こんにちは。NYで役者やってます、まみきむです。

 

前回のお話:

 

 

 

とあるコマーシャルの仕事で、日本人観光客の役をやる事になったが、その用意された衣装や小道具は、「今時こんな観光客おらんわ!」というようなベタなものだった…

ナンチャッテ観光客(2)

そのシーンで観光客役に呼ばれていたのは、私の他にもう一人、アジア人のオッサンで、どうも私と彼はカップルという設定らしい…しかし、このオッサンがまた困ったちゃんだった…

開口一番、彼が私に聞いたのは「Are you SAG?(君、SAGに入ってる?)」…SAGというのは、Screen Actors Guild(全米映画協会)、つまり映像のユニオンの事。当時私はまだそのユニオンに入っていなかったのだが、彼はSAGに入っており、私がノンユニオンだと知るや否や、途端に上から目線で威張りだす…自分が、いかにSAGの役者として長年のキャリアを積んでいるかという自慢話を延々と語り、誰それと一緒に仕事をしたと、スターの名前をちらつかせる(はっきり言ってかなり眉唾!)…さらに、このプロダクションの待遇はなっていないと文句タラタラ…ちなみに、このコマーシャルはノンユニオンの仕事である…ならあんたは、何でわざわざノンユニオンの仕事をしているわけ?(本当は違反だろうが!)…とツッコミたくなったが、かろうじて喉元で寸止め…まあ、当時は、まだ当意即妙に嫌味が言えるほど英語に自信がなかったし、なんとなくこのオッサン、面倒くさそう…という予感がしたからだ。

それにしても、アジアのオヤジは、どうしてこう皆似たような行動をとるのか…自分より上(強者)に対しては卑屈なくせに、下(弱者)に対してはやたら威張りたがる…本当にうんざりしたが、他に人がいないから逃げ場がない…仕方なく英語がわからないふりをして、適当に聞き流すが、そもそも相手は私の反応など気にしちゃいない…しかし、さすがにこれから一緒に仕事をするパートナーと、ガチで喧嘩するのはまずい…必死で聞き流すが、いい加減そろそろ限界…と思ったころ、PAさんが呼びに来た…助かった…

 

ちなみに、これは確かアルジェリアのクッキング・オイルのコマーシャルで、シーンは、主人公の男性が、そのオイルの瓶を抱えてタイムズスクエアをうろうろしていると、観光客にぶつかられ、そのオイルの瓶を落としてしまう…というもの。その後一体どういう展開になるのか、大いに気になるところなのだが、ぶつかった後、我々は即座に退場してしまうので、今に至るまでそれは謎である…ともかく、私達の出番はその1シーンだけだった。

そのぶつかる役は、SAGオヤジがやる事になり、私はその隣を歩いているだけだから楽である。オッサンも、あれだけSAGの役者としてのキャリア自慢をしていたのだから、これはかなり早く終わるかもしれない…ラッキー!オーバータイムが付かないノンユニオンの仕事は、早く終わる程割がいい…それに何よりも、これ以上このオッサンに付き合うのはもう勘弁

 

ところが、またもや一寸先は闇…予期せぬ出来事が私を待っていた…

 

その3へ続く)