昨年のカンヌ映画祭と今年のアカデミー賞で賞を獲った話題の映画「関心領域」の日本公開が始まったので観に行く。
アウシュビッツ強制収容所の塀の傍で暮らす収容所長の日々を撮った映画です。
関心領域とはドイツがアウシュビッツ強制収容所を取り囲む40平方キロの地域を表現するために使った言葉である。
映画では、背景として収容所からの銃声や焼却炉からの煙は写しだされるが、ひたすら収容所長の家での家族の平和な日々が描かれる。
収容所内で行われているであろうホロコーストについては、一切映像には出さず、ひたすら所長一家の日常が撮られていく。
収容所傍の川でのピクニックやプールのある庭でのパーティを楽しむ一家の様子が映し出される。
所長の妻は、自分の眼で見えないものには無関心でいられるのか、ユダヤ人の収容者から奪ったらしい衣服を友達と平然と分け合う。
所長は組織の中では自然なのか、業者と絶滅焼却炉の能力を上げる議論を事務的に行っている。
絵で対象の周りだけを描いて対象を浮かび上がらせる技法があるように、ホロコーストの残酷さを、ひたすら平穏な日常を描くことによっていっそう深く浮かび上がらせるといった、シュールなホラー感のある映画でした。
最後に焼却されたユダヤ人達の残したおびただしいカバンや眼鏡、義足等の写真が写されて終わりになる。 10年前アウシュビッツを訪れた時のおどろしい気持ちが蘇った。