嵐山光三郎の新刊「生きる」を読んだ。
嵐山光三郎は以前読んだ「悪党芭蕉」のようなまじめな本も書くが、真骨頂は放蕩、無軌道な不良老人にある。
著者は大学卒業後、平凡社に勤め編集者をしていたが、39歳の時、会社が左前になり希望退職した。以後は自由な文筆業に専念し、全国の温泉流浪や,酒食耽溺をしながら文章を書いてきた。
平日は神楽坂の事務所で真夜中まで原稿を書き、週末100歳を超える母親のいる国立の生家に帰る生活を続けているらしい。
編集者出身らしく、昔の文学者にまつわる話が面白い。 森鴎外や開高健の夫婦の葛藤を書いたところはそうだったのかと思わせます。新渡戸稲造が奥さんと一緒に英語の武士道の本を書いたとかアップル創業者のジョブズが徒然草を読んでいたかもしれないというような小話満載で楽しめます。
著者が還暦を越えた頃狭心症に襲われ、心臓にカテーテルを入れる手術をするため病院に入院して、ベッドに横たわりながら物故者を思い出す場面がある。
三島由紀夫45歳、尾崎豊26歳、セナ34歳、マイケルジャクソン、50歳、影山民雄50歳、美空ひばり52歳、飯島愛36歳、ナンシー関39歳、テレサテン42歳、太地喜和子48歳、松田優作40歳、三沢光晴46歳、横山やすし51歳、中島らも52歳、坂本九43歳、寺山修司47歳、澁澤龍彦59歳、江利チエミ45歳、山際淳司36歳、向田邦子51歳 才能ある人は全力疾走してエネルギーを使い切り、力の出し惜しみをしないと書いている。 この物故者の選択も嵐山氏らしい。
また70歳をすぎると、親しかった友人がドドドドドと死んでいく。すると生きたいという気持ちを強く意識するようになったという。しぶとく生き延びて、この世の無常を見定めようとする執念がちろりちろりと燃えてくると書いている。
池内紀と親しく一緒に温泉巡りをした嵐山氏だが、残り何年かの命と決めて晩年を過ごしていた池内紀とは真逆の生き方でそれはそれとして興味を惹かれました。
