残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 | One of 泡沫書評ブログ

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残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法/橘玲

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はい、もちろんあの藤沢Kazuさんが紹介していたからですw

中身の確認もせず指名買いし、速攻で読み切ってしまった。

本書はいわゆる「幸福論」の一種なのだが、もちろん橘玲さんが描くのだから、読む人によっては「身も蓋もない」ことがずけずけと書いてあるトンデモナイ本だ。しかし、だからこそ、藤沢Kazuさんのような皮肉屋にはたまらないのだろう。本書のエッセンスについてはKazuさんのエントリがじつにうまくまとまっている。というかKazuさんのダイジェストを読めば本書を買う必要すらないかもしれない。普段から「金融日記」を愛読しているような人は、読んでもあまり新鮮味がないかもしれない。


なので、ここでは本書を読んでわたしが思ったことを少し書いてみたい。書評というより読書感想文である。(いつも読書感想文だろ!という突っ込みはおいておいて)


幸福というのは捉え難い概念で、本書でも専門家の研究結果が色々と引用されているが、門外漢にとって、アカデミックに「幸福を定量的に計測する」というのは、たとえ話でも理解しにくいものだ。結局、直感的にわかることとして、幸福というのは主観的かつ相対的なものだということだろう。ビル・ゲイツには嫉妬しないが、同期が先に昇進するのには納得がいかないというようなやつである。友達が結婚すると嫉妬するが、海の向こうのセレブリティが幸福な家庭を築いていても何とも思わないだろう。

というわけで、われわれのような小市民が、そのミクロな人生を取り上げてみれば、こうした中で相対的にマシな状況を維持するには、このまま今いる会社にしがみつく方が明らかに経済合理的であることは自明だ。しかし、残念ながらその生き方はどう考えてもそれは自らの本質的な幸せに結びついていないことが多い。かといって、その楔から放たれて(たとえば独立・起業するとか、フリーランスとなる等)経済的に成功する自信もあてもない。しかもほとんど失敗することが目に見えているうえ、失敗したときにどうやってアイデンティティを保てばいいのかもわからない。コミュニティから離脱した「裏切り者」のそしりを受けつつ、経済的な困窮を受け入れるなんて「凡人」や「一般大衆」にできるわけがない。

結局、こうしたことが積み重なっていくと、「今のそこそこ良い暮らしを手放したくないが、これは決して幸福なんかじゃない。かといって、完全な不幸でもない」という後ろ向きな状況をつくりだしていく。どっちつかずの無為な人生が、これからも永遠に続いて行くだけであろう。そういう人はおそらく大量に居るだろう。

では、たとえばホリエモンやひろゆき、そこまでいかなくとも、一般に成功者と言われる人たちと、われわれのような「現代の囚人」との違いは何なのだろうか?

そもそもホリエモンやひろゆきなどのような層、もちろん藤沢さんもその中に含まれるだろうが、自分の中にぶれることのない強烈な人格が確立されている人は、結局どういう状況にあってもそれなりに自分で納得し、周囲から見てもうらやまれるような人生を送るのだろうと思う。こうした本でいちいち説明するまでもなく、人生に対する哲学がおおむね確立されていて、こういう本を読んでも読まなくても結局幸せな人生を送るわけだ。

もう少し判りやすい言葉で言いかえてみよう。たとえばホリエモン。かれなど、一連のライブドア事件で天国と地獄を見てきたわけだが、200億以上の資産を手放した今でも、結局一般人が想像するには少々難しい額の収入を得ており、毎日自分のペースで面白おかしく、やりたいように生きている。それなのに多くのファンを獲得し、かれの周りには良い評判が溢れているだろう。(同じくらい悪評もあるだろうが)

藤沢さんなどもそうだろうが、こういう人は結局どういう状況になっても自分の生き方がぶれず、マイペースで色々やっている間にまたぞろ復活してくるというような気がする。たとえば、藤沢さんが今の外資系投資銀行を首になったとして、困窮して今の市場経済をにおける格差を嘆くだろうか? おそらく、一度文無しになったらなったで、落胆するだろうが、まあそれはそれとして納得し、そこからまたやりたいように何かを始め、いつの間にか評判を獲得し、なんだかんだ幸せになっているに違いない。(もちろん金も手にしているだろう)

…と、いうようなことを考えながら、本書を閉じた。



随分と面倒くさい自分語りになってしまった。まあ、わたしの場合は、それほど不満も感じていないが、それほど今の状況に満足しているわけでもない、典型的な「一般大衆」ですw


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