ウルタールの路地裏から。 -37ページ目

みょん×ソード the final 『白楼剣は明日に舞う』①

プロローグより




「幽々子様……今、参ります。どうかご無事で!!」


 

 一人の少女が、絶望が花吹雪く冥界へと向かう。
 ただ主への忠義と信のために。



「……藍さま、お話があります!」



 一人の少女が、捜し求めていた主と再び向き合う。
 これもまた、主への忠義と信のために。



 二人が刻んできた絆はそれぞれの場所で、それぞれの形で、ついに最後の瞬間を迎える。



 始まったものは必ず終わる。
 どんな旅もいつかは終わる。
 どんなに長かろうと、どんなに短かろうとそれは同じ。


 
 少女たちはその終わりにどこへたどり着くのか。



 ここは忘れられしものの理想郷。
 欲望と希望が渦巻く、夢の終着点。





 その名は、幻想郷。






みょん×ソード the final『白楼剣は明日に舞う』

 


 紆余曲折を経て冥界に帰還した妖夢。
 彼女が目にしたしばらくぶりの白玉楼は、本来ならば新緑の映えているはずの晩春に似つかわしくない一面満開の桜景色に満ちていた。
 その桜が生み出す幻想的な桜吹雪の中に〈ダン〉は降り立つ。
「西行妖がここまで……!」
 妖夢の眼前で咲き乱れ、その枝の至る所に死の花をまとわせた西行妖。すさまじい霊力を吸い込んだ妖怪桜はその大きさを何倍にも膨れ上がらせ、枝の至る所に美しい花を咲かせていた。
 ひときわ激しくなる花吹雪が一瞬、妖夢の視界を奪う。
「ッッ……!」
 桜色に包まれる世界。
 それが晴れたとき、彼女の目の前には巨大な影が立ちふさがっていた。そして妖夢はその姿に見覚えがあった。
「〈ダイオージャ〉……!?」
 現れたのは確かにかつて妖夢が主とともに乗り込んだ合体マシン、最強ロボ〈ダイオージャ〉。
 しかしそのサイズは巨大化した西行妖と同様に以前の数倍以上。20m半ばだったマシンがあの〈バルディオス〉よりも巨大になっていた。更に形相や意匠もまがまがしく変貌を遂げ、妖夢の〈ダン〉を阻む。
『あれは既に〈ダイオージャ〉ではないわ……』
「紫様!!」
 妖夢が声のした方向を見上げると、そこには満身創痍の〈バルディオス〉の姿があった。
 計器が火花を散らすコクピットの中で、紫は続ける。
『完全に迂闊だった……私のミスね。奴は月の石の中に潜んで……このときを……大きな力を持つ存在と接触するのを待ち望んでいたのよ。そして、中の幽々子ごと〈ダイオージャ〉を乗っ取った……!』
「そんな……」
 呟く妖夢の顔に一瞬、苦渋の色が浮かぶ。それは主の危機に遅れた自分をふがいなく思う気持ちの表れ。しかしすぐに表情を引き締めると〈ダイオージャ〉に目を向ける。
(へぇ……少しの間でだいぶ良い顔になったじゃないの)
 紫はそんな妖夢の様子を見て、感心したように心の中で呟く。その顔には窮地にも関わらず薄い笑みが浮かんでいた。
『妖夢……帰ってきたということは、覚悟はできているのよね』
 〈バルディオス〉にパルサーベルを構えさせながら問いかける紫。
「はい……!」
 それに妖夢は強く応じた。
 長刀を構える〈ダン〉の瞳が紅く輝き、コクピットが白色の輝きに包まれる。
 スパークを起こすほどの霊力が機体に満ち満ちていく。
「相手が何であろうと、護るべき人のために私は戦います」
『……なら言うことはないわ、私が与え、貴女が身につけた全てで、己の成すべきことをしなさい』
「はっ!」
 西行妖、そして異形と化した〈ダイオージャ〉に正面から対峙する妖夢と〈ダン〉。
 その敵意を感じ取ったのか、〈ダイオージャ〉が〈ダン〉を見下ろす。
 再び逆巻く桜吹雪。
 その中から数多の影が現れる。
 それは、雑多にして大量のマシンだった。
 〈エースレッダー〉を始めとした〈ダイオージャ〉の合体前の機体。藍と罪袋の操っていたオリジナルセブンのヨロイたち。さらにその中には見覚えのある頭部のない亜人型マシンや魔術師マシン、機械竜まで混じっていた。
「紫様、あれは」 
『そうよ、見覚えがあるでしょう。〈ダイオージャ〉とオリジナルセブンは私から奪ったデータで形だけ複製したようだけど……他は奴自身の手駒のようね』
「あれが今回の異変の黒幕なのですか」
『いえ、恐らくは端末……それも本当に末端の存在ね。目的もせいぜい破壊活動か情報収集ってところでしょう。……けれども西行妖からかすめ取ったパワーは本物よ、油断はしないで』
「はい」
『後ろは抑えてあげる。雑魚を突っ切って、さっさと幽々子を助けてきなさい!』
「お任せを!」
 妖夢の〈ダン〉が、〈ダイオージャ〉の周りに群がる大量のマシンに向かって走り出す。
 向けられた銃口が一斉に火を噴き、銃弾やビーム、火球が雨あられと降り注ぐ中を駆け抜ける。
 飛び、跳ね、避けきれないものは電磁シールドで弾きながら、一直線に突き進む。
 その進撃を阻むように、敵のマシンが正面に殺到していった。
 その先鋒として真正面に迫る二機は〈ダイオージャ〉の一部であった〈アオイダー〉と〈コバルター〉。かつて自分が半霊を用いて操っていた機体だ。
「……ッ」
 軽く唇を噛む妖夢。
 複製とはいえかつての愛機を相手にするのは忍びない。しかし彼女の前進は止まらない。止めるわけにはいかなかった。
 楼観剣を握り込み、〈ダン〉を走らせる。
 それを阻むは本来の武器である大槍スピア・アクスと棍棒ハンマー・スティックを構えた〈アオイダー〉と〈コバルター〉。
 繰り出される突きと殴打。
 妖夢の〈ダン〉は長刀でそれを打ち払うと、各々に反撃の一閃を加える。
「許してください、〈アオイダー〉、〈コバルター〉……今は!」
 破片を散らして砕け散る二機。
 その姿を後に、妖夢と〈ダン〉は修羅の戦場に飛び込んでいった。



the final ②へ