※我が子達をモデルにした拙い小説(小ネタ)です。
※文章めちゃくちゃです。
※興味のない方はスルーしてやってください。
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「あの子」
シリーズ(長いです)
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「ドールマーケット」に参加してきました
の記事の一番下の画像数点
上記の記事を事前にお読みいただけた方が分かりやすいかと思います。
読むのめんどくさい人向け↓
八雲(生徒会長)には大人達に勝手に決められた許婚(少年)が居るけど、昴(副会長)は現時点ではそれを知らない。
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ブランコ,アンダーワールド
ギィ、ギィと耳障りな音が夕暮れ時に影を落とした。
学校からの通り道。
最近は公園で遊ぶ子をあまり見掛けなくなったし、実際毎週此処を通っても小さな公園だからか人を見掛けることはほとんど無かった。
しかし今日はその稀な日のようで、何気なく視線を上げるとこの公園の数少ない設置物のうちの一つである背の高い時計は真っ直ぐに現在時刻を指している。
その秒針のように、それは揺れていた。
高く、高く。
まるで何かを掴み取ろうとしているかのように。
ただただ真っ直ぐ。
ブランコから伸ばした手。
長い影。
夕焼けと同じ色に錆びたブランコ。
金の髪が見惚れてしまいそうなほどに揺れていて―――
「―――お前、」
紛れるように、口を突いて出た言葉。
呼び止めたつもりはない。
きっと届くようなものじゃない。
声、と呼ぶにはあまりにも粗末過ぎる、何の意味も無いもの。
なのに。
それなのにその影の持ち主は、まるで俺の零した音がハッキリ聞こえたかのようにふとこちらへ視線を向けて。
キィ。
視線がぶつかり合ったその瞬間、ブランコが一際高い音で鳴いた気がした。
誰も居ない。
一人きりの公園でブランコを止めたのは紛れもなく、先程学校で別れた生徒会長である彼だった。
「生徒会長でも、公園で遊んだりするんだな」
呼び止めてしまった。
目が合ってしまった。
そんな状況のまま立ち去ることが出来るほど俺は薄情では無いし、勇気も無かった。
小さな公園。
二つの影が小さな広場を真っ直ぐに切り刻んでた。
「うん、時々。乗りたくなるときがあるんだ」
「あ、あぁ……そう…」
極自然に返された悪意の無い言葉に、焦燥から悪態を突いてしまった自分がみっともなく思えて、視線を伏せた。
視界の端っこ。彼が下りたブランコが微かに揺れていた。
「高く、漕いでみたくなるんだよね」
傾きかけた陽が彼の頬に差す。
窒息してしまいそうなオレンジ色の中。
まるで、何処か遠くを見つめるように、見上げた彼は口元だけでゆるく笑った。
「何だか、飛べそうな気がして」
「―――――。」
陽に乱反射する彼の髪の色が瞳に突き刺さって、縫い止められたように視線を外せなくて。
何を、見ているの?
染まらない深い色の瞳に、彼は、何を。
「そんなことより、君の家って確かこっちの方角じゃないよね?」
彼はアレ?とでも言いたげに首を傾げ、パチパチと数回の瞬きをして俺を見遣った。
その様に、何故か俺はハッとして慌てて次の言葉を探す。
当たり障りの無い、無難な言葉を。
「あー…いや…、俺今日塾で…」
塾がこの近くで…と続けつつ、何となく足元の影へ視線を落とした。
くっきりとした輪郭線で伸びる影は俺と彼の境目を曖昧に描いていた。
「へぇ、塾に通ってるんだ。偉いね」
「べ、別に偉くなんかないだろ。っつーか俺達中三だし、普通だろ」
「ああ、そうか…そうだよねぇ」
「……ま、塾にも通わないで学年首位を独占してる完全無欠の生徒会長様には、無関係な話かもしれないけどな」
「それって、褒めてくれてるの?」
「好きに受け取ってもらって構わないけど」
「うん…じゃあ、ありがとう」
「嫌味かよ!」
「好きに受け取って良いって言ったの、君じゃない」
小さく吹き出すように彼はプッと笑った。
その笑みさえ余裕の笑みに見えてしまう自分自身がちょっと嫌になって、視線を伏せた。
視界にはただ、オレンジ色に染まらない、交わらない影が二つあるだけだった。
「…お前はさ、どうせ瀬賀高受けんだろ?この辺じゃ一番の進学校だし…」
ビュウ、と小さく風が吹いた。
その拍子に揺れた金の髪が、夕陽を受けてキラキラきらめいていた。
前髪の下。
彼は一瞬だけ微かに目を見開き俺を見て、
「………さぁ…僕は、まだ考えていないけど…」
そう返すときには既にもう、彼の瞳は俺のことなど捉えては居なかった。
「……余裕ってことかよ…ホント嫌味な奴だな…」
俺が感情に任せて毒づくと、彼は目を細めて少し困ったように笑った。
「八雲くん」
突如、か細い声が彼の名を呼んだ。
気のせいかと思うほどに細く、儚く。
けれど、真っ直ぐに視線を上げた彼を見て、あぁ気のせいではなかったのかとつられるように俺も視線を向けた。
影が、長かった。
公園の入り口に一人の少年がこちらを向いて立っていた。
それは、目に染み入るほどに白い髪をした少年だった。
その姿は、声同様何処か儚く消えてしまいそうなほどに頼りなく見えたが、少年は確かにそこに居た。
先程彼を呼んだ、その声のように。
少年は黒いフードを深く被っていて、更に背後に迫る夕陽の逆光ため顔までは認識出来なかった。
しかしそれでも、背丈や体格などから自分達と同い年くらいではなかろうかとは推測できた。
「……知り合い?」
「…僕の、家族、だよ」
金色に染まる睫毛をそっと伏せ、彼は何物とも決して視線を交えることなくまるで独り言のように呟き、
「―――お前、兄弟いたんだ」
ぽつり。
口を吐いて出た、何気ない言葉。
自ら放っておきながら、俺は彼のことを何も知らないのだと改めて気付かされた。
少しだけ、ざわざわする。
傾いてゆく陽に伸びる影に比例するみたいに。ゆっくりと、気付かないところで―――。
「―――それじゃあ、また明日」
彼はいつも見せる優等生の微笑みを向けると、小さく頭を下げ俺の前を横切った。
そして少年の側まで歩み寄ると、二人は二言、三言何か言葉を交わしたのち、一緒に帰っていった。
風が吹いた。
融け出したオレンジ色の風は甘く、何処か苦くもあった。
首元でチャリッ…と音を立てるロザリオに触れると、何処かいつもより酷く冷たく感じて。
「……塾、めんどくさ…」
誰に言うでもなく一つ不満を零して、俺も俺の行くべき場所へと踏み出した。
―――何だか、飛べそうな気がして。
無人のブランコが視界の端でギィと錆びた音で揺れた。
伸びるその影の上には俺が居て、まるで影のブランコに乗っているような錯覚に落ちて。
何を見ていたの?
彼がブランコから見た空を、世界を。
この時の俺はただ無知で幼くて。
まだ、知る由もなかった。
(ブランコ下の景色)
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