君の会社は五年後あるか? | One of 泡沫書評ブログ

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君の会社は五年後あるか? 最も優秀な人材が興奮する組織とは (角川oneテーマ21)/牧野 正幸

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「働きがいのある会社」ランキングというのがある。Great Place to Work Institute Japanという組織が毎年独自にサーベイしているもので、5つの軸で企業を評価し評点をつけるというものだそうだ。名付けてGPTWモデルというらしいが、この5つの軸とは、サイトによれば以下の評価軸のことを指す:

Credibility(信用)
Respect(尊敬)
Fairness(公正)
Pride(誇り)
Camaraderie(連帯感)

端的にいえば「従業員が会社や経営者・管理者を信頼し、自分の行っている仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感が持てる場所」ということで、ここでランクされるということは、相当すばらしい企業体だということである。2010年のランキングでは、モルガンスタンレーやマイクロソフトなどの「常連」を抑え、見事トップを獲ったのが、WORKS APPLICATIONというERPパッケージを製造・販売する純国産IT企業だ。本書は、この会社をゼロから創り上げたという創業者であり、CEOでもある牧野氏の書いた組織論である。

わたしが初めて牧野氏のことを知ったのは日経ビジネスのこちらの記事。そのときはもちろんWORKS APPLICATIONなどというERPパッケージの会社は知らなかったし、牧野氏のことも「なんか渋い経営者だな」くらいにしか思っていなかった。だがそれでもすばらしい会社であることはわかる。というのも、ERPという非常に難しい領域、しかも日本企業の多くは「既存業務をパッケージに合わせる」ではなく、「パッケージを現行業務にカスタマイズする」という方針が根強い。要するにオーダーメイドで、非常に細かいところまでビジネスプロセスをギチギチに詰めないと納得しない会社が多いため、こうした基幹業務システムにおいて国産パッケージのシェアを伸ばすというのは並大抵の難しさではないからだ。

わたしは会社を経営したことがないので、ただの感想でしかないが、こうした国内の商習慣を踏まえたうえで、成功している例はなかなか少ないのではないだろうか。よくある米国追従型とは少し違う、あくまでの日本のベンチャーとして、日本人の創った日本企業としてのハイパフォーマンス企業の一例として特筆大書されるべきかもしれない。活字だけ追うと、やや宗教じみているという気がしないでもないが、そこで働く人たちが高い評価をしており、かつ成長を続けているというのは企業として素晴らしいことだ。これも、経営者である牧野氏のブレない企業理念と、継続する情熱のなせるわざだろう。

傍観者として無責任なことを言わせてもらえば、WORKS APPLICATIONの今後の課題は「後継者」をどう育てていくか、だと思う。「創業から守勢へ(C)貞観政要」は永遠のテーマだろう。といっても牧野氏はまだ40代。まだまだその悩みを抱えるのは当分先のことだろうが・・・。

ちなみに本書のエッセンスは前述の日経ビジネスの記事で読める。「時間対効果(C)ホリエモン」を優先する人は本書を読まずに日経ビジネスの記事で済ませてもよいかもしれないw