視床の構造と働き | 神経内科専門医の日々のつぶやき

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今日は視床の構造と働きについてです。

視床は脳の構造の一つで、複数の核が集まり、様々な働きの経路の中継地点となっています。

ここが障害されることで、いろんな症状が出現します。


花視床の構造と働き花


視床は体性感覚、視覚、聴覚の中継核、歯状核から運動野へ投射する経路の中継核、淡蒼球から前運動野、運動野に投射する経路の中継核として働いている。





以下は視床が障害されることで認める症状です。

1.感覚障害
後腹外側核(四肢)、後腹内側核(顔面)の障害で対側の表在感覚、深部感覚低下を生じる。
しびれ感を伴うこともある感覚低下、しびれ感の分布が口唇周囲と手先に限局して出現することがあるが(cheiro-oral syndrome)、これは後腹側核を中心とした障害が小さいか、軽度であるためと考えられる。
口唇と指先に症状が出やすいのは、これらの部位は特に感覚線維の分布が密で、視床後腹側核内において相対的に線維密度が高いためではないかと考えられている。

2.Thalamic syndrome
自発的な耐えがたいしびれ感と表在・深部感覚の低下、さらに痛覚に対しては、ある一定の閾値を超えると耐えがたい痛みを生じる症候群である。
非定型例では、耐えがたいしびれ感のみの場合もある。やはり後腹外側核の障害で、視床の血管障害のあと一定期間をおいて出現することが多い。
頭頂葉を含む広範な梗塞により視床が皮質から求心路遮断を受けた場合にもみられることがある。

3.半盲
外側膝状体の障害で、対側の同名半盲をきたす。
聴覚伝導路の中継核は内側膝状体であるが、聴覚伝導路は両側を上行するので難聴はきたさない。

4.運動失調
歯状核視床路は主に腹外側核に入るが、この付近の障害でdecomposition、dysmetriaをきたすことがある。
後腹側核にかかると感覚低下を伴い、内包後脚にかかると不全片麻揮を伴い、感覚障害を伴ったataxic hemiparesisを呈することもある。

5.不随意運動
腹外側核、腹前方核付近の血管障害の後、一定期間をおいてジストニアを呈することがある。
血管障害後のジストニアの責任病巣は大部分被殻にあるが、まれに視床、頭頂葉などの報告がある。
また日本脳炎、血管障害などで視床が障害されて羽ばたき振戦がみられることがある。

6.構音障害
腹外側核を中心とした両側性の障害では著明な構音障害を呈することがある。
声量が小さく、抑揚の乏しい、口ごもるような独特な言語障害である。

7.意識障害
両側性に視床が広範に障害されると意識障害を呈する。また、視床は無動性無言をきたすこともある。

8.知能障害
一側に限局した障害では意識障害は起こさないが、注意力の低下がしばしばみられる。
特に劣位側視床の血管障害ではしばしば意識は清明であるにもかかわらず、周囲への関心、検者への注意力の低下がみられ、一見意識障害、あるいは認知症のように見えることがある。
視床変性症のように両側性の広範な障害が徐々に進行する場合は認知障害が出現する。

9.健忘症候群
視床の血管障害などで、まれではあるが健忘症候群を起こすことがある。
記銘力低下に加えて、逆行性健忘、失見当識などを伴う。
責任病巣は視床前核に終わる乳頭体視床路終末の両側性 (または優位側)障害が考えられている。

10.高次脳機能障害
視床枕を中心とした左側(優位側)障害で超皮質性感覚性失語に似た内言語の障害がみられることがある。
また右側のかなり大きな障害では半側身体無視、病態失認、半側空間無視を生じることがある。
このような症候を呈している患者では、視床のみならず、頭頂葉皮質を中心として血流低下がみられることがあり、それが高次脳機能障害の一因と考えられている。