居酒屋放浪記 | 労人社のブログ

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労人社だより第16026号
    吉田類の酒場放浪記あたりをきっかけに類似のTV番組がどのchに合わせてもやっている。お銚子に焼き鳥と煮込みが出され(雰囲気)があれば、そこはもうむかしながらの居酒屋で、どこの店に入ろうが同じ心持ちで落ち着いて呑むことができる。似たような番組企画が増えたのは、居酒屋に共通する変わらない「何か」に惹かれるためだ。と思う。
    学生の時に通い始めた居酒屋は親父からせがれに代替わりして、食べ物が微妙に変わってしまった。500円をポケットに焼き鳥、煮込みだけで長時間居座る我らに、(たまには刺身や鍋でも食べなよ!ちっとも儲からない)と先代がボヤいても、500円だけを持って通い詰めた。連日通わす(雰囲気)が居酒屋にはあったのだろう。何しろ、落ち着いて呑めた。
    TVディレクターが居酒屋番組を思い立ったのは、逆にこの雰囲気が居酒屋からなくなったからに違いない。思うに、居酒屋の変質はブラック経営者の渡邉美樹の和民グループが多店舗展開を開始した90年代あたりからからだ。レンジでチン、油でカラリのつまみや効率性だけの店舗設計では、となりの人の声も聴こえず騒々しく、居酒屋独特の居心地の良さは生まれない。ブラック企業の名声を基盤に学校や介護施設、さらには議席をカネで買ったミキちゃんと盃を交わしシミジミと話しをしたいとは思わない。居酒屋の心地良さはオヤジや女将との会話が隠し味になっており、寡黙な兆治が目をあげて(また、どうぞ)と言えば、明日も来るか!という気にもなる。
    じつは、昨日遅い新年会を行った。弥生3月の新年会は遅すぎる気もするが、年末年始とメンバーの時間調整がつかずこの日まで延びた。正月も松の内があるのだから、梅の内、桜の内があってもよく、居酒屋での呑み会に早い遅いはないのだ。待ち合わせの駅前が変わっている。かつての店が雑居ビルばかりになり、テナントもブラック渡邉系が多い。居酒屋の変質については十分承知していたが、懐かしいの焼き鳥屋を見つけ飛び込んだが、これまた驚いた。人件費節約のために酒の注文がセルフサービスとなっている。ビール、日本酒、焼酎、ワイン、洋酒が30分ごとの飲み放題なのだが、飲み干せば自分でジョッキ片手に注ぎに立たねばならない。これは、これでよいシステムだが、懐かしいの居酒屋兆治を思い描いては落差に「あれっー」とならざるをえない。
   客層は年のいったおっさんなどいず、ほとんどが若者たち。彼らにはその場の違和感などいささかもなく、平成の居酒屋の雰囲気とはこの店のようなものかもしれない。むかし町の酒屋の傍らにテーブルひとつの立飲みがたくさんあったが、今回の焼き鳥屋などその現代版といってよい。酒を呑む最低限の施設があり、落ち着いた雰囲気など関係ない。ブラック渡邉も多店舗化を検討していたりして、、 
    さて、吉田類の酒場放浪記は最近、ドサ廻りが増えていないか?良さそうな店を紹介されても地方までは足を伸ばせない。どうも、都心には雰囲気のある居酒屋が儲からないが故に減っているようだ。ブラック渡邉系の居酒屋では落ち着いて酒を楽しめない。金儲けばかりうまく、器用な経営者が増えているのだろう。しかし、ぼくたちや吉田類が通い続けたくなる居酒屋の要諦は、経営者が「不器用ですから」が隠し味になる店なのだ。ほんと、そんな居酒屋が少なくなりました。(では、今夜はもう一軒どっか立ち寄って)by読み人知らず。