ニートライター亜金の事件簿・改~第一章:千春の死02 | ニート脱出大作戦β

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~ニートから抜け出す108の方法


亜金は、自室に向かいiPhoneの電話に出る。
「もしもし詩空です」
「あ、亜金!」
「ん、千春。
 どうした?」
電話の相手は、春雨 千春。
亜金の幼馴染で亜金の弟、亜銀の婚約者。
「人妻になる前に亜金に電話してみた」
「あれ?
 籍はまだ入れてないの?」
「うん。
 明後日の結婚式が終わったら役所に行く予定なんだー
 その後に、二次会だよ」
「そっか……」
「亜金は、玉藻ちゃんとはどう?
 関係は進んでいる?」
「え?
 どうして玉藻が??」
「亜金には、玉藻ちゃんのようなしっかりした女の子の方がいいと思うんだ」
「そう?
 俺は、もっと優しい子の方がいいよ。
 シュークリームとかチョコレートとか禁止されそうだし……
 料理とか薄味だし……」
「玉藻ちゃんは、優しいよ。
 それに薄味だけど料理は上手じゃない?」
「うん。
 料理は、凄く美味しいけど……」
「それに亜金は、シュークリームとかチョコレートとか食べすぎなんだよ。
 見る度に太ってるもん」
「それは、何とも言えない……」
千春は、小さく笑う。
「やっぱ、亜金と話していると落ち着くな……」
「ん?もしかして惚れたか?」
「うんん。
 私が惚れてるのは亜銀だもん。
 お兄ちゃんには、惚れないよ」
「お兄ちゃんって言うな。
 俺と同じ歳だろう?」
亜金は、そう言って口を尖らせた。
「歳は関係ないよ。
 亜金は私のお兄ちゃんになるんだもん。
 私は亜銀の姉さん女房。
 昔は、『お姉ちゃん、お姉ちゃん』って後ろをついてきて可愛かったな」
「そっか?
 俺にしたら、なんかウザいぞ」
「あはは……
 兄弟ってそんなもんなのかな?」
「うんうん」
「私も、お姉ちゃんからしたらウザかったのかな?」
「それは、わかんない」
その時、千春の部屋のインターフォンが鳴るのが、亜金の耳に入った。
「あ、誰か来たみたい」
「そうだな。
 案外亜銀だったりしてな」
「そうかもね」
「子供は、結婚してから作るんだぞ?」
「あ、それセクハラだよ?」
千春が、笑いを込めて言葉を放った。
「まぁ、お兄ちゃんだからな。
 その辺は心配だよ」
「そっか。
 まぁ、また今度電話するね」
「ああ……」
「じゃぁね!」
「うん、またね!」
電話は、そこで切れた。
「ふぅ……
 千春も亜銀も結婚かぁー
 千春は、OLをしっかりやってるし……
 亜銀なんか、日本人なのにICPO。
 玉藻も立派にメイドの仕事をしているし……
 なんもしていないのは、俺だけか」
亜金は、ひとり呟いた。
そして、少し虚しくなった。
亜金も亜銀も同じ呪いもち。
亜金は、自分に触れるモノ全てを武器に変える力、他人の不幸を食べる力、そして幽霊を見る力を持っている。
亜銀は、ドップルゲンガーを作り自由に操る事が出来き、そして相手の魂を抜く力を持っていた。
戦争などやっている時代なら亜金の能力は、優れていたかもしれない。
だが、戦争をやっていないこの国ではあまり役には立たなかった。
この呪いを気持ち悪がられ、亜金は一部の人を除き嫌われていた。
一方、亜銀の能力は人手が足りない時にでも数を増やせれるので重宝されていた。
亜金が人間が苦手なのもこのせいかもしれない。
いつしか、詩空の亜金は、出来の悪い方。
そして、詩空の亜銀は、出来のいい方と言われるようになった。
亜金は、そのことに強い劣等感を感じていた。
亜金は、窓から空を眺める。
空は曇天。
今にも雨が降りそうだった。
その頃、千春の住むマンションである事件が起きようとしていた。