電車を下りるとき、
酒とオーデコロンのブレンド臭をぷんぷんさせた
30代くらいの小太りの男が、
自分の前によろけたおばあちゃんを小突くように押しのけた。
それをすぐ後ろで目撃したあたしの眉間に
みるみる険しいシワが寄り、
そおゆう陰険なのはイカンだろう。
咄嗟にバッグの中を探ると、
先ほど食した駄菓子についていた値札が
「早く早く」と言わんばかりに ぺりりとはがれたので、
妙にてらてらした生地で、
サイズがどう見ても小さいように思われる
縞のスーツを着た男のぱつぱつの尻に
何食わぬ顔して貼ってやった。
男は気取った足取りで、
「105円」の値札のついた尻をふりふり、去っていった。
あたしとおばあちゃんはホームでそれを見送った。
100円の値打ちもないけどね。