『そして誰もいなくなった』(アガサ・クリスティ著) | 今日も花曇り

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先日読んだ『春にして君を離れ』からのつながりで読みました。

有名ですよね。
読んだことはありませんでしたが、タイトルは私でも聞いたことがありました。

孤島に閉じ込められた10人が、童謡の歌詞をなぞるように次々殺されてしまうという内容で、きっとこれがその後の数え切れないほどのミステリ作品のモデルになったんだろうなと想像できました。

それでまた、タイトルがうまいですよね。
原題は『And Then There Were None』で、作品で登場する童謡の歌詞の一部なのですが、タイトル自体すごくミステリアスで読んでみたくなります。

物語の内容は、さすが!というしかない見事なまとまり方なのですが、登場人物の描き方はごく簡単で、あっさりパタパタとみな殺されてしまいます。

今はミステリも、背景としての社会問題を必ず織り込んであるし、心理描写も厚いですよね。
高村薫、北村薫、宮部みゆき、桐野夏生とか。。。(最近の人はあまり知らないのですが)

私自身も、映画でも音楽でも何のジャンルでも、基本はシリアスで暗くて重くて長くてしかも繊細なのが好きなので、人間がトリックのネタでしかないような扱いの本書は、自分の好みとはちょっと違うかな。。。という感じではありました。
その意味で、巻末の解説が赤川次郎なのは納得でした。

ただとにかく手際がよくテンポがよく、一晩で一気に読ませるので、映画を一本観るような読書をしたいときはぴったりだと思いました。

なんとなくこの作者のテイストがつかめてきたので、どうしようかなとは思うのですが、名作の呼び声高い『アクロイド殺し』は読んでみようかなと思っています。