百器徒然袋 風 | One of 泡沫書評ブログ

One of 泡沫書評ブログ

世の中にいったいいくつの書評ブログがあるのでしょうか。
すでに多くの方が書いているにもかかわらず、なぜ書評を続けるのか。
それは、クダラナイ内容でも、自分の言葉で書くことに意味があると思うからです。

百器徒然袋-風 (講談社文庫 (き39-12))/京極 夏彦
¥1,140
Amazon.co.jp

思わず読み返してしまった。


京極夏彦。

京極堂外伝シリーズとでもいうのだろうか?サイドストーリィ第二段である。オムニバス形式の中編3つで1140円。安い。


主人公は帯に書いてある「榎木津礼二郎」・・・ではなく、「僕」である。

本作は、終始「僕」の一人称で語られる。「僕」が何者なのかは、ある意味では壮大なネタばれなので、ぜひ原書をお読みいただきたい。ただし本作は「サイドストーリィ」である。オタク風にいえば「外伝」である。つまり、これを楽しむためにはあの分厚い本編シリーズをきちんと読破しなければならないわけだ。もちろん外伝第一弾である「百器徒然袋 雨」も読まなければならない。


もしかしたら、京極夏彦をまだ知らない人、敬遠している人の中には、たんに活字が苦手だとか、あの分厚さに圧倒されて読む気を失っているとかのつまらない理由ではないか。また一方で、私のように京極夏彦に嫉妬して読まなかったような唐変木もいるかもしれない。いずれの理由だとしても、かれの作品を読まないのはじつにもったいないことである。私も、もっと早くに読んでいればよかったと今では後悔している。まあそういうわけなので、ペダントリィが好きな人、Wikipedia厨、暇を持て余しているひと、こういう方々はぜひ絶賛刊行中の京極堂シリーズを読むべきです。念のためリンクを貼っておこう。

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)/京極 夏彦

魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫)/京極 夏彦
文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)/京極 夏彦
文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)/京極 夏彦
文庫版 塗仏の宴―宴の支度 (講談社文庫)/京極 夏彦
文庫版 塗仏の宴―宴の始末 (講談社文庫)/京極 夏彦
文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)/京極 夏彦
邪魅の雫 (講談社ノベルス)/京極 夏彦

(なぜ最後のだけノベルスなのかというと、私が購入した時にはまだ文庫版が出ていなかったからである)

前にも書いたが、基本的には京極夏彦は「キャラ萌え」の文法で読める作家である。じつにオタク向けの作家であるといえよう。思うに、キャラ萌えの文法というのは、こういうサイドストーリィこそ最もその良さが出るといっていいのではないだろうか。


思い入れのあるキャラクタが、本編の制約から(比較的)自由な状況で、必ずしもストーリィを追わない設定。肩の力が抜けたぬるい展開。そう、どこかで見たことはないだろうか。これは、いわゆる「パロディ」とか「オマージュ」と言われる作法である。これを製作者本人がやってくれるのだから、これが面白くないわけがない。といっても、私は必ずしも榎木津が好きなわけではないが。。。


というわけで、今日はこのへんで。