未曾有の大震災によって亡くなった方々の冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
私は、今回の地震で震度6弱と報道された埼玉県南部の地域の事務所に勤務しています。カタカタという小さな縦揺れのあとで大きく建物全体が横に揺れ始めたときは、ついに東海地震がきたと思いましたので、まず東京の家族のことが気にかかったのですが、その後で震源が東北と知って大変驚きました。埼玉でさえこれでは、震源地ではいかほどかと思いましたが、かの地での被害は想像を絶するものでした。
様々な問題が進行中のなかで、最も気になるのは、やはり福島の原子力発電所の事故です。
私が大学で理学部に進んだ動機は環境問題だったのですが、環境問題への関心のきっかけになったのは、小学校6年生のときに起こったチェルノブイリ原子力発電所の事故でした。
今回の事故、すなわち地震と津波を原因とする事故は、原発反対派の論者からは以前から繰り返し指摘されてきたものでした。そしてその都度、電力会社と政府は、そのような事故は日本では起こらないと繰り返し説明してきました。何重ものセーフティネットが敷いてあるのだからと。
その「ありえない」事故が、複数しかも同時に起こっています。世界で類をみない異常な事態としかいいようがありません。
今回の事故が、被害をなんとかこの程度にとどめて収束するのか、さらに過酷な事故へ向かってしまうのか、現時点では分りません。しかしいずれにしろ、日本の原子力政策を根本的に見直す必要があることは明らかです。
科学技術に100%はありません。多くの科学技術はリスクとメリットを秤にかけて後者を採るわけですが、原子力という技術は、私はあまりにリスクの方が大きすぎるように思います。放射線による被害は化学的な毒物等によるものとは違い、遺伝子の中に蓄積されるものです。報道等ではしばしば「直ちに健康被害につながるものではない」という表現を見受けますが、直ちに健康被害を生じないから安全なのではなく、むしろ、直ちに健康被害を生じない場合でも将来にわたって深刻な被害を生じるおそれがあるの放射線なのです。
唯一の被爆国であるはずの日本で、どうしてか、原子力に対する危機感がいまひとつ希薄なのに、もどかしい思いがします。
今はとにかく、現地での作業がうまくいき、事態が収束することを願うばかりです。どんな作業体制をとっているのか私には全く分りませんが、作業員の方々には既に相当な被爆があるのではないかと想像されます。不眠不休で、通常であれば避難すべき現場にとどまって作業を続けなければならない方々のことを思うと胸がいたみます。