昔、まだ20代の頃に観た『萌の朱雀』(もえのすざく)という映画の音楽です。
監督の河瀨直美氏は、その後『殯の森』(もがりのもり)でカンヌ映画祭でグランプリを獲りました。
この作品は河瀬監督の映画デビュー作とのこと。
奈良吉野の山々の緑がきれいだった映画も好きでしたが、なんといっても、その音楽に静かな衝撃を受けました。
作曲は茂野雅道氏。
決して奇をてらった音楽ではなく、とても静かで、とてもシンプルなのですが、どうしてか、こんな映画音楽は聴いたことがないと感じました。
CDも買い、探し出して楽譜も買いました。
今思えば、よく出版されたなと思います。
たぶん、出版社の方も「これは楽譜として残すべきだ」と感じたのではと、勝手に解釈しています。
とても簡潔なテーマ(主題)なのですが、そこにつけられた和音の連結から、何かを思い出させるような、少し不安定なような、不思議な感慨を呼び起こされます。
なぜこの音楽がそんなイメージを喚起するのか、解き明かす能力がないのが悔しいです。
日本映画では、例えばジョン・ウィリアムズ、ニーノ・ロータ、マイケル・ナイマンやハンス・ジマーのように、映画音楽自体に光が当てられることは少ないように思うのですが、やっぱり音楽も、映画にとって大きな要素だと思います。
茂野氏は、素晴らしいアーティストだと思います。