恋は二度目のアネモネ -26ページ目


何度も何度も同じ曲を聴いて、
悦になる。
欲しいものは、執拗に求めてしまう。
欲ばりなのね。
どんなに鐘をつこうとも、
わたしの煩悩は消えることがない。

ああだけど、
欲しいものしかいらないの。


普通の会話をしても、
もはや、何も動くことがないなんて。
なんて、なんて。
心は胡乱で
この世は無常だ。

もういいや、って
一度あきらめてしまったら、
二度とときめくことはない。
かつてどんなに好きだったとしても。
絶対ではないけど、これは経験則だ。

心の中に、
カチン、と壁が建つ。
曖昧にゆるく混じり合っていたものに、
すっと線が入る。
あなたはわたしではないことを、
心の底から実感するのにこんなに時間がかかるのは、
わたしがどこまでも愚かで未熟者だからだね。


感情にいつまでもふりまわされるのは、
けだものの生き様だ。

わたしは歪だけど、
人間として生きたいなあ。
感情を処理して、
するっとしてたい。
つるっと。
ぬるっと。

おっとっと。









改札口で、
あなたはわたしを待っていた。
幸福な瞬間。
雪の中、
文句を言ったりはしゃいだりしながら歩く。
帰って来られてよかったねえと言いながら。


あたたかい食事でおなかを満たして、
すやすや眠る。
あなたは正しい生き物だ。
わたしは今日も複雑に入り組んでいて、
まったく歪な女なのです。


かわいいお菓子をわたしに見せながら、
あなたは真っ当に喜ぶ。
男の人は、単純でかわいい。
あほすぎてイラッとするときもあるけど、
結局愛してしまうよね。


邪悪な心が、
容赦なく顔を出す。
外は雪。
大雪だ。







週末のバスルームには
平和の湯気が立ちこめる。
実体あるものもいいけれど、
ソネットの行間を読むみたいに、
気配に敏感でいたいと思う。


明日は、雪が降るらしい。
ちっぽけなスノードームの中で、
わたしたちは泣いたり笑ったり忙しい。

本日は完全な素面で、
健康だけど不健全な1日。
家の中はぴかぴかだし、シーツは新しい。
本も2冊読み終えた。
ビールとワインの代わりに
ブラックコーヒーとルイボスティーを飲んだ。

ああ。
敵はわたしの中にあり、だ。



ふくらみはじめた脂肪は
いくら手でぷちぷちつぶしても意味がない。

方法は知ってて、
方法はいくつもない。
結局は運か運命かだ。


体温が下降しても、
シナプスは成長中。
脳はいつだって、後手後手。
ほら
ボードレールにならって
悪の華を咲かせよう。


不真面目なのわたし。
このまま健全になんて眠れないよ。
今日が終わる前に、
かわいい掟をひとつ破ろう。










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今日はおうちで
わたしだけの宴。


しゅわしゅわ
カヴァの泡にまみれて、
もっと愉しみたいの。
まだまだ、夜はこれから。
しゅわり
泡の中に
あなたの顔が浮かんで消える。
あなたはどうだか知らないけれど、
わたしは
永遠に恋人のままでいたいの。
ああだけど、
恋はうたかた。
やがては刺激も味も薄くなる。
あわてて飲みほすカヴァみたいに。


きみは、
泡沫なのは承知で近づいたから
行方知れずのままでいい。
むしろそれがロマンというものだ。
必ずはじける泡だから、
今、この瞬間を大切にしたいの。

愛じゃなくて、
単純な恋で、
ああ。
だからすてきなの。

ただ好きだからって理由だけで一緒に過ごしたりして、
そういうの、とても可愛いことだと思う。
男も女も関係ない。
誰かを好きになるのは、
この世でもっともすてきなことだ。


1人きりの宴はたいそう愉しいのだけれど、
いつも途中で、
あなたに会いたくなるので困る。
わたしの恋人。
わたしを愛して、わたしに優しくしてくれる人。
間違いなく、この世でいちばん好きな人。

たとえ10年愛し続けても、
恋はうたかただ、と言っていたいのよ。
でもほんとうは、
あなたには心臓をあげても惜しくない。
体はどんどん朽ちていくけど、
人は心でしょ。
そういうときめきだけで、
今日という現実を生きていたいのだ。
地に足、なんて
くそくらえだわ。


この世に
いけないランデブーなど存在しない。
愛や恋に制限などない。
あってはならない。 
そんなことにさえ制度を設けるなんて野蛮だ。
だからわたしは戸籍も婚姻制度も嫌いなの。
そんなしょうもないものに迎合したくない。

でも今日はわたし、
ビョークのユニゾンな気分なの。
つまりは清廉な隠者なのです。
あなたを愛するあまり、
ほかの誰とも会いたくない。
枠じゃないの。
そんな気分なだけだよ。

ヴェスパタインが聴きたい。
まだ夜はこれから。








チリのミラモンテと
ポテトと
なめたけ。
ジャンクでご機嫌なものたちを買って
爆発を鎮める。

不機嫌はあらゆる悪徳の中で最大に憎むべきものだ
と、
若きウェルテルは言っていた。
あー
ウェルテルさん、わたしもそう思うよ。


音楽やお笑いは
ある意味、虚構への逃避だ。
穏やかになるの。
いわば全て物語だもの。
小説だってそう。


あれ
いま、頭がおかしくなった。
ふと目線を転じたとき、
見えないものが、
見えてしまった。
なんか時空の狭間みたいなやつ。
バチバチ!
ってなった。
不機嫌のせいかな?
ウェルテルさん。


次にきみと会うのはいつだろう。
あんなに好きになったのに、
もう2度と会えなくてもかまわないとさえ思う。
不機嫌のせいだ。
そしてウェルテルは若いから死んだのだ。
わたしは死なない程度には成熟してしまった。


赤いランプをつけて、
好きな音楽を流して、
アロマをして、
プリンセスと呼んで、
頭をなでてくれたあなた。

わたしはたちまち
不機嫌なデビルからご機嫌なエンジェルに。
そして、プリプリプリンセスに。
デビルよ、さようなら!


デビルが去った金曜日。
今日から数日は一人暮らし。
いい子にしていよう。
料理とお酒をふんだんに用意して、
ひきこもり読書生活に突入するのだ。