鴎外は好きな作家のひとりである。
三島由紀夫は「鴎外を読まずして作家とは言えない」といったとか。
10年前鴎外生誕150周年で、鴎外の住居、観潮楼址に鴎外記念館が開館した折には出かけました。
この度、海堂尊が評伝を書いたと新聞の書評に出てたので買いました。
海堂尊は医者として鴎外をみつめ、この本の中でも鴎外の医者としての側面を書いています。
中でも、鴎外が陸軍軍医として日清・日露戦争に従軍し、陸軍の兵食を米食に こだわり続け多くの兵を脚気で失ったことに触れています。
当時脚気の原因がビタミンB1不足ということは分かっていなかったこともありますが、海軍で効果的だと判明していた麦食を採用しようとはしませんでした。
これには単に陸軍、海軍の確執にとどまらず、鴎外の上司も絡んだ背景があったことが説明されています。
また鴎外と北里柴三郎の脚気問題を巡っての確執も取り上げられています。 北里は鴎外の大学後輩です。 鴎外は ドイツ留学先の影響もあるのか、脚気は「脚気菌」による細菌感染症であるとする説にこだわり、北里とことごとく反目し合います。
今まであまり知らなかった医者としての鴎外の側面が分かる本で興味深く読みました。