NiziU マコの軌跡(その1)はこちら⇒JYP練習生時代

 

NiziU マコの軌跡(その2)虹プロ地域予選

 

2017年、15歳で単身韓国に渡り、JYP練習生を2年7カ月も続け、歌もダンスもハイレベルの実力を既に身につけていたマコ。日本にいたなら高校3年間に当たる期間を歌とダンスと韓国語の学習に捧げて、虹プロ地域予選の時にはもう18歳になっていました。アイドルとしてデビューするためのデッドラインに近づいているという危機感を持ちながら、マコは最後のチャンスと思って虹プロに挑戦します。

 

虹プロ地域予選東京会場にマコは参加します。出番前のインタビューでマコはJ.Y.Park氏と会社のエレベーターで一度だけ会ったことがあると答えます。J.Y.Park氏の前で演技を見てもらう機会が、練習生としてではなく虹プロ参加者として初めて訪れたわけです。

 

[Nizi Project] Part 1 #3-1

 

12:30

マコは会場に入り、J.Y.Park氏の前で自己紹介をします。マコはJYP公開オーディション13期に3位で合格して2年間練習生としてトレーニングを受けてきたことを話します。

J.Y.Park氏はマコの自己紹介が上手だと褒めます。それにつづく二人のやり取りがとても印象深いものでした。

------------------------------------------------------
13:43

J.Y.Park氏:練習生の期間中でいちばん辛かったことは何でしたか?

マコ:私は他の練習生は可愛いコンセプトだったり、かっこいいコンセプトだったりあるのですが、私はたくさん挑戦したんですけど、まだ自分のコンセプトが掴めてなくて、これからもこの挑戦してきたことを活かしながら、持続して私の自分に合ったコンセプトを探していきたいなと思っています。

------------------------------------------------------

「いちばん辛かったこと」という問いに対して、過去の後悔ではなく、未来に向けて模索していることを答えるところがマコらしいなと思います。本音で言えば、マコにとっていちばん辛かったのは、この2年間、デビューできなかったことのはずです。もっと言えば、一緒にトレーニングしてきた練習生仲間がITZYとしてデビューする姿を脇で見送ったことだったでしょう。マコは歌とダンスに関してはやれる限りのことをやってきたという自負もありました。マコはITZYのメンバーにあって自分に欠けているものは歌やダンスのスキルではなくてコンセプトだと思っていたのです。

 

J.Y.Park氏は虹プロのなかでこんな発言もしています。

------------------------------------------------------

歌とダンスの実力がすべてではありません。
スーパースターたちは言葉では説明できない何かを持っています。
オリジナリティーが一番大事です。

------------------------------------------------------

歌とダンスの実力は一生懸命に練習すれば伸ばしていくことができる。でも、デビューするための、スターになるための何かが自分には欠けている。それが何であるのか、どうすればそれを身につけることができるのか、そのことがマコにとって最大の悩みだったのです。

 

自分はITZYのコンセプトに合わなかったのかもしれない。今度、J.Y.Park氏が作ろうとしているグループはどんなコンセプトなんだろう。もしそれが聞ければ、そのコンセプトが出せるように頑張ってみよう、そんな思いもあったかもしれません。しかし、それに対するJ.Y.Park氏の答えは意外なものでした。

------------------------------------------------------

14:12
J.Y.Park氏:コンセプトは必要ないです。僕たちはみんなもともと特別だからです。だから、ただ自分らしくありのままでいてください。
マコ:はい。ありがとうございます。

------------------------------------------------------

自分ではない何かを演じることではなく、ありのままの自分らしさを表現していくことが、あなた自身のオリジナリティなんだよ――そんなメッセージが込められていたようです。

 

J.Y.Park氏は東京合宿でこんな話もしています。

------------------------------------------------------

皆さんがここで26位になっても、脱落したとしても皆さんが特別ではないということではありません。1位になっても26位になっても同じように特別です。このオーディションはある特定の目的に合わせてそこに合う人を探すだけで皆さんが特別かどうかとは全く関係ありません。
------------------------------------------------------

これは東京合宿で脱落してしまうであろうメンバーへの激励の意味で語られた言葉ですが、マコがITZYメンバーに選ばれなかったことにも通じるメッセージでした。――コンセプトを考えるのは会社の仕事であって、メンバーではない。あなたは何かが欠けていたのではなく、たまたま会社が考えるITZYのコンセプトに合わなかっただけ。あなたらしい特別な自分を磨いていけば、必ず光り輝くときが来る――そんなマコへのメッセージでもあったのでしょう。

 

14:57

マコは歌とダンスを披露します。Uruのフリージアを歌い、J.Y.Park氏のYou're the oneを踊ります。

演技が終わると、J.Y.Park氏はマコの話しかけるように歌う歌、強弱と緩急のあるダンスを褒めます。そして、こう言います。

------------------------------------------------------
18:15
J.Y.Park氏:2年という時間が長いといえば長く、短いといえば本当に短い時間です。2年間という時間、本当に誠実に練習したみたいです。誇らしく思っています。

------------------------------------------------------

マコの2年間の思いに寄り添った、温かくて心のこもった賛辞でした。足りないところ、欠けているところ、課題点は一つも言いませんでした。J.Y.Park氏は「来てください」と合格を告げます。キューブを受け取ったマコの眼から涙があふれます。

 

 

虹プロ地域予選の映像を全部見てみると、マコがトップクラスの実力を発揮していて、合格するべくして合格したように思えますが、マコ自身は他の参加者との優劣は全く考えてなく、ただただ自分が追い求めて磨いてきたことが間違いではなかった、ありのままの自分をJ.Y.Park氏が認めてくれたことが何よりうれしかったことでしょう。

 

 

2018年の地方オーディションやスカウトを経てJYP練習生になっていたリマとミイヒは先に合格をもらっていましたが、マコの予選が終わるのを廊下で待っていました。マコの合格を聞いて3人とも大泣きして抱き合っています。リマもミイヒも自分が合格をもらったときも泣いていますが、自分のとき以上にマコの合格に号泣しました。マコの真剣さ、切実さを誰よりも知っていたからでしょう。

 

虹プロはJYPエンターテインメントの世界戦略の一つと位置づけられていましたが、開催に反対する意見や不安視する声も少なくなかったようです。特に、K-POPが求める水準に日本人の女子がついていけるのかを不安視する声が根強くありました。しかし、TWICEの日本人メンバーのモモ、サナ、ミナの活躍は、日本人のなかにも高いポテンシャルがあることを示していました。

 

時期的に見て、ITZYがデビューした2019年1月の時点では既に虹プロの計画は着々と進んでいたはずです。これはあくまでも私見にすぎませんが、J.Y.Park氏は、他の誰よりも勤勉でストイックな練習生マコの存在をトレーナーから聞いて(+映像などで見て?)知っていて、マコを虹プロの中核に据えようと最初から考えていたのではないかと思います。マコにはITZYよりももっとふさわしい舞台があると思って、取っておいたのではないかと思うのです。

 

もちろんただまじめだ勤勉だというだけではアイドルとしての魅力と関係なさそうにも思えます。しかし、中途半端な勤勉さではなく、とことん突き抜けていったときに、それが魅力あふれる個性として光り輝いていくとJ.Y.Park氏は信じていたと思います。J.Y.Park氏の「ただ自分らしくありのままでいてください」の言葉にはそんな思いが込められているように思えます。そして、マコの歌とダンスを見終えたJ.Y.Park氏には信じていたことが確かめられた安堵感のようなものが感じられるのです。

 

ついでに言うと、ITZYのデビューが既に決まっていた2018年後半にリマとミイヒを敢えて練習生に採用しているのも虹プロへの参加を念頭に置いたものであったと考えたほうが自然ではないでしょうか。

 

NiziU マコの軌跡(その3)虹プロ東京合宿
 

ネコバスのTwitterはこちら