「風立ちぬ」(宮崎駿監督)を観ました | 今日も花曇り

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先日、映画「風立ちぬ」(宮崎駿監督)を観てきました。映画館で映画を観るなんて随分久しぶりです。娘が生まれてからは初めてなので、少なくとも1年半は観ていませんでした。

賛否が大きくわかれているとの評判が聞こえていたので、もしがっかりしたらどうしようと、ちょっと心配でした。小さい頃からの宮崎映画ファンなので。。。

そして観てみて、私自身にとっては、今まで観た映画の中でも最も心に残る映画のひとつになりました。細かく語りだせばきりがなくなりそうですが、とにかく、観終わった後でその素晴らしさに呆然としてしまうという体験は、本当に久しぶりでした。午前中の初回を観たのですが、その日は一日中ラストシーンと荒井由美の「ひこうき雲」で頭の中が一杯でした。

宮崎監督は、もう72歳だそうです。「風立ちぬ」は、これまで宮崎監督の作品とはとても異なった作品です。72歳で、これまで自分がしてきた仕事と全く違うものに挑戦して、これほどのものが作れるなんて!本当に尊敬します。

書きたいことはたくさんありますが、印象深かった点を2つだけ書いてみます。

ひとつは、宮崎作品の中で、主人公の行動がはじめて結末から逆算されたものではなかったことです。映画として、ナウシカは王蟲の暴走を止めるよう行動しなければならないし、キキは最後は飛べるようにならなければならないのですが、「風立ちぬ」の二郎は、そうではありませんでした。でも監督は、二郎の生き方を美しいと評価したのだと思うし、観客である私もそう思えました。

ふたつめは、アニメーションの素晴らしさ。アニメは画を動かすものというのは当たり前のことなのでしょうが、突き詰めるとここまでの表現ができるといことそれ自体に感動しました。風、涙、光、旋回する飛行機など、細かい描写全てに命が通っているようで、こわいくらい見事でした。

この映画には、少なくない批判もあるようです。そのこと自体は、私は作品の価値をある程度証明していると思います。批判されない芸術作品はあり得ないからです。でもそのなかで、批評は、作家が目指したことがどれくらい達成できているかを測るものであって、鑑賞者が自分の期待にどれくらい適っているかを採点するのは単なる好き嫌い、批評ではないと思います。

話題作だけにいろんな批評・レビューの類を目にする機会もありますが、映画を人生の愉しみとする方にはぜひお薦めします。