やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する! | One of 泡沫書評ブログ

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やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する!/渡邉正裕

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先日エントリに挙げた『35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書』が非常に興味深かったので、すぐに書店に出向き著者の本を2冊ほど手に入れた。本書はそのうちの一冊である(なぜか「退職」のコーナに陳列されていたw)。初出2008年10月なので、『35歳~』よりも前に書いた作品になるようだ。前著(時系列でいえば「次」だが)と同様、著者のポジションは明快であり、複線型のキャリア、すなわち「できること」と「やりたいこと」の中間で、カネを稼ぎつつやりたいことをやろう、というもので、そのための実例を示すというのが本書の骨子だ。著者自身の体験をベースに書かれており、新卒で入った記者時代から、転職を経てMyNewsJapanの立ち上げ~軌道に乗せるまでの具体的な経緯が記されている。著者の経歴については『35歳~』でも少し触れられているので、重複している部分もあるのだが、実体験がより具体的に描かれているところが前著と異なる。

ただ内容は非常に参考になる一方で、おそらく多くの人にとってはかなりハードルが高いロールモデルになるだろう。渡邊氏のキャリアは慶応SFC→日本経済新聞の記者→プライスウォーターハウス(後のIBMビジネスコンサルティングサービス)でコンサルタント→独立企業(MyNewsJapan)という、かなり「華々しい」経歴となっている。言及する企業名も大企業が中心で、中小企業や高卒のような立場からすると「俺たちはスタートラインにすら立ててないんじゃないか?」という感想(というより反感か?)を抱かせることになるのではないか。もしかしたら、渡邊氏の戦略としてはそういう層をマーケティングの対象外としているのかもしれないが、むしろそういう層の人ほど、日本経済の衰退による影響からは逃れられない。自らの出自やこれまでの経歴を嘆く必要があるなら、やれることをやるべきだ、という意味なのかもしれないが、このへんの考え方については著者に聞いてみたいところだ。

とはいえ、まだ2冊しか拝読していないが、著者の裏表のない実直なスタイルが垣間見えて非常に好感が持てる。想像するに、渡邉氏はおそらくあまり社交的でなく、初見ではものすごく対応が面倒な方(失礼!)ではないかと推測するのだが、ご自身の立場が明確であり、実務をおろそかにしていないところがとても好ましく思える。わたしの感覚では「プロフェッショナルに徹している」という感じか。(勝手な人物評で申し訳ないが…) 個人的には、耳に痛いことをずけずけという人を評価しがちなので、的外れだったらすみません。

本業のジャーナリストとしての仕事の内容については判断できないので、興味のある方は是非「MyNewsJapan」で確認してみてはいかがだろうか。わたしは故あってまだ会員登録していないが、本当の意味での「タブーなき」ジャーナリズムを実現している稀有なサイトではある。一見の価値ありであろう。