『鎌倉殿の13人』~後追いコラム その159
最終回第48回『報いの時』に向けて
『鎌倉殿の13人~オープニング13の秘密~』を見逃した皆さんへ
(12月11日16:15〜16:30放送)
いよいよ最終回を残すだけ。義時(小栗旬)の最期が描かれる。NHKも様々な番組で『鎌倉殿の13人』を取り上げている。先週の日曜日、そのオープニング(タイトルバック:2分10秒)に関する番組が放送された。15分という短い番組だったが、最後の一回のオープニングを楽しんでもらうため、見逃してしまった方々にその内容をお伝えしたい。実はこのオープニングには、1年間楽しめるように、いろいろなところに隠れキャラやメッセージが忍んでいる。
ちなみに《秘密》の中には入っていないが、オープニングの最初に出てくる鎧兜は、劇中で実際に頼朝(大泉洋)が着けていたものを3Dスキャンしたものだそうだ。
《秘密1》 壇の浦のシーン。源義経(菅田将暉)の八艘跳びが描かれている。これは、すぐにわかるでしょう。
《秘密2》 隠れ動物。壇の浦のシーン。八艘跳びのシーン直後、映像が左に回り込んだその海の波間にイルカが2匹泳いでいる。これは実際に壇の浦の戦いで起きたこと。突然現れたイルカの群れを見た陰陽師安倍晴明(はるのぶ:せいめい)が、平家の敗北を予言したと言う逸話を取り入れたもの。
(『平家物語絵巻』イルカの群れが、赤旗を掲げる平家軍に向かって泳いでいる)
《秘密3》 隠れ動物。白い犬。一人の武士が鶴岡八幡宮の鳥居に向かっている場面。左に白い犬が一匹描かれている。夢で見た白い犬を不吉に感じた義時は、気分が悪くなり、実朝(柿澤勇人)の右大臣拝賀の儀式から退いて、公暁(寛一郎)に殺されずに済んだという逸話を描く。
(左の板塀沿いに白い犬が・・・)
(劇中での一場面)
《秘密4》 涙を流す女性と顔がひび割れた男性の像。これは特定の男女を表しているのもではない。しかし、劇中で描かれた様々な男女が意識されている。義経と静(石橋静河)、義仲(青木崇高)と巴(秋元才加)、全成(新納慎也)と実衣(宮澤エマ)など、その別れの悲哀をシンボリックに描いている。オープニングでこうした石像が出てくる理由を3D制作担当の高野善政氏は、「石像は歴史を表し、石がぶつかったり崩れることで、研磨され、尖ったり丸くなっていく。そうした変化が石にはあるので、石像にすることで鎌倉時代に生きた武士達の無骨感、心情の変化を表現出来るのではないかと思った」と語っている。
《秘密5》 頼朝と馬。アップで出てくる馬に乗った頼朝。カメラが引くとその足元から崩れていく。これは頼朝が落馬した後に没したという『吾妻鏡』の記述を表している。崩れる馬の足が、頼朝の儚い最期や源氏の衰退を暗示している。
《秘密6》 散りゆく桜。桜が舞う中にいる親子。子供の誕生を祝福しているのだが、一方で桜が散っていて、切なさとか寂しさを表現している。祝福と儚さ、これは鎌倉時代を生きた親子の宿命とも言える。義時と八重(新垣結衣)と金剛(坂口健太郎)、頼朝と政子(小池栄子)と頼家(金子大地)と実朝、それぞれの人生を暗示したシーンと言える。
《秘密7》 蹴鞠のシーン。4人が蹴鞠をし、鞠が宙に舞っている。鞠自体が権力の象徴で次は誰に渡るのかを4人が注視している。
《秘密8》 黒から白へ。オープニングの最後は、長澤まさみのナレーションで終わる。その時、メラメラと燃えるように画面が変わり『鎌倉殿の13人』が映し出される。背景が黒から白へと変わってオープニングが終わる。これは時代が劇的に塗り変わっていることを象徴している。
映像に関しては、まだまだ製作者が込めた《秘密》があるらしい。あと一回だが、オープニングに集中して、製作者の『思い』を解き明かしてみたらどうだろうか。
《秘密9》 タイトルのロゴに秘められた思い。歴代の大河ドラマのタイトルは、筆文字、それも武田双雲風のものが圧倒的に多いが、今回は明朝の書体。デザインしたのはブックデザイナー佐藤亜沙美氏。今回の大河ドラマは、小栗旬のしなやかな体の動き、権力闘争の話と同時に転換点に立ち会った女性の物語でもあると思って、そんな今回の大河ドラマの奥行き、人間同士の複雑さを捉えるために明朝体にしたという。
(タイトルロゴを考案した佐藤亜沙美氏)
《秘密10》タイトルの英文の書体。これも上下に動きが出るように工夫し、13人の御家人が権力や心の動きの中で複雑に動いている躍動感、浮き沈みを表現しているという。
《秘密11》ハンガリーの12人。今回の大河ドラマでは、ドヴォルザーク『新世界』のアレンジしたクラシカルな曲が使われている。作曲者エバン・コールがオープニングの音楽込めたのは、男性コーラスを使い、坂東武者、武士の魂を表現し、情熱的で新しい時代を作ろうとしている武士達の姿を表現することと語っている。面白いのは、その男性コーラスはハンガリーの合唱団ということ。ガタイの良い強そうな人が多く、声の出し方(発音)が自分のイメージに合っていたそうだ。特に、いわゆる「シャウト」が坂東武者のイメージ(戦のためのシャウト:鬨の声)に繋がるのだという。
《秘密12》武士の音。武士が刀を合わせる「カンカン」という武士の音を、打楽器アンビルで表現。ちょうど、名演説をした政子の像から馬に乗った頼朝像に変わるあたりで使われている。アンビルは、レールを輪切りにしたような形をしている打楽器。
《秘密13》北条義時の音。義時のイメージは「チェロ」。確かにオープニングの最初は「チェロ」の独奏で始まる。低い音も高い音も出せる情熱的な楽器だが、義時の人生は悲劇的なもののように思えるので、叫び声のように聞こえるチェロの高い音色がその悲しい人生にマッチすると考えたという。さらに、義時の晩年をイメージした曲があるそうだ。最後まで目が離せない『鎌倉殿の13人』だ。