(9月2日夜 都内、某所にて)

 

将棋道場の帰り、敗北の味を噛みしめていた。

勝つ日があれば、負ける日もある。

勝てるか分からないからこそ、勝つことに価値がある。勝つ喜びがある。

しかし、嬉しい思い出以上に、敗北の辛さを味わってきた。

今日もしんみりした気分で帰るのか・・・

 

 

いや・・・今日はまだ帰れない。

真の"戦場"はここにある。

 

 

(戦闘開始)

 

激辛グルメ祭り。

4年前に存在を知り、以来毎年参戦し、今年で5回目になる。

 

1回目の参戦の後、レベルの高さに刺激を受け、鍛錬すべく中本通いを始めるきっかけとなった。

2回目、まだ訓練生だった俺が無謀にも挑戦した激辛冷麺。

チリソースによる脳へのダイレクトアタックにより、人生で初めて三途の川と対面した。

3回目以降はベテラン気取り、挑戦というよりは、視察の気分で激辛メニューを食べ漁っている。

 

だが、戦場で油断は命取り。

どんな激辛グルメが俺の命を奪うかは分からない。

細心の注意を払いつつ、激辛グルメと対峙しなければならないのだ・・・

 

なのにどうした?

会場を見渡せば、若者グループとカップルばかり。

戦場に友情も愛情もない。

友人も恋人も、弱者は足手まといである。

まるで食フェスに来たかのような気楽さ(※正しい)に憤りを覚えた。

 

会場入り口にてメニュー表を入手。

ふっ、俺の対戦相手は貴様らか・・・

軽く喰らってくれるわ。

 

 

 

(ROUND1 VSスパイスラーメン 超辛)

 

 

激辛グルメ祭りでは、注文時に辛さを聞かれる。

愚問だ。

 

「2位じゃダメなんですか?」

 

良い訳がない。

頂点を目指す意欲こそが、自分の可能性を広げてくれる。

だから俺は宣言した。

 

「超辛」

 

と。

 

実際に食べてみた。

ふん、ベテランを舐めるな。

余裕余裕。

ただ辛いだけでなく、具だくさんで美味しかった。特にゴボウのフライが美味しく、「ゴボウってこんなに美味いのか・・・」と度肝を抜かれた。

 

完食した後、ある思考が頭をよぎった。

 

「普段の中本はスープが多すぎて飲む気がしないけど、今日位ミニサイズなら完飲もイケるのでは・・・?」

 

試しに一口。

「辛いじゃねぇか!」

当然である。

 

「これだけ辛ければ、完飲する価値があるな」

 

辛さへの渇望は、時として思考を歪ませる。

闇に足を踏み入れる。

その先に待つのは、生か死か?

 

なに、こんな食フェスごときでくたばるつもりはない。

心地よい汗をかきつつ、スープを飲み進める。

 

 

 

(ROUND2 ソムタム 激辛)

 

 

続いて第2ラウンド。

辛い物ばかり食べていては、舌が麻痺してしまう。

何事もバランスが肝心。

 

「ソムタム、激辛で!」

 

とはいえ激辛グルメ祭りだ。

イベントの名前通り、最低でも激辛を食べないと話にならない。

 

ソムタムとはタイ料理で、パパイヤの冷製サラダのことらしい。

「パパイヤってどんな果物だっけ?」という疑問が浮かび、髪がボサボサの鈴木さんを連想しつつ食べ進めた。

 

初めはいたって普通のサラダだった。

男の一人暮らしは野菜が不足しがちで丁度いい。

 

食べ進めると慣れてくるから楽勝・・・?

そんなことはない。

底で辛いスープを吸った野菜を食べるところからが本番だ。

 

「痛っ!」

 

舌に刺さる痛みを感じた。

ちと油断し過ぎたかと悔やみつつも、普通に完食。

 

(FINAL ROUND VSカシミールアグニ 痛辛)

 

 

いよいよ親玉に乗り込む時が来た。

メニュー表で目に入った最高ランク「痛辛」の2文字を、今こそ喰らい尽くすとしよう。

 

注文時、調理スペースから漂う香辛料の香り。

最高ランクの敵だ、容易には攻略できまい。

気を引き締めて臨まねばなるまい。

 

いざ食べ進めると、すぐに異常に気付いた。

「ど、どういうことだ・・・」

 

流石は最高ランクの「痛辛」というべきか。

いや、

 

「辛さが・・・分からん・・・」

 

全く辛さを感じなかった。

痛くない痛辛とか笑えねぇ。

 

だが、疑問の正体にすぐに気付いた。

俺は、とんでもない舐めプをかましていたのである。

 

「しまった!ライスを盾にして辛さを回避していたんだ!!!」

「くっくっく、ようやく気付いたようだな。お前は激辛料理を食べに来たんだ。

それがどうした!辛さから逃げて、カレーとライスを一緒に食べるとは、なんたる愚行。行いを恥じて出直してこい!」

 

俺は慌ててライスを完食した。

カレーとライスのセットは美味い。

だが、目的はそこじゃない。

 

あくまでも、「痛辛」のルーと正面から戦うこと。

それが俺の使命だ。

ライスを盾に痛辛のルーから逃げるなど、レイラキーを盾に銃声から逃げるチキン行為と変わらない。

 

残り僅かなルー単体に対し、俺は真っ向勝負を挑んだ。

 

「痛い!辛い!これだよなぁ・・・」

 

 

短い間だったが、俺も"漢"になれた気がするぜ。

 

 

(ちょいと告知)

 

という訳で、新宿大久保公園で開かれている、「激辛グルメ祭り」に行ってきました!

今年は某関東強豪プレイヤーも参戦されたようで、ウィクロス界に布教したいなと考えています。

 

あくまでも表世界のイベントで、一般の方々が多く参加することから、中辛程度のマイルドなメニューも多く揃っているため、興味があればお気軽に足を運んでください。

(※裏の世界には誓約書を書かせて人を本気で殺しに来るラーメンが存在します)

 

概要は以下の更新HPをご参照ください。

 

http://www.gekikara-gourmet.com/

 

では(^^)/