本書は、日本のジニ係数や貧困率の上昇、非正規労働者の増加等を指摘して、日本でも経済的格差が拡大していることを主張しています。そんな著者らの啓蒙の成果か、現在では、これは世間でもかなり一般的な認識になっているように思います。
著者は、格差の存在自体は悪ではないが、行過ぎた格差は社会的に問題であるとの立場です。私もそれに賛成です。お金儲けをしたい人がいくら裕福になってもそれは構いませんが、人間として最低限の生活さえできない貧困に陥る人が増えることは、やはり社会全体にとって不幸だと思います。
本書の特長の一つは、簡潔ながら、格差日本の問題点を改善するための具体的方策を明確に提示している点です。
著者の提案は7つです。
1 競争と公平の両立
2 雇用格差の是正
3 地域の力を引き出す
4 教育の機会を奪われない
5 貧困の救済を急ぐ
6 税制と社会保障制度の改革
7 小さい政府からの脱却
各項目ではさらに具体的な議論がなされていますが、なかでも、日本の雇用、教育、社会保障に対する支出は先進諸国の中でも最低レベルで、よく言われる「小さな政府」は既に達成されており、これからはむしろセーフティネットの構築に積極的な支出が必要だ主張には共感しました。
以下に本書の図表をいくつか引用させてもらいます。
これを見ると、いったい日本の税金はどこに消えているのだろうかと思ってしまいます。
私は、日本の教育関連支出が極めて少ないことが特に気にかかります。人が困難な状況に陥ったとき、考える力と知識こそがその人を支えると思うからです。


