ブックレビュー「小田くん家は南部せんべい店」 高森美由紀 | ネコのひとり言

小田くん家は南部せんべい店

 

先日読んだ「山の上のランチタイム」がとてもよかったので、引き続き高森作品。

今回は高森さんが現在お住まいの青森県三戸町(本書では三津町)にある、南部せんべいの老舗「小田せんべい店」を舞台に、家族の愛情と友だちとの友情を描いたストーリー。

小山田せんべいありふれたストーリーながら、懐かしくてほのぼのとした感動がよみがえります

★4.3

主人公は小学4年の小田弘毅(こうき)くん。


お店はおじいちゃんの「よっしー」とおばあちゃんの「なぎばあ」がせんべいを焼き、パートの安江さんと弘毅くんのお母さんがせんべいの耳を切り落としたり、袋や筒にせんべいを詰めたりするなどの後作業を行います。

 

 

 

 

 

時々、高1の芽衣姉ちゃん、弘毅くんも接客のお手伝い。
弘毅くんは小さい頃から手伝っているので、まだまだ不完全ながらもせんべいだって焼けます。

そんなこともあり”非常事態”の中、よっしーの代わりに弘毅くんがせんべいを焼き、家族総出で白せんべいを作り上げるシーンや、弘毅くんと友だちの3人が、別の友だちのために一生懸命せんべいを焼く姿にもジーンとします。

【本書での注目】

 

(1)弘毅くんとよっしーの関係
・小生意気でタメ口な弘毅くんと、陽気でマイペースなよっしーとの掛け合いが面白い。
・”本当”の祖父と孫だからこんな会話が普通にできるのでしょう。実にほほえましいです。
・フレンドリーな関係がいつまでも続きますように・・。

 

(2)場の雰囲気を敏感に感じ取る小学4年生
・芽衣姉ちゃん憧れの男子高校生がせんべいを買って帰ろうとするとき、弘毅くんの友だちの潤くんが、芽衣姉ちゃんの思いを察して、バレンタインチョコをあげられるようサポート。

 

・よっしーの長年の友だち豊さんが、いつもの薄胡麻せんべいではなく白いせんべいを買いに来た。その意味をヨッシーも分かっているが、豊さんに話しかけられずにいる。それを察して弘毅くんが二人の背中を押す。

 

・とても小学4年生とは思えない二人のサポートが素晴らしい。

【登場した三戸グルメ】

 

(1)カックイの味噌汁
 ・カックイはナラタケのこと(津軽地方ではサモダシともいうらしい)。
 ・つるんとした口当たりでぬめりは控えめ。傘が薄くてびらびら、土と落ち葉の香りがするそう。

 

(2)焼きたての南部せんべいの音 
 ・サクサクというより、たくさんの空気を含んで軽い食感のシャクシャクという音。

 

(3)せんべい汁

 

(4)南部せんべいのクランチチョコ
 ・芽衣姉ちゃんがバレンタイン用に手作り。
 ・細かく砕いた南部せんべいと溶かしたチョコレートを混ぜる。

 ・丸くした後冷やす 

  → モデルにしたのは磐手屋さんの「チョコ南部」?

 

(5)飴せん

飴せん

 ・南部せんべいに飴をはさんだもの。
 ・ねっとりして硬い水飴をスプーンでたっぷり載せ、

  もう一枚のせんべいと合わせる。
 ・せんべいの軽いサクサク感と水飴のねっとり感が上手く合っている。
 ・水飴の甘さが強いから塩味が上品になる。
 ・チーズを載せてピザ風、赤飯をはさむバリエーションもある。

 

(6)馬肉鍋 

馬肉鍋

 

 ・根菜類と豆腐、ニンニク味噌仕立て。
 ・一味唐辛子でいっそう美味しくなる。