私はロシアや旧ソ連邦のポップスをそう知っているわけではありませんが、1956年にマルク・ビェルネスによって歌われ、ソ連邦崩壊後のロシアで今なお歌い続けられている「人生よ、君を愛す(Я люблю тебя, жизнь*)」という歌謡曲があります。
年老いた自分が、今を見つめ、これまで歩んできた道を振り返り、「いろいろあったけど、でも人生を愛してる」というような歌詞で、日本の歌謡曲で言えば、加藤登紀子-なかにし礼-石原裕次郎というトリオで世に出た「わが人生に悔いなし」に歌詞の内容は似ていてます。
【*жизнь(ジズン):英語のlifeとほぼ同義で、生活、生命などと訳されることが多いのですが、歌詞全体の流れから、ここでは人生としました。生活そのものをも含みますが。】
人生よ、君を愛す~Я люблю тебя, жизнь
その曲の出だし部分(♪ Я люблю тебя, жизнь )をインターバルシグナルに使っている放送局がありました。旧ソ連邦の首都モスクワから発せられる「平和と進歩」放送( Радиостанция Мир и Прогресс,Radio Station Peace and Progress )です。
"平和"の切手
この局が設立されたのは1964年のことで、英語、フランス語等で放送されていました。英語では「Voice of Soviet Public Opinion」と言っていましたが、その論調はモスクワ放送のものとほとんど変わらず、ソ連邦政府の情宣放送そのものでした。
当時はソ中両国が激しく対立していて、放送内容は反資本主義であるとともに反中国でもあり、中国の文化大革命を批判的に捉えた論調が各所で伝えられました。
英語放送のログ(中国の文化革命に対する批判的解説もありました。)
英語放送は良好に入感したのですが、それよりもフランス語放送が強力(SINPO-54444)でした。また、恐らくはモスクワ放送の送信機を使っていたのだろうとも記していますし、実際そうだったようです。
フランス語放送のログ
この局に受信報告や手紙を送ると、返信の郵便物には必ず記念切手が貼られていました。
ヴェトナム民主共和国建国30周年記念切手の貼られたロゴ入り封筒
受信報告に対しては受信証が送られてきました。私が聴いていた時代は下の2種類がありました。色が違うだけでなく、文字の書体が一部異なっています。
受信証(べリカード,QSLカード)
何となく、「アメリカの声(Voice of America)の受信証と似た雰囲気だなぁ。」と思ったものです。
受信証と一緒に局の案内も入っていました。英、仏、西、独語で書かれています。
放送局のインフォメーション
スケジュール表を見ると、アジア向けには英語、フランス語、中文(北京語、広東語、上海語)で放送されていたようです。
プログラムスケジュール
他局同様、毎年、年末には季節の挨拶状が届きました。
放送の中味とは裏腹に明るい感じです。
季節のあいさつ
返信には毎回絵葉書が同封されていました。
「平和と進歩」放送から送られた絵葉書の一部
決して面白い放送でも楽しい放送でもなかったのですが、東側からの情報源として私はかなりよく聴きました。受信報告はそう頻繁には送りませんでしたが。
この放送が今どうなっているのかわかりませんが、恐らく、その役割は終えていて、単独の放送局としては存在していないのではないでしょうか。
これまでのBCL史はこちらをご覧ください。
地域別インデックスもありますのでご利用ください。
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