「これは、また……」
われのお粥を一口食べて口許に手を当てたしょうさま。
とても苦かったのだろう、きれいな眉を潜め匙が止まってしまう。
『たべなきゃだめです。『あれ』のちからでねつはさがっても、からだがなおったわけじゃないとおもいます。
ちゃんとたべてげんきなって、われにまたじをおしえてください』
口元に当てた手の甲にそう書くと、匙を取ってしょうさまの口唇に当てる。
嫌々をするように頭を振るけど、根気強く口元に当てれば、パクリと粥を食べ、
「お前には負けたよ、ちゃんと食べる。
しかし、苦いな。何が入ってるんだ?」
『くずのねと、はっかくはおだいどころからもらってきました。それと、しょうがにだいこんねきをしぼったまのがはいっています。
からだもあったまるし、じようにもいいはずです』
「くずのね?くずってあの紫色の花を咲かせる蔓草の?」
『はい』
「ああ、じゃあ本質は葛根湯か」
『かっこんとう?』
「潤、お前の部屋の本棚に大辞林があるから取っておいで。
これからはわからない言葉が出てきたらそれで調べるんだ。
あいうえお順に並んでいるし、ふりがなもふってあるからそれで調べれば大抵のものはわかるだろう」
『はい!取ってきます!』
「ん、良い子だ。
ふふ、腹がくちくなったからかな、少し眠らせて貰っても良いか?」
振り返ってしょうさまを見れば、お粥はほとんど無くなっていて頬にも赤みが走ってきている。
具合はよくなってきたかな?
『わかりました。でも、おそばにいてもいいですか?
おみずがほしいときとか、なにかしてほしいときにはこえをかけてください』
頭を下げて(しょうさまには見えないけど)、自分の部屋に戻って本を探して戻ってくれば、柔らかいお顔をしたしょうさまから静かな静かな寝息が聞こえてきた。が聞こえてきた。
うん、次に目が覚めたときにはもう大丈夫。
少しは身体にだるさが残っていてもきっと大丈夫。
嬉しくて頬が緩む。
今だけは、われがしょうさまを独り占め。
側に椅子を持っていって本のページをめくった。