二十歳になった途端、堂々と酒を飲み始めた。すぐに顔が赤くなり眠気に襲われるが、初心者だから仕方ないと思っていた。そのうち慣れるようになる…そう思いゲロゲロ吐きながらも練習のつもりで飲み続けた。
しかし、ある手術をする時に、直前の検査で看護師が「あなた、アルコールアレルギーなのね」と言われた。アルコールを付けた箇所が真っ赤になったのだ。いつまで経っても酒に慣れなかったのはこのせいだったのである。
諦めがついた。そして、これを機に酒はコップ1杯しか飲まないようにした。おかげでコンパをやる時はいつも仕切り役だ。でも、割り勘の時は皆が気を利かしてくれた。
ある時、先輩がこんなことを言ってきた。「酒が飲めないなんて不幸だなぁ。何が楽しみで生きてるんだ?」と。
はぁ~? 何言ってんの? 逆に言ってやるよ。あんたは酒しか楽しみがないのかって。その方が不幸だろってね。
酒を飲まなくても、世の中には美味しい飲み物や食べ物がある。楽しいことはいっぱいある。たいして酒が強くもないくせに、体裁だけで飲んでる奴らよりはましだと思う。
酒豪ほど「飲める男は偉く、飲めない男は情けない」なんて言う奴が未だにいる。そんな奴は真の酒飲みではないだろ。私がアルコールを受け付けない体質だと知ると「お子ちゃまですねぇ」とか、「ジュースにする?」と言ってからかってくるバカがいる。そんな時私は意地になって、堂々とミルクを注文してやる。
アルコールアレルギーで残念だったのは、“女のコを飲みに誘う”というシチュエーションを体験できなかったことかな。きっと神様が、「こいつは酒を飲んだら女にだらしなくなる」と思って試練を与えたのだろう。
[後記]
そもそも下戸って言い方が失礼だ。酒に強い奴はそんなに偉いのか? 飲酒の強弱で人を差別する奴は人間のクズだ。