ブックレビュー 「きときと夫婦旅」  椰月美智子(やづきみちこ) | ネコのひとり言

きときと夫婦旅  きときと富山

きときと夫婦旅
図書館の新刊書コーナーで見つけた一冊。
タイトルと表紙のイラストを見て衝動借り。

富山を旅するおどけた夫婦の珍道中・・と思っていましたが・・。

破綻寸前の夫婦がひょんな事から富山を旅行することになり、そのことによって夫婦関係がどう変化したかを追ったストーリー。

アラフィフのみゆきと範太郎(のりたろう)夫婦には、中三の昴がひとり。
みゆきは全国展開する書店のチェーン店勤務、範太郎は大手出版社の営業マンという設定です。

この夫婦が平穏だったのは昴が生まれるまでの短い期間だけ。
それ以降はバトル期間、冷戦期間を経て、最近では必要最低限の事務連絡さえもLINEですませる家庭内別居状態。

みゆきは離婚したいが、具体的に考えたことはない。
なので自分のことを、夫のDVや浮気など具体的に別れる理由があれば行動に移すが、そうでなければ仕方ないとあきらめる古い人間だと思っている。

こんなシチュエーションで二人きりで旅行することになったらどうなるの?と心配になってきます。
スターバックスコーヒー富山環水公園店
でも、旅先が鉄道王国富山。
鉄オタの範太郎はワクワク感いっぱいでマイペースなこともあり、ストーリー全体のトーンは、鉄道ネタをはじめグルメ・観光情報なども織りまぜながら、コミカルなものになっています。

そんな中で注目したいのは、夫婦が言い争ったり、お互いの言動を批判するシーン。
それぞれの心情描写が超リアルすぎて、夫婦あるある爆裂、ハラハラどきどき。
身につまされます。

今回の富山を旅してみゆきが思うことは、子どもの成長。
昴の成長を喜びながら、一方では、自分たちも昴によって成長させられているのだと感じたのではないでしょうか。

みゆきと範太郎夫婦は今後年齢を重ねるごとに、きっといい関係になっていくことでしょう・・★3.7

本書を読んで行きたくなった富山名所など。
・富山港線・岩瀬浜 /古い町並みとシロエビかき揚げ丼
・富岩水上ライン /「スターバックスコーヒー富山環水公園店」(世界一美しいスタバのお店)
・あいの風とやま鉄道 /「一万三千尺物語」(観光列車)
・氷見漁港場外市場ひみ番屋街
・富山地方鉄道・安野屋駅 /「ブルートレイン」(店内を鉄道模型が走る、鉄オタ垂涎の喫茶店)
・日本酒 /「千代鶴」(みゆきが何回も飲んでいたお酒、「勝駒」より美味しそう)

 

 

一万三千尺物語 千代鶴