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根付道<Netsuke Road>

気楽にぶらぶら、根付蒐集の道を歩くブログです。

 年の瀬の冷たい空気が、吹きすさぶ風と一緒にやってきた今日この頃ですね。今年も骨董市を歩きながら、季節の移ろいとともに小さな出会いを重ねた一年でした。
 

 

 今年の骨董市で、いつものように根付を探してぶらぶら歩いていたら、ふと視界の端に引っ掛かってきた小さな猿の根付がありました。
若旦那風の店主と軽く値引き交渉をして、少しまけてもらい、連れて帰ってきた猿根付(写真)です。

 



 手に取ってまず感じたのは、顔の上手さでしょうか。
柿にかぶりつく表情がなんとも愛らしく、歯並びも良好。虫歯も欠けもなく、健康そのものです(笑)。
手には次の柿も抱えていて、食欲旺盛な様子が微笑ましい。
腕の造形も見事で、お腹側で自然に透かし彫りされており、引っ掛かりがない。この時代の根付師は、造形が自然に“根付”として機能するように工夫していて、僕が「上手いなぁ」と感心する部分です。



 背中や足に見える模様は、象牙の皮目の部分です。
ギリギリまで材料を減らさずに彫ると現れる部分で、素材を活かした証ですね。さらに、頭から芯目が猿のちんちんのギリギリに出ていて、これは象牙の先端で造られた“芯彫り根付”。
 

 

 芯彫りは、古い光春系の大振りな作品から、時代が下がった浅草系の小振りな根付にもよく見られる技法で、当時は象牙を余すことなく使うためのメジャーな手法だったのでしょう。一方で、現代根付では芯目は“傷”とみなされ、絶対に使われません。
象牙が貴重だった時代ならではの、素材と造形のせめぎ合い。
根付師達の工夫に、僕はいつも感心してしまいます。




 猿は「厄災が去る」という意味合いもあり、寺社彫刻にもよく登場します。国宝・妻沼聖天山にも、まるで根付のような猿たちがいて、見ていて楽しいものです。
この小さな猿を眺めながら、今年の厄災もそろそろっと“去って”くれることを願っています。初もうでは、妻沼聖天山に行こうかな。(笑)