い分、メジャー映画やTVほど競争率は高くないので、その分チャンスも大きい…また資金力のある人の中には、映画やウェブ・シリーズのプロダクションを自分で立ち上げ、それをユニオン・コントラクトにして、それに自分もキャストしてしまう…という方法をとる人もいないわけではない。

 

その3:エージェントのプッシュ

もしエージェントを持つなら、そのエージェントに頼んで、キャスティング・ディレクターに、自分をオーディションに呼んでくれるようにプッシュしてもらう…という手もある。ただ、それがどれだけ効果的かは、エージェントとキャスティング・ディレクターにもよるのだが…

 

その4:キャスティング・ディレクターに直接アタック

キャスティング・ディレクターと知り合いになり、個人で直接プッシュする…という手もないわけではない。そのために、キャスティング・ディレクターに自分のヘッドショットやポストカードを送り付ける、あるいは、キャスティング・ディレクターのワークショップに参加して、少しでも自分の演技をみてもらう…というのは、よくやられている方法である。ただ、ワークショップでお目見えするのは、確実に競争できるレベルになってからの方がいい…というのも、キャスティング・ディレクターには象並の記憶力の持ち主が多く(象のような記憶力)、良い印象を与えられればいいが、「まだまだ未熟」として覚えられたら最後、ますますオーディションには呼んでもらえなくなるからだ。

また、最近ではSNSを通してダイレクトにアプローチする…という人もいるが、これもキャスティング・ディレクターによっては逆効果になるので、注意が必要である。

 

その5:BGのユニオン枠

プリンシパルの仕事を通してユニオンに入る以外に、実はBGによってユニオンに入る人が、実はかなりの数いる。前にも言ったように、BGにもユニオン枠があり、2018年現在では、TVは25人、映画は85人までユニオンのBGを使わなければならない。ところが、何らかの理由で、その数に満たないユニオンしか見つからない時は、ノンユニオンからその分が補充され、その際そのノンユニオンBGに、「Waiver」と呼ばれるものが与えられる。このWaiver(正式には「Taft-Hartley」)はユニオンに入っていなくても、ユニオン・メンバーと同じ待遇が受けられるというもので、これが3回あれば、ユニオンに入る資格が得られるのだ…もっとも、大抵はユニオンの人だけで足りてしまうので、これは滅多にない事…いわば、運の強さを買われた…といえるかもしれない。

実はこの方法でユニオンに入ったアジア人のBGはかなり多い…Waiverが出やすいのは、アジア人やアラブ人などのマイノリティの場合が多いと言われており、SAG-AFTRAに合体する前は、ユニオン・メンバーの数が今より少なく、雇わなければならないユニオンBGの数も、今よりかなり多かったからだ。だから、そうした人達の中には、ユニオン・メンバーであっても、かつて1度も演技をした事もセリフを喋った事もない人が、決して少なくない…(関連記事:ナンチャッテ観光客

 

さて、そうして晴れてユニオン・メンバーになれば、バラ色の日々が約束されるか…といえば、実は決してそうではない

次回は、ユニオンに入る事のメリット&デメリットについてお話しする。

 

その7へ続く)