ニートライター亜金の事件簿・改~第一章:千春の死03 | ニート脱出大作戦β

ニート脱出大作戦β

~ニートから抜け出す108の方法


この電話の後、千春が失踪した。
それは、世間にとっては小さなことであり……
亜金たちには大きな事件であった。

―数日後―

――詩空家・リビング

「なぁ、亜銀。
 千春とは、まだ連絡取れないの?」
亜金は、弟である亜銀に尋ねた。
「ああ……」
亜銀は、頷くと席を立った。
「どこに行くの?」
「仕事だ……」
「こんな時に?」
亜銀はそう言う亜金を睨んだ。
「亜金、仕事ってのはそういうことなんだよ」
紅が、そう言うと亜銀が冷たく言葉を放つ。
「ふん……
 ニートは気楽でいいな」
「……はいはい。
 気楽ですよー、早く仕事に行って来い」
亜金は、ため息交じりに答えた。
「……ふん!」
亜銀は、もう一度亜金を睨むと家を出た。
「千春ちゃんが、いなくなってから機嫌が悪いわね」
霧がそう言ってため息をつく。
「そうだな……」
紅もそう言ってコーヒーを口に運ぶ。
「千春、どうしたんだろうな……
 この前の電話じゃ幸せオーラ全開だったのに……」
「何か変わった様子はなかったのかい?」
紅が、亜金の方を真面目な目で尋ねる。
「そう言えば、誰か尋ねて来たみたいだな……
 電話が切れる前にインターフォンが鳴ってたしね」
「そうか……
 それは、警察には言ったかい?」
「うん。
 でも、マンションのドアノブには千春と亜銀のモノしかなかったって聞いたけど……」
「そうか。
 それは、それで妙だな。
 ドアノブだからふたり以外の指紋が付いていてもおかしくないのだけどなー」
「ああ、それはなんか新居に引っ越す前に大掃除するって言っていたからそれで指紋がなかったのかも……」
「そうか」
紅は、少し疑問を持ちつつも鞄を持って立ち上がる。
「もう行くの?」
霧が、紅に尋ねる。
「ああ……
 今日は、会議があるんでな少し早めに出る」
「いってらっしゃい」
「ああ、行ってくるよ」
紅は、小さく笑うと家を出た。
「さぁ、亜金。
 私たちも行くぞ?」
玉藻が、亜金の方を見る。
「何処へ?」
「千春ちゃんを探すぞ」
「それは、警察の仕事でしょ?」
「警察では出来ない方法で探す」
「そんな方法あるの?」
「お前、霊が見えるのだろう?」
玉藻が、そう言うと紅が手をパンとならす。
「そっかー
 幽霊に聞けば目撃情報が見つけれるかもしれないわね」
「そう言うことです」
玉藻が頷く。
「俺は嫌だな……
 霊と話していると他の人には見えないモノと話しているわけでそれって完璧に不審者じゃん?」
亜金が、そう言うとニッコリと笑う。
「その為の私だ。
 私が傍にいれば、誰もが私と会話しているように見えるだろう?」
「それは、そうだけど……」
「亜金、ふたりでいってらっしゃいな。
 家のことは、私に任せていってらっしゃい!」
「と言うか、玉藻ってメイドなのにあんまり家のことしないよね」
亜金が、そう言うと霧が答える。
「だって、玉藻ちゃんは私の大事な娘候補だもん。
 それにこの料理だって私と一緒に作ってくれるし掃除も洗濯も一緒にしてくれるし……
 私は、幸せだよ。
 それに玉藻ちゃんは、私の家のメイドさんじゃなく亜金のメイドさんだもん。
 いつまでもふらふらしている亜金を心配してお義父さんが、数いるメイドさんの中から優秀で、なおかつ亜金の面倒を見てくれる人を選んでくれたのよ?
 感謝しないと……」
「はいはい」
亜金は、ぶっきらぼうに答えた。
「じゃ、亜金行くぞ。
 では、霧さん、後のことはお願いします」
「玉藻ちゃん」
「あ、はい。
 なんでしょう?」
「私のことは、お義母さんと呼んでもいいからね?」
「……え?」
玉藻が目を丸くさせて驚く。
「呼ばなくていいから……」
亜金は、ため息をついたあと家を出た。
玉藻もすぐに家を出た。