猫木が思い付きと勢いのみにて突っ走る、そんな「十二/国記」なパロディパラレル妄想駄文
の続きなものだといいですね~。
( ´ ▽ ` )ノ



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自分でも冷たいと感じる手を包む大きな手と尋ねるその低い声の優しい響きに、気が付けばキョーコは思わず縋るように頷いてしまっていた。



まだ生まれてから齢16年程にしかないキョーコは王が在る統治を知らない。
伝え聞くのは前王は、贅や宝を富を求め、民に重税を課し税が足りねば刑を与え、苦言を述べる臣を切り、朝廷は腐敗し軍は乱れ……やがて麒麟は病を得た。
そうなってなお王は失道に弱る麒麟を顧みることなく、蓮国は王と麒麟を失った。
王が玉座になければ天は荒れ妖魔が蔓延り国は緩やかに衰退を辿る。
王を望む声は誰しもが至る所に有り、キョーコの耳にだっていくらでも入り、キョーコ自身も居た方が良いのならばとただ漠然とだが望んではいた。
麒麟が王を見つける事を。
その麒麟の願いを、ただ恐ろしいのだと否定したも同然であるのだろうと………
落ちてくるであろう麒麟の落胆と失望の言葉を予想し、ぎゅっと強く瞼を閉じていたキョーコ………けれど



「うん、当たり前だよね。」



落とされたのは、意外にも軽ーい肯定。
ほへ?と、その言葉に釣られるように顔を上げ見上げるキョーコが見たのは、いつの間にか立ち上がっていた一見キラキラと神々しくさえ思える悪い顔を秀麗な麒麟の顔。
「私……いや、俺ね。蓬山で産まれて、貴方は国のために王を選ぶ使命を持つ麒麟だって言われてさ……ふざけんなって思ったんだよね。だって、王様を選べばその先はずっと王の下僕でさ。その王が道を間違えれば病んで……ほとんどが治ることなく狂った王の道連れで死んで、その先は使令に喰われ死体すら残らない…………」
先ほどまでの厳かな口調さえコロッと変わってぐちぐちとそう零し出した麒麟。
廟で語られる神話の聖なる生き物、そのイメージを覆す言葉の数々にキョーコはもとより取り囲むような観衆も口を挟むことも出来ないでいた。
「蓬山で待っても昇山してくるのは、家生に引かせた車にぎっちり詰め込んだ金や玉をやるから王にしろって成金か、酷いのになると縄を掛けて力尽くで跪かせようとするのとかばっかり。蓬山を出て貴方の国ですとか言われてた蓮に来てみれば、見渡す限りの荒野。それでも、なんとか宰輔として朝廷に出ても王も見つけられない出来損ないって言われて…………。いっそ、俺の次の麒麟が王を見つけられるなら……とか考えても麒麟って自分で死ぬことさえ出来なくって………」
遥か遠く遠くの絵物語の世界、そんな浮世離れた生き物だと納得出来るほどに美しく完璧に思えていた目の前の男。消えていく張り付いた笑顔、辛いのだと訴えるように寄った眉と暗く冷えてゆく翠の瞳。
いつの間にか、キョーコの指は包まれていた蓮麒の指さきをあたためるように、きゅっと握り締めていた。
「だけど、君を見つけて……麒麟なんて人なんだか獣なんだか神なんだかわかりやしない化け物だと思っていたけど俺、麒麟に生まれた来たこと感謝さえしたい。」
握り返される手の熱さ。
「恐いならずっと側にいるよ。玉座で踏ん反り返るだけの王様じゃなく、おっかなびっくり恐々にでも一緒に歩いてくれる俺の半身を探してたんだから。」
吸い込まれるような優しい翠の瞳と浮かぶ柔らかな笑顔。
「俺にはどうしても君が必要なんだよ。」
低い声がキョーコへとまっすぐに告げる言葉。
疑いなく与えられる揺るぎない自分の居場所をどこかに探すように、誰かに何かに尽くし求めて来ていたキョーコ。
その自分でさえ見ないようにしていた胸な深く救う孤独。それを、あたため包み寄り添い癒すような言葉。
「わたし……が、必要?」
ぼろりと、茫然としたキョーコの頬を伝い落ちる涙。
困ったような顔をされるからと幼馴染の尚にさえ……誰にも、見せず隠れるようにひとりで泣くようになっていたキョーコの涙。
「うん……ひとりはもう嫌なんだよ。それにどうせね?もう君以外を選ぶことなんて出来やしないんだから。この国の数多の人の行く末を決め背負う玉座に釣り合うか不安なら、一緒にこれから相応しくなって行けばいいよ。時間ならそれこそたっぷりある。だから……」
甘く響く低い声で強請る蓮麒。
そのまるで濡れた捨て犬みたいな目の意外な可愛らしさにびっくりと目を丸くし頬を赤く染めたキョーコ。
ゆっくりと引き寄せるように運ばれるキョーコの両の手。



「どうか……俺の半身として共に生きて?」



さらりとやわらかでかわいい感じの金の髪がキョーコの手の甲をくすぐって流れる。
恭しく戴くように、再びキョーコの両の手に押し当てられた麒麟の額。
「主命に叛かず、貴女のそばを離れず、ただ御身を護り愛すことをお誓い致すことの赦しを……」
厳かに紡がれる麒麟の誓約。
コクっとキョーコの喉が空気を飲む。
やがて、ゆっくりとひとつ瞬きをした後に
「………赦します。」
そう小さく囀るように返された答え。




それは長きに渡り王の不在が続いていたこの蓮の国に、新たなる女王の登極を告げる応えであった。




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さて、終わってしまっても良さそうなきりの良いとこで終わりましたけど………
書きたかったとこまで書けてやしないんで、もうちょっとだけ続くんじゃよ。←
たぶん、あと一話?かなぁ?


相変わらず、計画性がナッシングだーね。
ごみんよ
( ´ ▽ ` )ノ



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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