殺人などの公訴時効を廃止する改正刑事訴訟法が施行されて去る27日


で丸10年を過ぎました。継続的な捜査で容疑者の逮捕につながった事件


がある一方、多くは解決の糸口を見いだせないままです。時効成立直前に


改正法が施行されて捜査続行が決まり、27日に発生から25年を過ぎた


倉敷市児島上の町の夫婦殺人放火事件もその一つです。岡山県警への


情報提供は年々減少し、捜査は膠着状態が続いています。


これまでも何回か紹介させて頂きましたが、被害者である従兄の無念な死


を忘れないため書かせて頂きました。



まずは公訴時効の説明からです。 


 【公訴時効】  犯罪行為が終わってから一定期間が経過すると公訴

 を認めない制度です。時間の経過で証拠が散逸して、公正な裁判が困難

 になることなどが根拠とされます。2005年1月施行の改正刑事訴訟法で

 殺人などが15年から25年に延長。10年4月の改正では人を死なせた

 罪で最高刑が死刑に当たる強盗殺人や殺人の時効が廃止されました。



「自分が担当しているうちに、解決に導きたい」。夫婦殺人放火事件の捜査


本部が置かれている児島警察署に、今春着任した山室浩之刑事官が力を


込めます。


この事件に携わるのは初めてですが、遺族を訪ねてあいさつした際、「どう


かよろしくお願いします」と声を掛けられ、気持ちが高ぶったと話します。「遺


族の思いは25年前と何も変わっていません。何としても無念を晴らしたい」と


実感しました。



事件は1995年4月28日に発生しました。倉敷市児島上の町の農業角南春


彦さん(70)方が全焼し、焼け跡から角南さんと妻翠さん(66)の遺体が見つ


かりました。2人の体は包丁や登山用のピッケルが刺さった状態で、ともに首


が切断され、頭部は持ち去られていました。


捜査本部は、残忍な手口から犯人が強い恨みを募らせていたとみて交友関係


を中心に調べ、角南さんが所有する土地や金銭を巡り数十件のトラブルを抱え


ていたとの情報を入手しました。だが、犯人に迫る有力な手掛かりは得られま


せんでした。



2010年4月27日、時効(15年)が数時間後に迫る中、時効廃止を柱とする改


正法が成立し、異例の即日施行で捜査の継続が決まりました。岡山県警は捜査


本部(16人)の人員を見直し、専従8人を含む19人に拡充しました。現在もこの


態勢を維持し過去に浮上した不審者や他事件との関連の洗い直しを重点に捜査


しています。


これまで捜査本部に寄せられた情報は262件。03年以降は1桁台で推移し、20


年はわずか2件にとどまりますた。このため発生25年に合わせ、情報提供を呼び


掛けるちらしを10年ぶりに刷新しました。捜査幹部は「少しでも多くの目に留まり、


新たな情報につながれば」と願っています。



凶悪犯の逃げ得を許さない―。時効の廃止は、殺人事件の遺族の声や世論が追


い風となって実現しました。ただ、警察庁によるともとの時効を過ぎて容疑者が摘


発された事件は、三重県で1997年にホテル従業員が刺された強盗殺人事件や、


99年に4福岡県で男性が川に突き落とされて水死した事件などわずかだといい


ます。



岡山県内でも夫婦殺人放火事件のほか、時効廃止後も未解決のままになってい


る事件が岡山市中区高島の市営住宅での殺人放火事件、倉敷市広江の民家で


起きた強盗致死事件など計4件ありますが、いずれも捜査に進展は見られません。

公訴時効に詳しい岡山大法学部の原田和往教授は「改正法の趣旨は時効成立


後に犯人が判明した際、立件できない事態を回避するためで、未解決は仕方が


ない面もあります」と解説します。


事件捜査は歳月の経過とともに、証拠が散逸し、関係者の記憶も薄れることなど


から困難さが増すとされます。改正法施工の翌年、警察庁も各都道府県警に対し、


「発生30年を過ぎ新たな情報が得られる見込みがない場合は捜査の終結を検


討する」との通達を出しています。原田教授は「現実的に解決が難しい事件はあ


るし、その一方で未解決という現実に納得できない遺族もいます。これにどう折り


合いを付けるか。今後、捜査当局は難しい判断を迫られることになります」と指摘


しました。