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ワルの学校、入学

 着替えを済ませ、荷物を受け取り、刑務官に”部屋”を案内される……。

 そして、部屋の中に通され、ベッドに荷物を置いた…。荷物っていっても、着替えだ。

二段ベッドが両脇にある四人一室の雑居房。 俺が入って来るなり、ベッドで寝ていた三人が起き上がり、ベッドをおり、中央の地面に腰を下ろし、俺に座るように言われた…。

 ひととおり、自己紹介された…。自己紹介といっても、何故ここにいるのか、言わば容疑を紹介する。

 詐欺師と、ヤクザと、強盗犯、そして禁止薬物所持の俺。 …といった房だ。

 次に、刑期と、裁判の日程をそれぞれ紹介する…。一番永く居るのがヤクザだった…。 でも、二週間後に裁判というのもヤクザだった…。俺は刑期も、いつ裁判があるかも分からない…。

 …すると、強盗が、「初犯でしょ?? 多分三ヶ月でシャバ出れるよ。」…と言った…。

 その日は、4人で消灯まで思い切り話し込んだ…。いい人達でよかった…。ワルい事したんだろうけど…。
 何か、学校の様な懐かしさがあった…。ここは、ワルの学校なんだ。この日は、何故かぐっすり寝れた…。

日本で勾留…。

 手錠をかけられたまま、取り調べが行われ、俺の部屋の押し入れの中の写真や、パイプ等のアイテムがパッキングされて、テーブルの上に出される。
 黙秘してもしょうがないので、包み隠さず話した…。
 刑事ドラマで見るような、荒っぽい取り調べや、カツ丼の出前を促す…といった光景はなく、淡々と質疑応答で、席を立たされ、別室へ…。
 
 そしてまた同じように質疑応答…。どうやら、今度は検察らしい…。 その時、弁護士をどうするか聞かれたが、国選でお願いした…。

 拘置所に連れて行かれた…。ここから、裁判の日まで、囚人だ…。俺は、囚人になってしまった…。

 


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走馬灯…。

 俺は…、22の時に、永年の夢であったカフェ兼雑貨屋を出す事が出来た…。地元は、九州の田舎町だが、そこそこ流行っていた…。若くして経営者になったので、地元の地方ラジオ局に取材されたり、ラジオ番組のパーソナリティを半年間持った事もあった。
 カフェのメニューも、客層は、20代が大半を占めているが、中高生から、中年層まで幅広く支持を得ていた…。
 積極的に地元のお祭りや、振興会等も参加し、いろんな協会の会員にもなり、地域に根付いた店作りをしていた…。
 ある日、客に食中毒をさせてしまい…、二ヶ月間の営業停止処分を受けた…。オープンして二年目の出来事だ…。

 その営業停止の期間中に、海外旅行をした際、知り合った日本人と遊びに行った出先で、違法な物を所持していた為、捕まった…。 
 罰金を払い、強制送還という形で帰国し、家に帰って、また捕まった…。

 私は、酒もタバコもやらない…。しかし、嗜好品の中で唯一やっていた非合法なハーブをたしなむのが好きだった…。何故好きになったのかは、19歳の時に行った旅行先・オランダでそれと出会った…。

 それは、オランダでは、嗜好品として多くの人から愛されていて、諸外国からも、それを求めてオランダに来る人がいる程である。

 日本では、御法度。…後に聞いたのだが、この一件で、地元の新聞、テレビに容疑者として報道されたらしい…。社会制裁をくらった…。

 
 

”フダ”を持って、ご来店。





…部屋に戻ってみて、絶句した…。空き巣にでも入ったかのような散らかりよう…。親に会うなら、いきなり、俺の顔を見るなり鉄拳をお見舞いしてきた…。そして、母親は泣き崩れた…。

 向こう(マレー)で勾留中に、俺の部屋、店に捜査官が五人くらいで令状を持って来たらしい。そこで、母親は、俺に連絡取ろうにも取れない。そして、家宅捜査が入った時…、押し入れから、鉢植えが6つ。蛍光灯やライト、植物用栄養剤、アルミホイルに、喫煙用パイプがゴロゴロ、そして、某雑誌。

 …取締法違反容疑。10年は食らうだろう量。…終わった…。 俺の中で、何かが音を立てて崩れ落ちるのが分かる…。
 そして、ひととおり挨拶…というか何と言うか、親兄弟に愛想尽かされ見送られた…。関空から一緒の”連れ”と一緒に…。

 車の後部座席に、連れ二人の間に乗せられた…。その車内は、中からドアは開けられない…。運転席を見ると…、何やら見た事ない装置みたいなのがいっぱいあり、まるで「あぶない刑事」の覆面パトカーそのものだった…。
 車が走り出すなり、隣に座っていた連れ…刑事が、そっと俺の両手に手錠を掛けた…。

 ずっしりと重たく…、そして無機質な物質特有のひんやりとした冷たさが…、両手から全身にまわってきた…。


俺は生きている…。だが無言の帰国…。

 やっと空港から外に出られた…。とりあえず家にはひとまず帰れるみたいだ…。 新幹線に乗って、九州まで帰る…。 私は、家に帰らなければならない。当時は、独身だったが、とりあえず親も心配しているだろうし、ロスした家賃も払わなきゃならない…。手荷物はほとんど取られたが、バリ、タイでの買い付けた荷物は送っていたため、その整理もしなくては、ならない…。

 …とりあえず、やっと家に電話する。…母親が出た…。 ……。 かなりうなだれた声だ…。とりあえず今から家に帰って来るという事だけを告げ、そそくさと電話を切った…。

 …背筋から物凄く冷たいものが通る…。やっと帰って来た母国で、この言いようがない悪寒…。これから良からぬ事が起こるであろうと容易に想像できた…。

 駅に着いた…。俺は…、帰りは一人じゃない…。保護官が二人ついている…。 

 …そして、家に着いた…。俺は、旅立つ前の自分の店(カフェ&雑貨屋)と、自分の部屋が変わり果てているのに絶句した…。 でも、それだけなら、まだ良かった……。

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願わくば、普通に帰りたかった。強制送還なんて…。

 今度は、日本人相手に取り調べだ。いや、俺が調べられるんだけど…。要するに…、俺は、海の向こうで犯罪を犯した。罰金を払って牢屋から出た。冤罪などと主張しようもんなら、今頃まだ牢屋の中だ。
 …ハメられたんだ。…そして、大事な荷物と、旅の記録の写真や、日記や、領収書とかモロモロ俺にとって凄く大事なものまでなくなった…。 

 …どうやら、裁判になるらしい。…またかよ…。もう向こうで判決あったじゃん。改めてまたしなくても…。 帰国早々ウンザリする出来事に、まだ悪夢の続きを見ているのかと、一気にストレスが溜まる…が、もう心も完全に折れきってる今の自分に、もはや怒りや憤りという感情は、失っていた…。

 しっかし向こうで判決くらってまたココで同じ事になるって、何て日本の司法制度はおかしいんだろ??…その時はそう思っていた…。しかし、そうではなかったのだ…。



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日本の空気はウマかった…。はずだった…。

 …飛行機が、無事着陸。 やっと、イイ日本臭さが懐かしく思え、心底安心したのを覚えている…。

 あっ!! そういえば俺は、関空からまた福岡に飛ばなきゃならない!! 九州に帰らないと!! …まあ、そんな事は、後でイイや。チャチャっと入国手続き済ませようっと…。

 …俺。カフェ兼雑貨屋を営む男。ちょっとした失敗で、二ヶ月間の営業停止を食らう。その期間中に、東南アジア旅行をした。二週間のはずだった。…しかし、なんやかやあって、二ヶ月もの時間を要し、帰って来た…。

 入国を済ませると…、入国管理官が、何やら誰かを呼ぶ…。 そして、大柄な男が、お待ちしておりました…、と言わんばかりに、なにやらどっか連れて行った…。

 その時一緒に乗った搭乗客は、どんどんゲートをすり抜け、出迎えの人に抱きついたり、何やら感動的な…、というかいつもの日常的な…、「お帰りなさい。」という言葉が聞こえんばかりにスルスル帰って行く…。

 俺は、何かVIPルームに連れて行かれる…。空港内を結構歩いた。だんだん人が少なくなって行くのが分かり…、通された部屋に、座るよう…うながされ…、座り、連れて来た男も対面に座り…、ここから最悪の続きが始まった……。

犯罪者の帰国…。機内。

 空港に着いた…。帰りの便は、午前中だった。
搭乗手続きを済ませる…。手続きカウンターの女が、何やら、そわそわしているように見えた…。

 やっと帰れる!! 早く飛行機に乗りたい!! ゲートは…。あっ、あっちか…。

 ゆっくりと免税店なぞでショッピングを楽しみたいが、そういう気分になれない…。とにかく疲れた…。 とりあえず、ビールを飲みたかったので、ラウンジのバーで食事とビールを頼む。


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 …しばらくして、やっとフライトの時間だ…。

 クアラルンプールから、関空まで、約4時間のフライト。こんなに母国が愛おしいとは思わなかった…。 日本を出発して、約2ヶ月。本来なら二週間で帰って来れるはずだったが…。もういい。過ぎた事だ…。楽しかったハズだったこの旅も、後半が最悪だった為、いい思い出はもうない…。

 機内に入って、自分の席を探す…。アレ…、ない!? アテンダントに聞いたら、まだまだ前方との事。 …席を見つけて驚いた…。

 うおお!!! ビジネスクラスじゃん!! シート広っ!!! リクライニング倒っ!! 超いい席だ!! 日本大使館のヤツやるな!! 

 …俺は、この約4時間…。物凄く堪能できた!! 飛行機は嫌いだが、…まあそれはエコノミーしか乗った事ないからなんだが、このフライトは生涯最高のフライトだった!! …チクショウ!!アメリカにしときゃよかったか?? …なんて思える。ビジネスクラスは最高だ!! 機内食もウマかった!!  …ファーストはもっといいんだろうな…。

 そして、無事飛行機は、日本に着いた…。

  今思えばだが…、このビジネスクラスという、粋なはからいも、これから起こる最悪な状況の前の最後の晩餐に過ぎなかったのか…。



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神のいない国から、やっと帰国…。

 当時、1リンギット=60円くらい。 15000×60=90万。 払った…。マジで払った…。納得いかないまま…。しかし…、実感など、わかない。 クレジットを三枚使ったから…。

 物凄く軽いスーツケースを持ち、もう、帰りたい…。早く日本に帰りたい…。 金もなく、帰りのチケットは、”予約”しなきゃいけない…。 俺は、その足で、日本大使館に出向いた…。

 日は、だいぶ落ちていた…。今日の朝まで牢屋にいた自分、出て来て泊まっていたホテルに行った自分。文無しになって、帰る手続きする自分。超へとへと…。 何とか間に合った…。本当は、電話でいいらしいのだが、掛け方がわからず、面倒くさそうな気配があったので、直で来た…。もう、この国にいる人間は信じられない…。

 よかった…。まだ開いていた…。パスポートは何とかある。帰れる!!

 本日中の便は無理だと…。でも、明日朝イチの便がとれた!! やった!!帰れる!! 俺は、空港までおくってもらい、空港で、一夜を過ごす事にした…。

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もはや神などありえない…。

 俺。バリ~プーケット~バンコク~クアラルンプールと旅して来た男。クアラルンプールにて、ある男に出会った。 その男と偶然にも同じゲストハウスに泊まり、その男と意気投合し、一緒に出かけて、そいつが持ってた非合法な物を、たまたま出かけた先でガサ入れにあった。そして、俺にそれを持たせ、俺がパクられた…。

 驚愕の料金明細が明らかに…、フロントの男が、おもむろに取り出した明細…。
 15000の内訳  俺の宿泊代 40×36=1440 男の宿泊代 500×27=13500 13500+1440=14940 合計14940リンギット也!!

 とりあえず、その内容…。 ありえない話だが、俺と意気投合した日本人の男がいた、そいつは流れ流れてこの地に着いたんだ。なのに、この場所に、27日間も泊まるわけがない。ましてや、こんなゲストハウスに500リンギットの部屋なんかもちろんない!!! …万が一あったとしよう!! 普通27日間、4週間近く泊まってて、支払いしないのはおかしいだろ!!!

  ……おかしいのは、俺の方だった…。

 最初から仕組まれていたのだ…。…というか、その男と、フロントは…ゲストハウス側はグルなんだ…。  
 俺は、この国では犯罪者だ…。…というか、犯罪者になった…。烙印を押された…。それは、事実なんだ…。

 これからは、俺の推測だが、{俺と会った日本人は、俺がパクられた時、フロント側と、こういう話で持ちかけたんだ。アイツは、日本の金持ちだから、絶対払ってくれる…と、…というか、利益を互いにあるように仕向けたんだ!!!! 実際、その男らしきサインを見た。kentarou eguchi …と。日付は27日前だ!!! 

 …おかしい!!! …とフロントに詰め寄る!!  …しかし証拠がない。しかも、同じ日本人となったら、文化的に、そういう事(宿泊代等立て替える)が当然だろう…という。 払わないと、警察呼ぶまで言われた…。 マジ最悪…。最低な出来事。

 …俺は、肌身離さず持っていた、パスポートと…、三枚のクレジットカードを取り出し…、クレジットカードを現金に変えて、そのゲストハウスに支払った……。

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