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すでに著者のブログをはじめ、池田先生にマインドコントロールを解除された身としては、本書に書いてあるようなことはすべて既知の問題と解決策であり、今更取り立てて目を引くようなトピックはない。真新しい点と言えば「世代間公平委員会」の提言や、若者が構造的に政治参加できるような具体的な仕掛けを提言したりという点だが、これらもすでに詳細はともかく、大きな方向性としてはどこかで読んだり聞いたりしたことばかりだ。
ではなぜこの本をいまさら読む必要があるのか? 本書の意義は、冒頭に城さんが書いている通り
「―――上の世代に対して若者から抗議の声が上がらないのは、そもそも自分たちが不利な社会システムを押しつけられていることに、彼ら自身が気づいていないからではないだろうか(本書18ページ)」
ここにすべてが集約されているような気がする。以前、城さんの本「7割は課長にすらなれません」を読んだときも同じことを感じていたのだが、わたしも、今の若い世代というのは、構造的に世の中がどういう仕組みで動いているのかいまいち判っていないのではないかと思っている。要するに本書は、こうした若い世代に向けて書いた「パンフレット」である。
実際わたし自身、数年前までは年金の仕組みもわからず、社会保障費の仕組みもわからず、雇用の仕組みもわかっていなかった。したがって当然選挙にも行ったり行かなかったりで、政策もよくわかっておらず、そのくせ「どうせどこに投票したって一緒だよ。棄権するのも俺の自由だ」などと言って投票日に一日ネットばかりやっていた。バカ丸出しである。
本書はこういう過去のわたしのような愛すべき(笑)若者にこそ向けられた本だろう。内容はコンパクトながら論点がよくまとまっており、普段から本を読まない人にもお勧めできる内容だと思う。おそらく参院選の前に合わせて来た、というのもあるだろうから、そういう意味でもお勧めである。これを読んで選挙に行こう。
ちなみにPHPでは本書の発売記念に城さんの講演をやるらしいです。\3,000。どうしようかな。。。
著者たちの提言に一つ付け加えるならば、わたし自身の経験から、「テレビを一切見ないようにする」こともお勧めしたい。2ちゃんねるなども似たようなものだが、こうした一方通行のメディアは、よほどリテラシが高い人間なら情報源の一つとして活用できるが、普通の人は往々にして印象操作されてしまうからだ。とくにテレビは、我々が想像が及ばないような巧妙さで印象操作してくる。ほとんど洗脳といっていいレベルだ。
わたし自身、かつて「小泉内閣は格差を広げた悪だった」とか、「大企業は内部留保を貯め込んで労働者から搾取している」とか、「後期高齢者なんていう差別的な呼び方で老人を切り捨てるなんてひどい制度だ」とかバカなことを声高に主張していた。冷静に過去を振り返ると、これらはすべてテレビをなんとなく見ていたことで印象操作されてしまっていたのだと思う。ということで、多くの人にとって、テレビは見ないに越したことはない。これはテレビが偏向しているからとか、製作される番組がつまらなくなったから、ネットの台頭でテレビの価値が下がってきたから、とかいうような「大きな話」ではなく、もっと個人的で瑣末な問題だ。賢い人ならともかく、テレビを見てるとバカがスーパーバカになるだけだから、単なるバカにとどまるためにテレビを見ない努力をしたほうがいいというだけの話だ。
だまされないための年金・医療・介護入門―社会保障改革の正しい見方・考え方/鈴木 亘

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7割は課長にさえなれません (PHP新書)/城 繁幸

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