ニコンのガチャガチャ1 | カメラの自由研究

カメラの自由研究

東ドイツ製カメラの備忘録の予定でしたが、所有するカメラの個人的意見の方が多くなりました。

1 はじめに

 「ニコンのガチャガチャ」という言葉は良く聞きましたが、私はリアルタイムで体験していないので少し調べてみました。

 ニコンの古いレンズには絞り環にツメ(巷では「カニ爪」と呼ばれたりしています。以下、「カニ爪」で統一します。)が付いているので、カニ爪を使う機種は全てガチャガチャが必要なのかと思っていましたが、そうではないようです。なかなか奥が深いです。

 ガチャガチャの詳細は以下に記載しますが、ガチャガチャをする機構は、フラッグシップのF、F2のフォトミック系とニコマート系とに、大きく二つに分かれます。そのため、ここではその二つの比較の視点も入れて見てみます。



2 歴史1・ガチャガチャ前夜

 フォトミック系はTNまで、ニコマートはFTがガチャガチャの前の世代に当たります。これらも自動絞りのレンズで開放測光をするので、ボディー側にレンズの絞り開放F値を「伝達」する必要があります。これらはどうやって「伝達」していたかというと手動です。

具体的には、開放F値をISO感度に合わせる事で調整します。手動で合わせるという意味では今のデジカメで非CPUレンズを使うの時と同じですね。


 フォトミックTファインダー付のFとニコマートFTでガチャガチャの動作をしてみました。カニ爪が露出計連動レバーに噛み合いますが、開放F値はボディー側に伝達されません。


 下段の画像の下段が開放F値とISO感度を合わせるダイヤルです。




3 ガチャガチャ


⑴ 目的

 ガチャガチャの目的は、ボディー側にレンズの絞り開放F値を「伝達」するためのものです。

 なぜ、「伝達」が必要かというと、レンズが自動絞り(通常、絞り羽は全開になっていて、撮影の瞬間だけ設定した絞り値まで絞り羽が閉まる機構)なので、開放測光の場合、受光素子には開放の光が当たっている事になります。しかし、同じ光が当たっていても、レンズによって開放F値が異なるので、その分補正する必要があります。そのために「伝達」が必要となります。


⑵ 機構

 説明書によると、ガチャガチャ動作で次の作業を行なっています。

ガチャ1=爪と連動ピンの連結

ガチャ2=開放F 値の設定


⑶  ガチャガチャが必要な機種


イ フォトミック系

(イ) ニコンF

 ニコンFのフォトミックファインダーでガチャガチャが必要なのは1968(昭和43)年9月に発売されたFTNだけです。

(ロ) ニコンF2

 F2用のフォトミックファインダーでガチャガチャが必要なのは次の三種類です。

フォトミック 1971(昭和46)年9月発売

フォトミックS 1973(昭和48)年3月発売

フォトミックSB 1976(昭和51)年10月発売


ロ ニコマート系

 ニコマート系でガチャガチャが必要な機種は次のとおりです。

FTN 1967(昭和42)年10月発売

FT2 1975(昭和50)年3月発売

EL 1972(昭和47)年12月発売

ELW 1976(昭和51)年2月発売


ハ ガチャガチャ年表

 ガチャガチャが必要な機種を発売順に並べてみました。次のとおり1967(昭和42)年に初めて発売され、1977(昭和52)年のAi化まで約10年間販売されました。

1967(昭和42)年10月 ニコマートFTN 

1968(昭和43)年9月 FフォトミックFTN 

1971(昭和46)年9月 F2フォトミック

1972(昭和47)年12月 ニコマートEL 

1973(昭和48)年3月 F2フォトミックS

1975(昭和50)年3月 ニコマートFT2 

1976(昭和51)年2月 ニコマートELW 

1976(昭和51)年10月 F2フォトミックSB 


⑷ ガチャガチャの比較

 フォトミック系とニコマート系では、やっている事は同じなのですが機構が結構異なります。

 なお、レンズ装着時、ニコマート系は絞り環をF5.6にする必要がありますが、フォトミック系はその必要はありません。フォトミック系の実機を操作したところ、レンズのF値が5.6以上の場合はレンズ装着時の回転でガチャ1の作業を兼ねるのでガチャ2だけすればよく、F5.6未満の場合はガチャ1の動作も必要でした。

 では、フォトミック系とニコマート系を見てみます。画像は、左側はニコンFにフォトミックFTNファインダーを装着した状態、右側はニコマートFTNです。


 次は、本題のガチャガチャです。

 上段の画像は、レンズをボディー側の指標に合わせて差し込んだ状態です。

 中段の画像は、レンズを回して固定して絞り環を目一杯向かって左側に回転させた状態。上の⑵でいう「ガチャ1」をした状態です。

 下段の画像は、中段の画像の状態の後に絞り環を目一杯向かって右側に回転させた状態。上の⑵でいう「ガチャ2」をした状態です。


 左側のフォトミックFTNファインダーは、「Nikon」の刻印の下にある「開放Fナンバー目盛」が、上段は最小数値を指していますが、中段ではガチャ1をしたので露出計連動レバーがカニ爪と噛み合ってその時のF値(この時はF5.6)を指しています。そして、下段ではガチャ2をしたので「開放Fナンバー目盛」がこのレンズの解放F値であるF2を指して、無事伝達終了となっています。


 対して、右側のニコマートFTNは「開放Fナンバー目盛」がマウント側面にあるので正面からでは違いがわかりません。しかし、中段のガチャ1をするとカチッと噛み合った機械的振動がするので体感的によくわかります。そのため、上の画像と同じタイミングですが、右側のニコマートFTNだけは「開放Fナンバー目盛」があるマウント側面を写したものを見てみます。


 目盛の幅が細いのでわかりづらいですが、下段の画像だけ拡大するとこのようにこのレンズの解放F値であるF2を指して、無事伝達終了となっています。




「ニコンのガチャガチャ2」に続きます。