NiziU マコの軌跡(その1)JYP練習生時代

NiziU マコの軌跡(その2)虹プロ地域予選
 

NiziU マコの軌跡(その3)虹プロ東京合宿

 

Niziプロジェクト(虹プロ)地域予選東京会場で涙の合格を果たしたマコ。1万人を超える応募者のなかから選りすぐられた26名が東京合宿に集ってきました。2019年9月のことです。

マコの存在は参加者どうしのあいだでも、JYP練習生を3年近くやってきた実力のある子が、しかもかなりの本気モードで参加していると聞いて、みな一目置いていたそうです。どこか近寄りがたいところがあってほぼ全員がマコには敬語を使って話していたそうです。呼び方もマユカやアカリが「マコさん」とさん付けで呼んでいるのが虹プロpart1の動画に残っていますね。

練習生仲間だったリマとミイヒからはタメ口で「マコちゃん」呼びだったので、それがNiziU結成後のマコへの接し方の標準となったようです。年齢に関わらず互いを呼び捨てで呼び合うなかで、今でもマコだけは同学年のリオも含めてメンバーから「マコちゃん」呼びで呼ばれていますね。
 

NiziU結成後のマコは徐々に天然ぶりを発揮して、仲間にも親しまれ、愛される存在になっていきます。パフォーマンスのときに見せる「凄み」を普段は敢えて消し去ってメンバー間の敷居を低くしているようです。でも、虹プロのとき、特に東京合宿のときはやる気と緊張感を前面に出していて「凄み」のほうが優っていました。

ダンスレベルテスト

 

[Nizi poject] 東京合宿 2PM) I'll be back マコ

1:35 東京合宿の最初はダンスレベルテストでした。マコはJYPエンターテインメントの先輩ボーイズグループである2PMの"I'll be back"のダンスを披露しました。

まず驚いたのはこの合宿のためにマコは地域予選のときの長い髪をばっさりと切ってきたことです。ショートヘアというほど短くはありませんが、比べてみると40cmぐらいはバッサリ切ったようでした。ボーイズグループのダンスを披露するために曲に合わせて女性の大切な髪を切る。そのぐらいの本気モードだったのです。

 

"I'll be back"のダンスを成功させるために筋トレに励んできたというマコ。曲が始まり、ドラムが刻むリズムとマコの腹筋がシンクロするところから力強さがあふれます。一つ一つの動きが滑らかで淀みがなく美しい動きです。そのすべてに力強さがあふれています。

 

マコのダンスを見つめるJ.Y.Park氏の眼が心なしか潤んでいるように見えます。終了後、彼はこう語ります。

-----------------------------------------------------------------------------

3:35

J.Y.Park氏:オーディションを見ながら涙が出たのは初めてだと思います。なんかすごく感動的だな。僕はまだマコさんをよく知らないけど、とても一生懸命生きている人のようです。一つ一つの動作をしっかり踊ろうとどれだけ練習したかが感じられました。最初に腕を上げたところでもう心を奪われました。本当に上手すぎて!歌手になる準備がすべて出来ています。体の状態もすごくいいです。“体をしっかり管理しないといけない”というのは、こういう体になっているということです。速いし、力強くて、しなやかで!普段どうやって管理していますか?
マコ:毎朝起きて体重を測ります。
J.Y.Park氏:では運動は?ストレッチ・有酸素・筋トレのなかで・・・
マコ:三つ全部しています。
J.Y.Park氏:ここまで一生懸命になれる最大の動機はなんですか?
マコ:私は練習生として(JYP練習生の)ショーケースに何回か出させていただいたんですけど、毎回(準備は)大変ですが、舞台に立った後は本当に達成感がすごくて、その実感をもっと味わいたいなと思って頑張っています!
J.Y.Park氏:人というのは(長く)見てみないとよくわからないけど、マコさんは成功しても人として変わらないような気がします。

-----------------------------------------------------------------------------

全員のパフォーマンスが終わり、順位が発表されます。マコは26人中の1位でした。


ボーカルレベルテスト


[NiziU] MAKO CUT #3 雪の華

3:03 マコは中島美嘉の「雪の華」を2番から熱唱します。恋人への思いを歌った歌ですが、マコは離れて暮らす福岡の家族を思って歌ったそうです。だから恋愛色の濃い1番を避けて、大切な人の存在を歌った2番から歌ったのでしょう。

マコの歌はいつも安定していて安心して聴けます。それに地声がそもそもきれいだなと思います。その歌声に情感をしっかりと載せて歌い上げたマコの歌にJ.Y.Park氏も他のメンバーも惹きこまれていきました。歌い終わったあとも余韻が残ります。J.Y.Park氏がおもむろに口を開いてマコを称えます。

-----------------------------------------------------------------------------

6:55

J.Y.Park氏:教えられないことがありますが、ある人は歌を歌うとき、聴く人の心に触れる、そういう力がある人がいますが、マコさんはダンスのときも今もそうだし、歌を歌うとき心を細かく、上手く込めることができている。

-----------------------------------------------------------------------------

最大の賛辞でした。さらにJ.Y.Park氏はインタビューに応えてこう言います。

-----------------------------------------------------------------------------

7:54

J.Y.Park氏:スターになるというのは人としての魅力があって人を惹きつけられる力を持ってないといけませんが、(マコさんは)スターになれる準備ができている子です。すべてが備わっている。

-----------------------------------------------------------------------------

ボーカルレベルテストの順位が発表されると、マコはまたしても1位でした。このボーカルレベルテストでは、他にミイヒ、リク、リオも「雪の華」を歌いました。ミイヒは声質の良さ、声の伸び、ビブラートなどの技術面でも優れていてマコとは甲乙つけがたい優れた歌唱力を見せましたが、J.Y.Park氏はおそらくマコの表現力を評価してわずかにマコを上位にしたようです。ミイヒよりも3歳年長で練習生期間も長く苦労している分、情感が豊かに表現されたのでしょう。


スター性テスト


[Nizi Project] Part 1 #7-2

何でもいいから特技を披露してその人のスター性を測る「スター性テスト」です。

5:36 マコは「レモンを無表情で食べる」という特技を披露します。

8:21 「自然と集中力が湧いてきた」と言って、毛筆を執り、習字を始めます。

8:52  マコは自分が書いた習字を見せます。「点滴穿石」。“一滴一滴の小さな水滴でも長い年月が経つことで大きな硬い石でも穴を通す”という意味で、「どんなに小さな力でも積み重ねることで大きな(目標を)達成することができる」ということだとマコは説明します。

 

10:28 J.Y.Park氏はマコの習字を上手だったとほめます。そして、「何よりも書いた言葉がマコさんの姿と重なって感動しました」と。このときJ.Y.Park氏はほめ言葉しか言わなかったのですが、ここで静かな事件が起きます。マコにキューブを出さなかったのです。

 

演技の直後にキューブを渡したのは26名中8名でした。「ちょっと変わったテニス講座」のアヤカ、「空手」のリク、「ラジオ番組」のニナなど、インパクトの強いパフォーマンスをしたメンバーはキューブをもらいました。マコのレモン食べと習字も十分インパクトがあったし感動もありました。でも、マコには敢えてキューブを出さなかったのです。

 

なぜJ.Y.Park氏はマコにキューブを出さなかったのか。J.Y.Park氏は「感動した」と言ったあとに、続けて「真面目すぎないように先にレモンを食べたのもよかったと思います」と言いました。マコを傷つけないように「ほめ言葉」にして言っていますが、これは「真面目すぎることはスター性評価にとって必ずしもプラスにはならない」というヒントを与えてくれているようです。

 

全員の「スター性テスト」が終わったあとに印象深い場面がありました。J.Y.Park氏は、先にキューブをもらっていた8名のほかに、新たに4名に追加キューブを出すことを伝えます。

 

[Nizi Project] Part 1 #8-2

18:50 ここでJ.Y.Park氏は最後の追加キューブとしてマコを指名します。名前を呼ばれたマコの眼からみるみる涙があふれます。


ダンスレベルテストでもボーカルレベルテストでも笑顔でキューブを受け取ったマコ。そのマコが東京合宿で初めて流した涙でした。

 

マコはダンスもボーカルもただひたすら一生懸命に練習して自分のダンス、自分のボーカルを築き上げてきました。それに比べると「スター性テスト」というのは雲をつかむようなもので、ただ一生懸命取り組めば得られるというものではなかった。アヤカの「ちょっと変わったテニス講座」のように、一生懸命さとか特別なスキルとかとは無縁の、ありのままの人柄の魅力が評価されました。でもこのときのマコは自分の素のありのままの魅力というものがまだ十分にわかっていなくて、とにかく何でも一生懸命、何でも真面目にやる自分を見せるしかないと思っていたのかもしれません。

 

NiziUとしてデビューしてからのマコは、「リラリラ語」「マルガリータ」といった思いきりのいい“芸”や、日常のなかでも天然ぶりを見せて、その親しみの持てる人柄を存分に見せてくれるようになりました。もしそれらをこの「スター性テスト」のときにやっていたらきっと一発でキューブをくれたのではないかと思います。

 

そんなに真面目すぎないで、もうちょっと肩の力を抜いて、もっと素のマコを見てみたい。そんな思いでJ.Y.Park氏は敢えてキューブを一旦保留したんじゃないかと思います。でも、そんなマコの真面目さ、誠実さも決して作ったものではなく、それもマコ自身のありのままの尊い姿でした。J.Y.Park氏はそれがわかっていたから追加でキューブを出したのだと思います。最後にマコの名前を呼んだのは、マコへのご褒美でもあり、ちょっとしたマコへの揺さぶりだったかもしれません。

 

マコは虹プロに参加する前からずっと悩んでいました。ダンスとボーカルの技術だけでは得られないもの、地域予選でマコはそれを「コンセプト」という言葉で表現して自身が迷っていることを吐露しました。そして、この追加キューブをもらうまでのあいだ、今度は「スター性」といういちばん欲しいものが得られないことはきっと辛かったでしょう。だからキューブがもらえて自然と涙があふれたんだろうと思います。

 

そして、その「肩の力を抜いて」という言葉をJ.Y.Park氏はいよいよ次のショーケースでマコに伝えることになります。


ショーケース


[Nizi Project] Part 1 #9-1

虹プロの地域予選から東京合宿のスター性テストまで個人パフォーマンスの評価が続きましたが、このショーケースが初めてグループパフォーマンスでの評価となりました。グループ編成も曲目も主催者側から指定されたグループと課題曲で挑戦することになるので、難易度が急に上がります。

 

19:30 マコは、アヤカ、アカリ、キョウカ、モエノと組んだ5人グループ“5PM”チームのリーダーとなって、2PMの“Again & Again”のパフォーマンスに挑戦します。全員がこの曲を知らないと言います。ダンスレベルテストで同じ2PMの“I'll be back”を演じたマコでしたがこの曲は知らなかったようです。それでも韓国語ができるマコはすぐに歌詞を覚えます。そして、他のメンバーに歌詞の意味や韓国語の発音のしかたを教えます。ダンスも常にマコがリーダーシップを発揮します。メンバーがうまくできなくても決して責めたり苛立ったりしたことはなく、粘り強く教えて、できるようになるまで何度でも付き合います。

23:20 ミスをしてしまって涙があふれるアカリのそばにマコが寄り添い、抱きかかえるようにして励まします。初めての団体戦で見せるマコの仲間への献身、思いやりに胸を打たれた人は多いんじゃないでしょうか。ぼくもこれを見ていっぺんにマコ推しになった一人です。

[Nizi Project] Part 1 #9-2

0:36 いよいよ“Again & Again”のパフォーマンスの本番です。あんなに苦労していたとは思えないほどスムーズに5人は歌い、演じきります。
5:45 特別審査員のモモとサナの絶賛に続き、J.Y.Park氏が講評を述べます。

-----------------------------------------------------------------------------

J.Y.Park氏:ショーケースの曲のなかでいちばん難しい曲です!歌詞が韓国語であり、男性の曲であり、初めて聴いた曲ですよね。それらを考慮しながら見たんですが、5人のチームワークがいちばんいいと思います。ダンスがいちばん合っていました。動作も5人がしっかり合っていたし、5人で力を合わせたからこそこのような結果が出たと思いますし、特にマコさんがチームのリーダーだったので、よいリーダーシップを発揮したんじゃないかと思います。

マコ:ありがとうございます。
J.Y.Park氏:でも今日僕がマコさんに初めてよくない評価をすると思います。ボーカル1位、ダンス1位の人が今日なぜ最高の実力が発揮できなかったのかというと、力を入れ過ぎています。力を入れ過ぎると声が細くなります。最初始まった瞬間僕が“あ…心配だな”と思ったのが、これ(ダンスの動作)をやるときから体に力が入り過ぎていました。ダンスも同じです。体に力が入り過ぎているから動作がとても硬くて小さくなります。ダンスと歌は常に基本的に力を抜いてやらないといけません。そして力を入れるべきときにパッ!パッ!と入れないといけません。歌もダンスも。

だからこのパフォーマンスでダンスと歌が上手かった人はアカリさんです。僕が地域予選でなぜこんなに印象に残ったのか、再確認できました。(いちばん上手かった理由は)力を抜いていたから!力を抜いた状態で力を入れるべきときに的確に入れていました!ダンスも歌も。今日のアカリさんにはここにあるキューブをぜんぶあげたいけど、もう3つ全部もらっているね。
-----------------------------------------------------------------------------
J.Y.Park氏の講評にはポイントが二つありました。

①マコのリーダーシップをほめたこと。個人としての技量だけでなく、グループパフォーマンスのリーダーとしてマコが力を発揮したことは、このオーディションを通じて結成するグループのリーダーとなれる資質があることを既に示していました。

 

②力の入り過ぎを指摘したこと。たしかに冒頭のマコの声が細くなっていて余裕がないように感じられたのはJ.Y.Park氏の指摘どおりでした。なぜマコは力が入り過ぎていたのか。

 

真面目で一生懸命なのは人として美徳だけれど、東京合宿のマコは真面目を前面に出しすぎて堅く感じられる部分があったようです。J.Y.Park氏はそのことに「スター性テスト」のときに気づいていたのです。だからすぐにキューブを出さなかった。でも、そこは指摘する場所じゃないと判断して追加キューブを出した。そしてショーケースをその指摘の場にしたのでしょう。

 

もう一つはメンバーに気を遣いすぎて自分自身が余裕をもってベストパフォーマンスができなかった。マコは5人のグループパフォーマンスを最高のものにすることに全力を注いでいました。他のメンバーを置き去りにして自分だけが目立つことはマコの性格ではできないことでした。でも、J.Y.Park氏が理想とするのはメンバーに気を配ってグループを完成させつつ、それでもそのなかで誰よりも光り輝く存在。それがJ.Y.Park氏が求める真のリーダー像でした。

 

J.Y.Park氏はアカリを力が抜けていたとほめました。グループ全体に気を遣っていたマコとは対照的に、アカリは逆にマコに身を委ねていたのか適度に力が抜けていました。ただ、アカリのために心を砕いたマコに対してあそこまでJ.Y.Park氏が厳しく指摘して、逆にアカリに優しくほめたのは皮肉な結果で、マコがちょっとかわいそうだなとも思いました。

 

8:46 それでもマコは、感激して涙を流すアカリに再び寄り添って称え、励まします。自分のことよりもアカリが頑張って結果を出せたことを本当に喜んでいるようでした。ちょっといじらしいけど、他の誰にも真似できないマコのマコらしさ。それがNiziUという奇跡のグループの核になったんだから、これはこれでよかったんだと思います。そしてきっとマコのことだから、J.Y.Park氏の指摘も素直に前向きに受け止めたことでしょう。

 

すべての演技を終えて発表された東京合宿の最終順位でマコは1位。常に先頭を走りながら韓国合宿へと向かいます。

 

東京合宿最終合格者と順位(Life With Topicsさんのサイトより)

東京合宿参加者26人中、上位14名が合格して韓国合宿へ

マユカの本名は正しくは小合麻由佳

 

(つづく)

 

ネコバスのTwitter