恋は二度目のアネモネ -27ページ目


フランスの路上ピアノが好きすぎて、
ときどき何時間も観てしまう。
ブギが好き。
ショパンも。
ドラマチックだ。


もう二度と会えないような気がして、
手を伸ばす。
ふわふわして、
頼りない温度。
1日の終わりは、
いつだってまるで夢のようだ。

毛布のような肌が
いま、なつかしい。
わたしの体は欲深く、
ぬるいお湯みたいに馴染んでゆく。
境界をなくしたいわけじゃない。
きちんと、2つでいたいの。


あなたは、ここにいない。
平気になってしまうと、
恋は終わりだね。










気になる気になる気になる
一度も目が合わなくても、
一度も言葉を交わさなくても。
ああ
好きになる。

窯に一礼して、
午後のひとときは、
優しいお姉さんたちとピザを頬張る。
ひっきりなしにおしゃべりしても、
お皿がからっぽになるのは何でだろう。
ピザピザ。
否、イタリア味のピッツァ。
指先がオリーブオイルにまみれて、
ちょっといけない気分になるの。
ああ。
好きになる。

〝改札口で待ってるね〟
は、とても幸せになる台詞だ。
わたしは電車を降りて、階段をかけおりる。
前髪を直しながら待ち人を探すとき、
いつも浮き足立ってしまうの。
改札口でわたしを待っていてくれるのは、
いつも大切な人ばかり。
友人や恋人や家族。
人間は当たり前に孤独だけど、
そんなのぜんぜん淋しくないわ。
孤独な人間同士が仲良く集まって、
とくとく生きている。

交わした何文字かの台詞が胸に残って、
スノードームみたいに、きらきら舞うの。
文字が降る心の中で、
あなたの実体ときみの残像が
ちらちら浮かんでは消えていく。
ああ
好きになるのは一瞬だ。
雪のようだね。











とてつもなくキリの悪いところで仕事をほっぽらかすわたし。
やばいやつに意地悪されるわたし。
脳がとけてゆくわたし。
だけど気にしない。
少しは気になるけど、気にしたって良いことないもんね。
好きな人たちのことを考えよう。
存在してくれているだけでありがたい人たち。
優しくて可愛い人たち。
ああ
幸せな気持ちになるの。
みーんなで集まって、一緒にごはんを食べたいよ。



わたしはおなかがすくと、
足が2月のスプーンのように冷たくなる。
でもごはんを食べると、
本当に一瞬で、つまさきまでぽかぽかになるのだ。
わたしは自分の体のそういうとこが、
まぬけで可愛いと思っている。
なんかあほみたいでいいよね。
やたらぐーぐー鳴るところも、さらにあほらしい。
今も鳴ってる。
ぐーぐーぐー

本当はもっと洗練された体になりたかったけど、
洗練されていないのだから仕方がない。
配られたカードで勝負するしかないのだ。 (スヌーピー)

さぁ
嫌なことやつらいことはぜーんぶ忘れて、
おいしいごはんを食べよう。
ぐーぐーぐー!








睡魔に攻撃されながら、
真夜中すぎまでおしゃべり。
意識は朦朧。
あなたはきっと、
そこはかとない危機感を感じていて、
脱いだ服をハンガーにかける。
そしてわたしを見つめてお話する。
どうでもいいって思ってみても、
そういういじらしさに弱いのだ。

目覚めたとき、
同じ部屋で眠っている人間がいることが不思議。
あなたもわたしも、
いつかはいなくなるけど、
この一瞬を共有しているなんて可愛いことだね。

 
話した内容よりも、
ときめいた瞬間のほうが忘れられない。
言葉だったり、体だったり、
めまぐるしいよ。

わたしは、
正しいことをしているつもりはなく、
ただ納得したことを、しているつもりだ。
考え方が違っても言い争いはなしで、
シンプルに、思ったことを会話できればすてきだと思う。
そんなふうに関わりたい。
誰とでも。


苦役列車を読んだすぐ後は、
何でこれが芥川賞を取ったのだと感じたのだけれど、
2日後くらいにじわじわきた。
それはもう、きた。
じわりじわりと。
読後感って、こんなにあとになってからくるものだったっけ。
あれ、もしかしてこれわたしの小説でもあるのか?とか思うくらい。
わたしも苦役列車に乗っているのではないか?とか思うくらい。
そんなものが書けるなんてすごいことだ。
酔いにまかせてそんな話をしたけれど、
読んでない人に話すようなことではなかったな。
まぁ酔っているからそんな話をしたのだけれど。


くらくら
きらきら
とけていくよね。
脳も、時間も。




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脳は、
脂肪と水と少しのたんぱく質でできているらしい。
ぶよぶよで、やわらかい。
使えば使うほど、成長する脂肪のかたまり。
すぐにバグる、胡乱な器官だ。

今日もまた
片手ほどの人間としか会話してない。
ここにいたら、脳がだめになっちゃうわ。

人といること
会話すること
共感すること
これをしないと、脳は成長しないんだって。
まったくできていないではないか。
我が脳みそ、盛大に停滞中。

こんなの、恋でもしないとやってられない。
彼はとなりで恋愛中。
承認欲求が満たされてるから、
もはや性なんていらないの。
あれもこれも脳科学で明快に解明!

ああ
どんどんどうでもよくなる。
わたしは、恋人にするなら人間がいいわ。
アナログでいびつなの。
だけどきみに会うのも、
一種の承認欲求なのかもしれない。
許してね、わたしの脳と作品のためです。


セロニアスモンクのモンクソロを聴く。
靄がかった、白いバスルームで。
好き、好き。
セロトニンが。出る。

顎の脂肪がなりを潜めるかわりに、
形容できない憂鬱が、
ときどき片目でこっちを見てるの。

のみこんでやる。
しかも美味しく。