モーニング娘。その1はこちら
コンサルティングやマーケティングの世界で使われる「イノベータ理論」というものがある。イノベーションが普及する際の購買の動向を5つのステージに分割するというアレで、もちろん意識の高い皆さんはご存知だと思うが、念のため説明すると、イノベーションは概略次のような順でフォロワーが広がっていき、一般に膾炙していくという理屈(?)である:
コンサルティングやマーケティングの世界で使われる「イノベータ理論」というものがある。イノベーションが普及する際の購買の動向を5つのステージに分割するというアレで、もちろん意識の高い皆さんはご存知だと思うが、念のため説明すると、イノベーションは概略次のような順でフォロワーが広がっていき、一般に膾炙していくという理屈(?)である:
1.イノベータ 誰も知らない頃から注目してる人
2.アーリーアダプタ 早い段階でその流行に接する人
-------------------キャズム--------------------
3.アーリーマジョリティ 普通よりちょっとだけ敏感な人
4.レイトマジョリティ 保守的な人
5.ラガード ものすごーく保守的な人
少しだけ補足すると、2.のアーリーアダプタと3.のアーリーマジョリティの間に「キャズム」と呼ばれる一種の溝、壁のようなものがあって、これを超えないと爆発的な流行に至らないということだそうだ(キャズム理論)。これを俗に「キャズムを超える」というらしい。これをいったん超えてしまえば、あとは面白いように広がっていく。iPhoneやiPodなどの流行などは記憶に新しいところだ。
パッと見た感じ、このフレームはモーニング娘。の栄枯盛衰を説明するのにとても都合がよさそうである。実際には少し違和感があるというか、これでは消費する側とされる側が正反対になっているため理論の使い方としておかしいのだが、とにかくちょっとこの「イノベータ理論」および「キャズム理論」を援用させていただきながら、モーニング娘。の歴史を簡単に振り返ってみたいと思う。なお、わたしの主たる情報源は、Wikipediaを初め、YouTubeや2ちゃんおよびそのまとめサイト、その他、タダで読めるWeb記事と10年前の記憶などであるため、そのつもりで読んでいただきたいw なお、文中敬称略とする。
1.イノベータ期
1997年、ASAYANでオーディションが行われ平家みちよが合格した。このとき、直前で不合格となった次点の5名を集めて一つの企画がなされた。言うまでもなく、この5人で全国をめぐり、手売りで5万枚のセールスを達成すれば「デビューさせる」という企画である。もちろんこの5人とは、第1期メンバである中澤裕子・石黒彩・飯田圭織・安倍なつみ・福田明日香の5名のことだ。このときはまだ、ほとんどの人が彼女たちの存在を知らなかっただろう。もちろんわたしも例外ではなく、そもそも彼女らの存在どころか、ASAYANという番組があったことすら知らない。まさに黎明期であった。
2.アーリーアダプタ期
1998年前後、早くも第2期メンバのオーディションが行われた。ここで、保田圭・矢口真里・市井紗耶香の3名が加入し、1998年頃の『サマーナイトタウン』『抱いてHOLD ON ME』『真夏の光線』など、ファンにとっては比較的なじみ深い楽曲が相次いで発表されるが、当時はまだほとんど注目されなかった(と思う)。
また、メンバの中で特に歌唱力に定評のあった、最年少メンバの福田明日香はこの時期に脱退している。彼女については、他のメンバからいじめがあったなどの噂があるが、ことの顛末についてはあまり詳しいことはよくわからない。いずれにしても、この福田の脱退と2期メンバの加入を境に、メンバが頻繁に入れ替わるという現在にもつながるモーニング娘。のスタイルが出来上がったといえる。
グループにおいてメンバが入れ替わることは音楽界においてはそれほど珍しいことではない。たとえば、英国のロックバンド「DEEP PURPLE」などはバンドのメンバが入れ替わり、脱退だけでなく再加入もあった。また、本邦においても「ラウドネス」などの例がある。とはいえ、いわゆるアイドル・グループがそのメンバを頻繁に変えるというのは例がないのではなかろうか。モーニング娘。はそもそも「アイドル」なのかどうかという議論もあろうが、少なくともわれわれのような音楽に疎い人間からすると非常に新鮮な演出に映ったことは間違いない。
この当時のモーニング娘。は「アーリーアダプタ」の典型的な例といえるだろう。先鋭的なファンの間では話題になっていながらも、その知名度は未だお茶の間にまで達してはいなかった。当時の状況からすれば、このままブレイクスルーができず、歴史の片隅に埋もれてしまった可能性も十分にあっただろう。だが、ここでまさに「キャズムを超える」出来事が起きた。
(気が向けば、つづく)